ファクタリングの利用を検討している事業主の中には、支払い方法がわからない人も多いと思います。
ファクタリングの支払いが発生するタイミングは、契約した日・売掛金が入金された日の2回です。
ただし、ファクタリングの契約形態によって、誰が業者に返金するのかなど利用の流れは異なります。
本記事は、ファクタリングの支払い方法・仕組み・メリットやデメリットについてまとめました。
前もって支払い方法を理解しておくと、返済遅延などのトラブルを回避しやすくなります。ファクタリングサービスの仕組みを知って、円滑に資金繰りを回しましょう。
ファクタリングとは
ファクタリングとは、自社が保有している売掛債権を売却して現金化する資金調達方法です。
支払い期日を迎える前の売掛債権をファクタリング会社に売却すれば、手数料を差し引いた代金を受け取れます。
日本の商取引は、サービスを提供した日・売上が入金される日にタイムラグが生じる「掛取引」が一般的です。売上の入金日までは、納品までにかかった経費・入金日までの運転資金を納入企業が一旦負担する形となるので、手元にキャッシュがなければ倒産を起こす危険性があります。
しかし、ファクタリングを利用すれば、最短即日で売掛債権を現金化できるので資金ショートによる倒産を回避可能です。
ファクタリングは融資よりも審査のハードルが断然低いため、借りられない個人事業主・中小企業の資金繰り改善にもっとも有効な資金調達方法と言えます。
ファクタリングには2種類の契約形態がある
ファクタリングには2社間・3社間の2種類の契約形態があります。
それぞれの違いの詳細を見ていきましょう。
2社間ファクタリングの仕組み
2社間ファクタリングとは、利用者・ファクタリング会社の2社の間でやり取りを完結させる契約形態です。
契約関係に売掛先を交えないため、ファクタリングを利用した事実は第三者に知られません。
2社間ファクタリングのメリットは、売掛先に利用を知られないので信用不安が生じるリスクがない点です。資金繰りに困っている事実を知られて、今後の取引に悪影響が出るといった懸念がありません。
また、売掛先が介入しないので最短即日〜3日程度というスピード感で現金化できます。
デメリットは、後に解説する3社間ファクタリングより手数料が高い点です。2社間ファクタリングは売掛債権の存在が対外的に証明しづらく、ファクタリング会社が負う貸倒れリスクが高いからです。
2社間ファクタリングの流れと支払い方法
2社間ファクタリングの手続きの流れは以下のとおりです。
- 売掛先に商品を納品して売掛債権が発生する
- ファクタリング会社に申込み、審査を受ける
- ファクタリング会社と債権譲渡契約を締結する
- ファクタリング会社から手数料を差し引いた額が振り込まれる
- 売掛金が入金され次第、ファクタリング会社へ送金する
2社間ファクタリングの支払いは、契約時・売掛金の入金時の合計2回です。
契約時の手数料は自動で差し引かれますが、売掛金の入金時は利用者がファクタリング会社へ送金する必要があります。
一般的に支払い期日は、売掛金の入金から10日以内です。ファクタリング会社への送金が遅れると、遅延損害金が発生する恐れがあります。入金を確認次第、早急に支払いを済ませましょう。
3社間ファクタリングの仕組み
3社間ファクタリングとは、利用者・ファクタリング会社・売掛先の3社で契約を結ぶ取引形態です。
2社間ファクタリングの流れに、売掛先に債権譲渡の旨を通知して承諾をもらう過程が加わります。
3社間ファクタリングのメリットは手数料が安く抑えられる点です。2社間ファクタリングは10%〜20%程度かかりますが、3社間であれば1%〜9%と手数料を一桁で抑えられます。
デメリットは資金調達までに時間がかかる点です。3社間は売掛先にファクタリング利用の旨を説明して承諾をもらう過程が加わるので、資金調達まで平均1週間〜10日程度かかります。
また、売掛先に資金調達した事実を知られるので、信頼関係が構築できていなければ今後の取引に悪影響を与える可能性があります。
