「今日中にまとまった資金が必要」
「売上入金までのつなぎ資金を調達したい」
このような緊急の資金需要が発生した場合、すぐに思い浮かぶ資金調達方法が銀行からの借入です。
しかし、すでに銀行からの借入があり、審査結果を待つ時間の猶予もない場合は、別の資金調達方法を考えなければなりません。
そこで活用したいのが「ノンバンクのビジネスローン」です。
今回はノンバンクのビジネスローンの基礎知識や銀行との違い、ノンバンクのビジネスローンを有効活用するポイントを解説していきます。
ノンバンクのビジネスローンとは
ノンバンクとは、預金の受け入れを行わずに、貸金などの与信業務に特化した銀行以外(non-bank)の金融機関のことを指します。
ノンバンクに分類される金融機関には以下のものがあります。
- 消費者金融会社
- クレジットカード会社
- 信販会社
- リース会社
- 不動産金融専門会社
- 事業者専門金融会社
これらの金融機関が法人・個人の事業者向けに提供しているローン商品がビジネスローンです。
利用者は中小企業の経営者や個人事業主で、主に事業資金を調達するために利用されています。事業目的の融資は銀行が得意とする分野ですが、銀行が主に貸し出す事業者はある程度業績が安定して、従業員が100人以上の中小~大手企業です。
ノンバンクのビジネスローンは、銀行からの融資に期待できない従業員数十人以下の小規模な中小企業および零細企業、個人事業主を主な顧客としています。
ノンバンクと銀行のビジネスローンの違い
現在ビジネスローンの主流はノンバンクですが、一部の大手銀行、地方銀行なども比較的借りやすいビジネスローンを提供しています。
では、ノンバンクと銀行のビジネスローンにはどのような違いがあるのでしょうか?
適用される法律の違い
貸金業を主たる業務とするノンバンクは「貸金業法」が、貸金業以外に預金や保険など複数の業務を行う銀行は「銀行法」が適用され、それぞれ法律に従って業務を行っています。
利用する側にとってもっとも重要なポイントは、貸金業法では「総量規制」の対象になるということです。
総量規制とはいわば借り過ぎを防ぐためのルールのようなもので、
- 原則年収の3分の1以内に借入金の総額が制限される
- 1社から50万円以上借りるとき、または複数の会社から100万円以上借りるとき、収入証明書の提出が必須
という決まりがあります。これは貸金業法にのみ適用されるもので、銀行法にはありません。
貸金業法が適用されるノンバンクのビジネスローンは原則、総量規制の対象となります。ただし、一部のローン商品には審査によって規制対象外となるものもあるようです。
金利の違い
ノンバンクと銀行のビジネスローンでは、金利にも違いがあります。それぞれのビジネスローンの金利を比較すると以下のとおりです。
金融機関 | 金利(年率) |
---|---|
みずほスマートビジネスローン( みずほ銀行) | 1%~14% |
りそなビジネスローン「活動力」(りそな銀行) | 6.0~14.0% |
ビジネスセレクトローン(三井住友銀行) | 2.125%~ |
スーパービジネスローン(横浜銀行) | 2.75%~ |
ビジネスローン法人向け(ジャパンネット銀行) | 4.8~13.8% |
ビジネスサポートカードローン(アコム) | 12.0~18.0% |
ビジネスローン(ビジネクスト) | 3.1~18.0% |
事業融資・ビジネスローン(オリコ) | 8.4~15.0% |
VIPローンカードBUSINESS(オリックス) | 6.0~17.8% |
ビジネスローン(株式会社エスワイシー) | 7.5~15.0% |
表のとおり、銀行のビジネスローンのほうがノンバンクのビジネスローンに比べて、下限金利・上限金利ともに3~5%低めに設定されています。
なぜなら、銀行のビジネスローンは年商5,000万円以上の中堅~大手企業を想定しているからです。
零細企業や小規模事業者、すでに他社からの借入がある事業者は、銀行のビジネスローンでは借入が難しくなります。
融資までのスピードの違い
ノンバンクのビジネスローンは「スコアリングシステム」による審査を採用しています。
スコアリングシステムとは、個人または企業の信用度を点数化(スコアリング化)、審査業務のコスト削減・効率化して与信可否を判断するシステムのことです。
銀行の多くは融資専門の担当者が決算書や収入証明書に一つ一つ目を通す従来の審査の方法を採用しているため、審査結果が出るまでに3~5営業日の時間がかかってしまいます。
銀行よりもノンバンクのビジネスローンが有効なケース
ノンバンクのビジネスローンは銀行のビジネスローンよりも金利が高いことに注目されがちですが、以下のケースではノンバンクのほうが有効活用できる場合があります。
最短即日で融資を受けたい
ノンバンクは「スコアリングシステム」による審査を採用しているため、最短即日の融資が可能です。振込までの時間を想定して、午前中までに申し込めば当日中に現金を調達することができるでしょう。
業歴・業績が浅い
銀行のビジネスローンの中には、「業歴2年以上かつ直近2期以上の確定申告を継続完了していること」が申込み条件として設定されているケースが少なくありません。
なぜなら、銀行は返済実績が乏しい、業歴や業績が浅い、担保を提供する資産がない企業に対しては「信頼がない」として融資をしたがらないからです。
