本業の事業拡大や新規参入で副業を立ち上げるために、開業資金を調達したい経営者向けにおすすめの資金調達方法をご提案いたします。
こんにちは、ベストファクターの四ツ柳と申します。
中小企業の経営者の方や、個人事業主・自営業者の方の中には、事業拡大や新規参入、あるいはリスクヘッジを目的として副業を立ち上げたいとお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
副業の立ち上げにあたって開業資金をすべて自己資金でまかなえれば何も問題ありませんが、多くの場合は銀行や日本政策金融公庫などから開業資金を調達してくることが第一の課題となります。
今回は副業を立ち上げるにあたってどのような資金調達方法があるか、いくつかご提案させていただきます。
事業者の副業(兼業)の例
中小企業の経営者の方、あるいは個人事業主の方が副業を立ち上げるとして、どのようなケースが考えられるでしょうか?いくつか例を挙げてみました。
副業の例1:普通に事業を立ち上げる
飲食店の経営のかたわら弁当の宅配事業を始める事業拡大タイプ、運送業を営みながら飲食店を出店する新規事業参入タイプまで、新たに一から事業を立ち上げるケースです。何もないところから事業を立ち上げることになるため、規模に比例して多額の資金が必要となります。
副業の例2:土地活用でアパート経営
親から相続した土地やもともと所有していた不動産を活用して、アパート経営や駐車場経営などを始める人が増えています。とくにアパート経営は会社員の副業として人気が高く、建設会社や銀行主催の「土地活用セミナー」なども頻繁に行われています。
土地活用については「自ら活用する」「プロと共同で活用する」「貸して地代を得る」といった方法があり、活用方法にしてもアパート経営や駐車場経営のほか、オフィスビル、コンビニ、介護施設、トランクルームなどさまざまです。また土地を所有していなくても、すでに入居者のいる収益用のマンションを購入する方法もあります。
アパート経営等は事業よりも投資という側面が強いですが、事業的規模に達すると副業の扱いになります。
副業の例3:M&Aで会社を買う
「副業の例1」では、すべてを一から立ち上げる方法を紹介しましたが、何もないところからビジネスを始めるのではなく、すでに存在している会社をM&Aで買うという方法もあります。
M&Aというと、大手企業が実施するような数千万円、数億円規模の買収をイメージしますが、たとえば「跡継ぎがいないために事業譲渡を希望する老舗の蕎麦屋」を買収することもM&Aです。仮にオーナーの譲渡希望価格が300万円とすれば、300万円ですでに店舗もビジネスモデルもある会社を買って副業が始められます。
中小企業や小規模事業者が個人商店や零細企業をM&Aすることで事業承継を実現することはもちろん、地域経済の活性化するといった相乗効果にも期待できます。
副業を立ち上げるときに利用したい資金調達方法
副業を立ち上げるには、ある程度のまとまった資金が必要です。自己資金に余裕があればすぐにでも始められますが、十分な資金がない場合は何らかの方法で調達する必要があります。
ここでは、中小企業の経営者や個人事業主が副業を立ち上げるときに利用できる資金調達方法をいくつかご紹介します。
家族・社員・取引先等からお金を借りる
もっとも調達コストが低く、リスクも小さい資金調達方法は、家族や社員、取引先等からお金を借りて副業を立ち上げる方法です。
銀行等の融資と違って審査が必要なく、早ければ即日で現金を調達することができます。また、お金を借りる代わりにリターンとして何らかのメリットを提供すれば、より借りられる可能性が高くなるでしょう。
ただし、信頼がなければお金を借りることはできませんし、返済が滞れば信頼関係に傷がつく恐れがあります。
家族・社員・取引先等からお金を借りるから借りるメリット
- 審査がない
- リターンを約束することで借りやすくなる
家族・社員・取引先等からお金を借りるから借りるデメリット
- 返済できない場合は信頼を失う
都市銀行・地方銀行の創業融資
メガバンクは創業融資を行っていませんが、地方銀行であれば事業拡大や新規参入のための創業融資(プロパー融資)をしてくれる可能性があります。
たとえば、東北銀行は創業後でも1年未満の経営者を対象とした1,000万円までの「創業支援ローン 起業のとびら」を提供しています。また長野銀行は、限度額3,000万円(運転資金は1,000万円まで)の創業支援資金「スタート」で、新規事業向けの融資を行っています。
銀行融資を成功させるためには、審査に通るような事業計画書を作り上げることが最重要です。事業計画書を作成する際は税理士に相談することをおすすめします。
既に1つの事業で成功済みという実績があり、なおかつしっかりとした事業計画があれば、銀行も積極的に融資を行ってくれるでしょう。
都市銀行・地方銀行の創業融資のメリット
- 比較的審査に通りやすい
- 金利が低い
都市銀行・地方銀行の創業融資のデメリット