3社間ファクタリングの利用は、下記のような信用不安のリスクが少ない売掛先を選びましょう。
- ファクタリングに対して理解がある
- 取引回数が多く、良好な人間関係を築けている
3社間ファクタリングの流れと支払い方法
3社間ファクタリングの手続きの流れは以下のとおりです。
- 売掛先に商品を納品して売掛債権が発生する
- ファクタリング会社に申込みする
- 売掛先に債権譲渡する旨を通知して承諾をもらう
- ファクタリング会社と債権譲渡契約を締結する
- ファクタリング会社から手数料を差し引いた額が振り込まれる
- 期日に売掛先がファクタリング会社へ直接送金する
3社間ファクタリングの支払いは、契約時に自動で差し引かれる手数料のみです。
売掛先から直接ファクタリング会社に売掛金の支払いが行われるので、利用者が支払い期日を覚えておく必要はありません。
ファクタリングの6つのメリット
ファクタリングのメリットは下記の6つです。
- スピーディーに現金化できる
- 売掛金の回収不能リスクがない
- 資金使途に制限がない
- 個人事業主でも利用できる
- 自社の財務状況が悪くても利用できる
- 信用情報に影響を与えない
どのようなメリットが得られるのか順番に解説します。
1.スピーディーに現金化できる
申込みから現金化がスピーディーな点は、ファクタリングの最大のメリットです。
銀行融資の借入は企業の信用情報が厳しく確認されるため、2回目以降の利用だったとしても資金調達まで1ヶ月程度かかります。
ファクタリングは必要書類が揃っていれば、最短即日で現金化できます。また、2回目以降の利用だと審査にかかる工数が省略されるので、さらにスピーディーな資金調達が可能です。
2.売掛金の回収不能リスクがない
売掛金の回収不能リスクを負わないのも、ファクタリングならではの長所です。
ファクタリングは原則、債権請求権なしの契約を結びます。債権請求権とは売掛金がなんらかの事情で回収不能となった際に、ファクタリング会社が利用者に弁済を求める権利です。
ファクタリング契約後に売掛先が倒産しても利用者に支払い義務がないので、貸倒れで自社のキャッシュが枯渇する心配がありません。
保証をつけながら資金調達できるのは、融資にはない強みと言えます。
3.資金使途に制限がない
ファクタリングには資金使途に制限がありません。
資金使途とは借入したお金の使い道です。例えば、ビジネスローンは事業に関する用途であれば自由に使えますが、趣味などプライベートな用途で使うと資金使途違反で即日全額返済を求められる恐れがあります。
しかし、ファクタリングには資金の使い道に制限がありません。借金返済・納税・赤字補填など事業主が必要としている部分にお金を充てられるので、同じ資金であっても使い勝手がよいのが特徴です。
4.個人事業主でも利用できる
ファクタリングは個人事業主でも利用できる業者が多いです。
ファクタリングで返金の大元になるのは売掛先であるため、利用者の経営規模は重視されません。したがって、開業して間もない個人事業主であっても、開業届さえ提出していれば利用できるケースが大半です。
ただし、個人事業主も利用対象者としているファクタリング会社でも、売掛先が個人事業主の債権は買取不可となっている傾向にあります。
5.自社の財務状況が悪くても利用できる
ファクタリングのメリットに、自社の財務状況が悪くても利用できる点が挙げられます。
前述したように、融資審査で重視されるのは利用者の返済能力なので財務状況が悪化していれば審査落ちします。
しかし、ファクタリングは売掛先の返済能力を重視するため、自社が赤字決算、債務超過、税金滞納でも利用可能です。
ファクタリングは、自社の信用力に自信がない事業主にもおすすめできる資金調達方法です。
6.信用情報に影響を与えない
ファクタリングは借入ではないので、信用情報に影響を与えません。
通常、融資を受けると、申込み・契約・返済に関わる情報は信用情報機関に共有されます。金融機関は信用情報機関のデータを確認して融資の可否を決めるので、当然借入の履歴が直近にないほうが融資審査は有利になります。