ノンバンクのビジネスローンの審査でも「業歴1年以上」が審査可決のボーダーラインですが、ビジネスローン専門の金融機関なら今後の事業内容や将来性を重視して、創業間もない経営者・事業主にも融資をしてくれる場合があります。
担保や保証人がない
ノンバンクのビジネスローンは担保・保証人が不要です。
「担保に入れられる不動産がない」「保証人になってくれる人がいない」という状況でも、ノンバンクのビジネスローンであれば借入できます。
もちろんノンバンクにも不動産担保ローンなどの有担保ローン商品があります。たとえば、不動産を保有していてより高額な借入を目的とするのであれば、不動産担保ローンを利用するのも一つの手です。
必要な時にいつでも・何度でも引き出したい
ノンバンクのビジネスローンは「カードローン」タイプで、明確な使用目的がない場合でも借入ができ、利用可能枠(借入限度額)内であれば、いつでも・何度でも引き出しができます。
たとえば、100万円の利用可能枠であれば、最初に50万円を借りて、その後から残りの50万円を1回借りるというような借り方も可能です。また、最初に利用可能枠いっぱいの100万円を借り入れても、50万円を返済すれば50万円分の枠が戻るため、再び50万円を借りることもできます。
対してフリーローンの場合は、契約書に基づき、借入金額や金利、返済金額を決めたうえで融資が実行されます。そのため、1回の利用につき借りられるのは1回だけとなっており、再び利用したい場合は、再度申し込みと審査を行わなければなりません。
一方で、銀行のビジネスローンは「フリーローン」と呼ばれるタイプが多く、こちらは決まった金額を最初に借りて、その後追加で借入をしないのが一般的です。
カードローンのようにいつでも引き出しができるわけではなく、お金が必要になればその都度審査を受けなければなりません。
必要なときにいつでも・何度でも借り入れできる利便性という点では、ノンバンクのビジネスローンに軍配が上がります。
ノンバンクのビジネスローン利用時の注意点
ノンバンクのビジネスローンを利用する場合、以下のことに注意しましょう。
しっかりとした返済計画を立てる
ビジネスローンの返済方法には、「元利均等返済」と「元金一括返済」の2種類があります。
元利均等返済とは借りた元本の返済と利息の合計額が毎回同じ返済額となる返済方法です。毎回の返済額が同じであるため返済計画が立てやすく、返済額を固定させたい場合には有効ですが、返済期間が長くなるほど金利負担が大きくなります。
たとえば、利用額【300万円】・返済利率【15%】・返済回数【60回払い】の元利均等返済のシミュレーションは以下のとおりです。
初回の返済額 | 最終回の返済額 | 返済総額 |
71,400 円 | 68,680 円 | 4,281,280円
(うち利息 1,281,280円) |
元金一括返済とは、借りた元本を数カ月後に一括で返済、その間は毎回利息のみ返済する返済方法です。売掛金の入金を待つ間のつなぎ資金に充てるといったケースで有効ですが、返済期日までに資金を準備できることが大前提となります。また、返済回数は1~12回と元利均等返済よりも少なめに設定されます。
たとえば、利用額【300万円】・返済利率【15%】・返済回数【12回払い】の元利均等返済のシミュレーションは以下のとおりです。
初回の返済額 | 最終回の返済額 | 返済総額 |
36,986 円 | 3,036,986 円 | 3,443,832 円
(うち利息 443,832 円) |
「数カ月後にまとまった売上の入金がある」など一括で返済できる見込みがある場合は元金一括返済を、それ以外の場合は元利均等返済を選ぶことになるでしょう。
いずれも返済回数が多いほど返済総額が膨れ上がるため、わざわざ金利の高いビジネスローンでお金を借りるからには、「しっかりと有効活用して遅れなく返済する」を目指しましょう。
複数利用は信用低下のおそれ
複数のビジネスローンを利用すると、取引先や顧客、取引銀行から「借金をしないと事業を続けていけない=資金繰りが悪化している」と見なされ、企業としての信用が低下するおそれがあります。特に銀行融資やローンの審査では必ず信用情報が照会されるため、借入件数や借入額が多いと不利になってしまいます。
さらに、複数のビジネスローンを利用していると、「いつ、どの会社に、いくら返済すればいいか」といった情報が混同してしまい、返済管理が難しくなってしまうこともあります。うっかり返済を忘れると遅延扱いになり、信用情報にキズがついてしまうため注意が必要です。
複数のビジネスローンの計画的に返済していくのであれば、銀行等の金融機関が提供している「おまとめローン」を利用してみましょう。おまとめローンで一元管理ができるので、返済忘れなどのリスクが減り、より低金利のおまとめローンなら金利負担も減らすことができます。
ノンバンクのビジネスローンの選び方
ネット上で探すだけでも非常に多くのノンバンクが事業者向けのローン商品を用意しています。
ローン商品を選ぶ際にもっとも気になるのは金利ですが、ノンバンクのビジネスローンはそもそもが高金利のローン商品であるため、銀行融資並みに低金利で借りられる業者を探すのに貴重な時間を割くのは得策ではありません。
では、利用者は何を基準にビジネスローンを選べば良いのでしょうか?