- 事業計画書や決算書など必要書類が多い
- 融資実行までに時間がかかる
信用金庫の融資制度
信用金庫にも創業期の法人・個人向け融資制度があります。
たとえば東京東信用金庫の地域活性化ローン「粋」は、設備資金 1,000万円以内・運転資金 500万円以内を金利2.5%~3.5%で借りられる改装・開業・創業に特化したローン商品です。
地方銀行より金利はやや高く、融資額も小さめとなりますが、審査の敷居は低くなります。
信用金庫は小さな会社にも足を運び、創業や資金需要の相談に応じてくれます。事業規模の小さい会社や個人事業主の方が長くお付き合いするなら、信用金庫がおすすめです。
信用金庫の制度融資のメリット
- 審査に通りやすい
- 金利がやや低い
信用金庫の制度融資のデメリット
- 事業計画書や決算書など必要書類が多い
- 融資実行までに時間がかかる
日本政策金融公庫の創業融資制度
日本政策金融公庫は主に国内の事業者に向けた資金調達支援を行う公的金融機関です。民間の金融機関からの資金調達が難しい事業者に対して、雇用の維持や創出、地域の活性化を目的とした融資を積極的に行っています。
とくに創業融資制度は、業績や業歴のない事業者であってもしっかりとした事業計画書を提出できれば、税金の滞納がない限り無担保・無保証人で1,000万円を超える創業資金を借りることができます。
金利が1.0~2.5%(年利)と低く、審査の可決率も高いため、条件を満たしているのであればぜひとも活用したい資金調達方法のひとつです。
日本政策金融公庫の創業融資制度のメリット
- 審査に通りやすい
- 金利が低い
日本政策金融公庫の創業融資制度のデメリット
- 事業計画書や決算書など必要書類が多い
- 融資実行までに時間がかかる
- 創業資金総額の3割程度の自己資金が必要
商工会議所の創業支援融資
商工会議所は地域の地域の中小企業や個人事業者に対して、経営相談、共済制度、企業同士の交流会など、さまざまなサービスを提供している非営利団体です。
活動のひとつに創業支援融資という無担保・保証人なしで資金を借りられる制度があります。
たとえば東京商工会議所の「創業支援融資保証制度」は、商工会議所の担当者による事業計画書の作成指導、創業後のフォローアップを受けることのできる創業前か創業後5年未満の法人または個人を対象として最大2,500万円・金利1.5~2.3%が原則無担保で借りられます。
どの商工会議所であっても事前に創業計画審査会、創業ゼミナールを受けていることが条件となります。
商工会議所の創業支援融資のメリット
- 審査に通りやすい
- 金利が低い
商工会議所の創業支援融資のデメリット
- 事業計画書や決算書など必要書類が多い
- 事前に創業計画審査会、創業ゼミナールを受けていることが条件
- 融資総額と同額以上の自己資金が必要
不動産担保ローン
担保に入れられる不動産がある場合は、無担保ローンより審査の可決率が高く、高額の融資を受けられる不動産担保ローンを利用する方法もあります。
不動産担保ローンは土地や建物などの不動産を担保にすることで、低金利・高額の融資が受けられるローン商品です。不動産の担保価値が高く評価されれば、利用者自身の信用情報に不安があっても高額融資が受けられる可能性があります。
ただし、不動産の鑑定・登記という審査プロセスを経る必要があるため、審査結果が出るまで時間がかかります。返済が滞れば不動産を失うリスクも考慮する必要があるでしょう。
不動産担保ローンのメリット
- 不動産価値が高ければ審査に通りやすい
- 無担保ローンよりも金利が低い
- 高額融資が可能
不動産担保ローンのデメリット
- 返済ができない場合は担保を失うリスクがある
- 不動産の鑑定、登記に費用がかかる
事業者ローン(ノンバンク)
消費者金融会社や信販会社などのノンバンクは、中小企業の経営者や個人事業主に向けた事業者ローンを積極的に提供しています。
ノンバンク系の事業者ローンは銀行系と比べて審査の可決率が高めで、条件によっては最短即日で借り入れできます。
ただし、金利が12~18%と高めで返済期間も最長8~10ヶ月と短期のノンバンク系事業者ローンは、創業融資のように低金利・長期間で借りる資金調達とは分けて考えるべきです。とくに創業期は資金繰りが大変な時期ですので、ノンバンクで借りた現金をすべて創業資金に充てることはおすすめできません。
あくまでも副次的な資金調達方法と捉え、しっかりとした返済計画を立てたうえで、短期間で返済できる使途に充てましょう。
事業者ローン(ノンバンク)のメリット
- 比較的審査に通りやすい
- 最短即日の融資も可能
事業者ローン(ノンバンク)のデメリット
- 金利が高い
- 不動産の鑑定、登記に費用がかかる
ファクタリング
本業の売掛債権があれば、ファクタリング会社に売却して副業の開業資金を調達するという方法もあります。
ファクタリングは売掛債権の譲渡であって借入ではないため、これ以上融資を受けられないという状況でも回収前の売掛債権さえあれば利用することができます。