しかし、ファクタリングは資産の売却であり信用情報機関に情報共有はされません。会計上も負債にはカウントされないため、融資審査で重視される書類である「貸借対照表」に影響を与えないのです。
資金調達しても、今後の融資審査にネガティブな影響を与えないのはファクタリングの大きなメリットと言えます。
ファクタリングの3つのデメリット
ファクタリングのデメリットは下記の3つです。
- 他の資金調達方法と比べて手数料が高い
- 売掛金を上回る資金調達はできない
- 債権譲渡登記が必要な場合がある
利用において、どのようなデメリットがあるのか順番に解説します。
1.銀行融資と比べて手数料が高い
ファクタリングのデメリットに、他の資金調達方法と比べて手数料が高い点が挙げられます。
ファクタリングの手数料相場は、以下のとおりです。
- 2社間ファクタリング（対面）：10%〜20%
- 2社間ファクタリング（オンライン）：2%〜12%
- 3社間ファクタリングで1%〜9%
100万円を資金調達したと仮定して、ファクタリングを利用して年利換算したケース・他の金融機関で借入したケースでの年利の比較を以下にまとめました。
| 資金調達方法 | 年利 | 100万円資金調達した際の年利（手数料） |
| ファクタリング | 20% | 20万円 |
| 銀行融資 | 1%〜4% | 1万円〜4万円 |
| ビジネスローン（ノンバンク） | 1%～18% | 1万円〜18万円 |
なお、上記の年利換算は90日間の売掛債権を手数料5%でファクタリングした場合です。
ノンバンク系のビジネスローンは比較的金利が高いと言われています。ファクタリングはそれと同じくらいの手数料になります。
2.売掛金を上回る資金調達はできない
ファクタリングは資産の売却であるため、売掛金より多くの資金調達はできません。
そのため、大口の受注など保有している資産を上回る資金調達が必要なシーンでは、ファクタリングと併用して他の金融機関から借入する必要があります。
1箇所でまとめて資金調達を完結できないのは、ファクタリングのデメリットと言えます。
3.債権譲渡登記が必要な場合がある
ファクタリング会社によっては、債権譲渡登記を求められるケースがあります。
債権譲渡登記とは法務局に登記をして、誰が・いつ・どのような債権を譲渡したのかを公的に証明できる制度です。ファクタリング会社を詐欺の被害から守る目的で設定する項目で、法人が2社間ファクタリングを利用する際に求められる傾向にあります。
債権譲渡登記を行うと譲渡の事実を誰でも確認できるようになるので、少なからずファクタリングの利用を売掛先に知られる可能性が生じてしまうのです。
また、手数料は安くなるものの、債権譲渡登記にかかる費用である登録免許税7,500円・司法書士報酬5万円〜10万円程度は利用者の負担となります。
売掛先に確実に知られず、安い手数料で資金調達するのであれば、債権譲渡登記の設定がないファクタリング会社を選定する必要があります。
ファクタリングサービスの選び方
ファクタリング会社を選ぶ際は、自社のニーズに合ったサービスを選択しましょう。
サービス内容の取捨選択をすれば、「調達コストを極力抑えたい」「今日にでも現金化したい」など自社の優先順位に合った最適な資金調達をできるからです。
ファクタリングサービスの選び方を以下にまとめました。
| 6つのチェックポイント | 概要 |
| 手数料 | ファクタリングの手数料相場は1%〜20%。なるべく手数料が安いサービスを選ぶ |
| 入金スピード | 資金調達を急いでいる場合、入金スピードが最短即日のサービスを選ぶ |
| 買取可能額 | 売掛債権の額が買取可能額の範囲内のサービスを選ぶ |
| 必要書類の量 | 必要書類は平均2つ〜7つ。資金調達を急いでいる場合、必要書類が少ないサービスを選ぶ |
| 債権譲渡登記の有無 | 手数料の安さ・入金スピードの早さを求めるのであれば、債権譲渡登記なしのサービスを選ぶ |