重視すべきは審査とスピード
もっとも重点を置くべきは「審査の難易度」、次いで融資までの「スピード」です。
ノンバンクのビジネスローンにも、大手消費者金融業者のビジネスローン、中堅~中小クラスのノンバンクのビジネスローンとでは審査の難易度が異なり、当然ながら前者の方が審査は厳しくなります。
ローン商品 | 審査の難易度 | 金利の相場 |
大手消費者金融業者のビジネスローン | やや高め | 3.0%〜18.0% |
中堅~中小クラスのノンバンクのビジネスローン | やや低め | 6.0%〜18.0% |
さらに、「今日中に支払いが必要」「返済日が明日に迫っている」といった緊急時には最短即日融資が可能なビジネスローンを選ぶべきです。
大方のノンバンクは前述の「スコアリングシステム」を採用しているため、基本的にはどの業者を選んでもスピード融資が可能ですが、当日中の現金調達を確実にするなら、審査の可決率が高く、最短即日融資可能なノンバンクに当日の午前中までに申し込むようにしましょう。
ただし、審査に落ちてしまえば即日融資は受けられません。「ノンバンクなら借りられるだろう」と過信せず、万が一融資を受けられなかったことを想定して、
- 他に即日で借りられそうなビジネスローンはないか?
- 家族や知人から借りられないか?
- 支払を遅らせることはできるか?
- 借り入れ以外に利用できる資金調達方法はないか?
などの準備も並行して進めておきましょう。
高額融資を希望する場合は有担保ローン
事業用の資金調達では、「いつまでに、○○万円必要」が明確になっていることでしょう。
しかし、再三述べている通り、ノンバンクのビジネスローンは銀行からの融資に期待できない中小企業や小規模事業者に、審査を緩くする代わりに高金利かつ短期の返済期間で貸し付けるローン商品ですので、1,000万円を超えるような高額な借入はできません。
ノンバンクのビジネスローンの融資限度額は高いところでも1,000万円までで、平均的な融資可能額は100万~200万円です。仮に運転資金300万円が必要なケースで200万円までしか借りられなかった場合は、残り100万円の何らかの方法で調達するしかありません。
すぐにまとまった資金が必要な場合は、有担保ローンの利用も検討してみましょう。
不動産担保ローンをはじめとする有担保ローンであれば、金融機関はいざというときに担保を売却して回収できるため、より高額な融資が可能となります。
有担保ローンは不動産担保ローンが広く知られていますが、不動産を持たない中小企業・小規模事業者でも利用できる売掛債権担保ローン、流動資産(在庫など)ローンなどもあります。
ノンバンクでも審査が通らない場合はファクタリングを
緊急に事業資金が必要となった場合の調達方法の一つして、ノンバンクのビジネスローンを解説しました。
金利の高さゆえに敬遠される方もあるかもしれませんが、売上金が入金されるまでの間のつなぎ資金など、有効活用すればノンバンクのビジネスローンほど手軽に利用できる資金調達方法はありません。
しかし、総量規制いっぱいに借入があったり、会社の経営が非常に不安定であったりする場合は、ノンバンクのビジネスローンといえど審査に通らない可能性もあります。
その場合は、売掛金を活用するファクタリングを検討してみてはいかがでしょうか?ファクタリングは支払期日前の売掛金(売掛債権)をファクタリング会社が買い取り、現金化するサービスです。
ファクタリングの審査基準は融資と全く異なるため、銀行やノンバンクの融資に断られた方でも売掛債権があればファクタリングで資金調達ができる可能性があります。
緊急時の資金調達に活用できる方法は多いに越したことはありません。ノンバンクのビジネスローンと併せて、ファクタリングの利用も検討しましょう。