売掛先に債権譲渡の同意が得られるようであれば3社間ファクタリングを、債権譲渡を売掛先に秘密にしておきたい場合は2社間ファクタリングをおすすめします。
手数料相場は3社間ファクタリングが1~5%で、2社間ファクタリングが10~20%です。売掛先の信用力や過去の取引状況、あるいは利用者の人柄など、さまざまな要素で手数料は変動します。
ファクタリングはあくまでも1~2か月先に支払われる売掛債権の早期現金化ですので、創業資金に充てた後の資金繰り計画をしっかりと立てておく必要があります。
ファクタリングのメリット
- 審査に通りやすい
- 手数料が低い(3社間)
- 最短即日の融資も可能(2社間)
- 信用情報に影響がない
ファクタリングのデメリット
- 手数料が高い(2社間)
- 入金までに1~2週間かかる(3社間)
- 売掛先に債権譲渡の同意を得る必要がある(3社間)
中小企業ファンドの起業支援
中小企業ファンドとは、ベンチャー企業や中小企業への資金提供や支援を目的として、金融機関や事業会社、中小機構などさまざまな投資家の出資により構成されているファンド(基金)のことです。投資家から集められた資金はファンドを運営する投資会社が各企業に投資します。
中小企業ファンドの起業支援は設立5年未満の創業、成長初期段階のベンチャー企業の株式取得等による資金提供と積極的な育成支援・経営支援(ハンズオン)を目的としています。
ファンドから投資を受けるには、経営計画・資金計画が必須です。投資会社の審査を通過すれば、ファンドからの投資および育成支援を受けられます。
中小企業ファンドの起業支援のメリット
- 事業提携先を紹介してもらえる可能性がある
- 投資を受けたことが評価されその後の資金調達がしやすくなる
- 育成支援・経営支援が受けられる
中小企業ファンドの起業支援のデメリット
- 出資者の意向に沿った経営を行う必要がある
- 経営が立ちいかなくなると、早期に資金回収が行われる可能性がある
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、個人や企業が実現したいアイデアやプロジェクトを専用のインターネットサイトを通じて、不特定多数の人から出資を募る資金調達方法です。
当初は社会貢献事業に関するプロジェクトが主流でしたが、現在では中小企業や個人事業主の活動、事業に対する出資も増えつつあります。
たとえば、実業家の堀江貴文氏が出資する宇宙ベンチャー「インターステラテクノロジズ」の小型ロケット「MOMO(モモ)」は、クラウドファンディングで集められた資金によって研究開発、打ち上げが実施されたことはニュースにもなっています。
起案者が魅力的なアイデアやプロジェクトを打ち出し、支援者にとって利益のあるリターンを提示できれば、十分な資金調達が可能です。
クラウドファンディングのメリット
- 魅力的なプロジェクト・アイデアには資金が集まりやすい
- 支援者がそのまま新しい商品・サービスの顧客になる可能性がある
クラウドファンディングのデメリット
- 支援者の共感がなければ資金が集まらない
- 申し込みから入金まで時間がかかる
助成金・補助金
助成金・補助金は国や地方自治体が推進するエコや雇用創出、地域貢献などに寄与した事業者に支給される返済不要の資金のことです。
助成金・補助金は受給要件を満たしていることを確認したうえで、申請、事業の実施、事業実績の報告をした後に支給されます。
したがって申請してから支給までは1年以上かかることがほとんどです。
あくまでも要件を満たしていることが条件ですので、副業で雇用創出やキャリアアップなどの実績を出すことが大前提となります。
助成金・補助金のメリット
- 返済不要
- 消費税の課税対象とならない
助成金・補助金のデメリット
- 受給要件を満たす必要がある
- 申請から支給まで時間がかかる
副業の資金調達は本業の経営状況に合わせたもので選ぶ
今回ご紹介した副業の開業を計画している中小企業の経営者、自営業者向けの資金調達方法をまとめると次のとおりです。
- 家族・社員・取引先等からお金を借りる
- 都市銀行・地方銀行の創業融資
- 信用金庫の融資制度
- 日本政策金融公庫の創業融資制度
- 商工会議所の創業支援融資
- 不動産担保ローン
- 事業者ローン(ノンバンク)
- ファクタリング
- 中小企業ファンドの起業支援
- クラウドファンディング
- 助成金・補助金
どの資金調達方法にも、メリット・デメリット、そして活用すべきタイミングがあります。それらの見極めは本業の経営状況がポイントです。
副業が軌道に乗るまでは、調達した資金+本業の利益を副業の開業資金および成長資金に回すことになるでしょう。
開業資金が必要なときは、「いつまでに、いくら資金が必要なのか」「無理のない金利や返済期間」「資金繰りに悪影響を与えないか」など、経営状況を把握したうえで最適な資金調達方法を選ぶことが大切です。