| オンライン対応の有無 | 地方在住・忙しいなどで面談が難しい場合、オンライン契約に対応しているサービスを選ぶ |
上記のように、安さ・早さ・簡便さなどファクタリング会社によって強みが異なります。
例えば、安さ重視であれば「手数料が相場より安い」「債権譲渡登記なし」「オンライン対応可」であるファクタリング会社に依頼すると、調達コストを抑えた資金調達を実現しやすくなります。
自社に合ったサービス内容を提示しているファクタリング会社に相見積もりを取り、サービスを比較・検討して利用する業者を選定しましょう。
ファクタリングの支払いについてよくある質問
ファクタリングの支払いについてよくある質問に回答します。
- ファクタリング未払金とは何ですか？
- ファクタリングの支払い期日に遅れるとどうなりますか？
- ファクタリング会社への分割払いは可能ですか？
ファクタリングの支払いについてトラブルに発展しないよう、疑問を解消しておきましょう。
ファクタリング未払金とは何ですか？
ファクタリング未払金は、ファクタリング利用における会計処理の1つです。
ファクタリングの場合、通常の売掛金と処理や仕分けが異なるので、順番に解説します。まず、売掛金が発生した場合の会計処理を見ていきましょう。
【100万円の売掛金が発生した場合】
| 借方 | 貸方 |
| 売掛金100万円 | 売上100万円 |
ここまでは、通常の取引もファクタリングも会計処理は同じです。
通常の取引の場合は売掛先から入金されると「借方→現金100万円」「貸方→売掛金100万円」に名目が変更されて会計処理が終わります。
ファクタリングの場合は売掛金の発生後、下記のように仕分けを行います。
【ファクタリング契約を締結した場合】
| 借方 | 貸方 |
| 未収入金100万円 | 売掛金100万円 |
「未収金」という項目は、主に資産を売却をして代金を後から受け取る際に使う勘定科目です。ファクタリング契約から入金まではこのままです。
次に、ファクタリング会社から入金があると以下のように仕分けをします。
【ファクタリング会社から手数料5%で買取額が振り込まれた場合】
| 借方 | 貸方 |
| ・現金100万円
・売掛債権売却損5万円 |
未収入金100万円 |
「売掛債権売却損」はその名のとおり、売掛債権の譲渡に伴って生じた損失（手数料）です。
会計ソフトに「売掛債権売却損」の項目がない場合は、「支払手数料」「雑損失」の鑑定科目で代用可能です。
ファクタリングの支払い期日に遅れるとどうなりますか？
支払い期日に遅れると、ファクタリング会社から督促の連絡が来ます。
ファクタリング会社によってその後の対処は異なりますが、遅延損害金を請求されるケースが大半です。ファクタリング契約の遅延損害金は、一般的に14.6%・20%のどちらかに設定されます。
さらに、ファクタリング会社によっては売掛先に債権譲渡通知を発送するので、2社間ファクタリングであっても売掛先に知られる可能性があり注意が必要です。
ファクタリング会社から督促の連絡が来る前に、支払いが遅れている理由をファクタリング会社に伝えましょう。
ファクタリング会社への分割払いは可能ですか？
ファクタリング会社に分割払いはできません。
分割払いに対応すると、分割の期間に応じた金利が生じているのと同様の扱いになるため、貸金業法違反になる可能性があるからです。
分割払い可能のファクタリング会社があれば、悪徳業者の可能性が高いので利用しないようにしましょう。
ファクタリングの支払い方法を理解して、資金繰りを円滑に回そう！
本記事では、ファクタリングの支払い方法や仕組みについて解説しました。
ファクタリングの支払い方法は、2社間・3社間のどちらで契約しているかで異なります。3社間契約であれば自動で返済できるので問題ありませんが、2社間契約だと送金を忘れたり、使い込んでしまったりするケースがあります。
ファクタリングの支払い期日が遅れると、損害賠償金などが発生する恐れがあるので注意が必要です。資金調達でかえって自社の資金繰りを圧迫しないよう、支払い期日を守って資金繰りを円滑に回しましょう。
