初めてファクタリングを利用する人にとって、ファクタリング手数料の相場はいくらか・手数料率がどのように決まるのかは気になるポイントでしょう。
ファクタリングの手数料は、契約形態・請求書の内容・売掛先の信用力などさまざまな要素によって割合が決定されます。そして、利用者の工夫次第で手数料を抑えられる可能性もあるのです。
本記事では、手数料の相場・決定要素・内訳・手数料を抑えるポイントなどについてわかりやすく解説します。
この記事を読めば、ファクタリングの申込みの段階から意識しておくポイントがわかります。ファクタリングの仕組みを理解して、資金調達にかかるコストを最大限抑えましょう。
ファクタリングとは?
ファクタリングとは、売掛債権を売却することで早期に現金を受け取れる資金調達サービスです。
資金調達方法と聞くと融資を思い浮かべますが、ファクタリングと融資は異なります。融資とは「金融機関からの借入」のことで、ファクタリングで行うのは「売掛債権の譲渡」です。
そのため、ファクタリングは利息の代わりに手数料が必要になります。
ファクタリング会社に売掛債権を売却すると、手数料が差し引かれた金額が利用者の口座に振込まれます。
ファクタリング手数料とは?
ファクタリング手数料とは、主にファクタリング会社の利益の部分です。
手数料は一律〇%と決まっているわけではなく、各ファクタリング会社の審査基準を元に、契約形態・売掛債権などを考慮して割合が設定されます。
手数料相場は、次章で解説する2つの契約形態によって大まかに決められます。
ファクタリングの手数料相場
ファクタリングの契約形態には、2社間ファクタリング・3社間ファクタリングの2種類があります。
どちらを選ぶかによって、ファクタリング会社の提示する手数料の大枠が決定されます。両者の仕組みと違いを見ていきましょう。
2社間ファクタリングの仕組みと手数料
2社間ファクタリングとは、利用者・ファクタリング会社の2社のみでやり取りを完結させる契約形態のことです。
特徴を下記にまとめました。
項目 | 2社間ファクタリング |
手数料 | 10%〜20% |
入金スピード | 最短即日〜3日程度 |
売掛先に利用を知られるか | 知られない |
返金方法 | 売掛金の入金日に、利用者からファクタリング会社へ返金する |
契約関係に売掛先を交えないため、ファクタリングの利用を知られることはありません。そのため、売掛先との信用不安が起こりにくい・すぐに現金化できるといったメリットがあります。
デメリットは手数料が高めに設定されることです。売掛先に知られないからこそ、対外的に証明できる証拠が少なく、ファクタリング会社の背負う未回収リスクが高くなるからです。
なお、申込みから入金までWebで完結できるオンラインファクタリングだと、2社間ファクタリングでも2%〜12%が相場となります。
3社間ファクタリングの仕組みと手数料
3社間ファクタリングとは、利用者・ファクタリング会社・売掛先の3社で契約を結ぶ取引形態です。
特徴は以下のとおりです。
項目 | 3社間ファクタリング |
手数料 | 1%〜10% |
入金スピード | 1週間〜10日程度 |
売掛先に利用を知られるか | 知られる |
返金方法 | 売掛金の支払期日に、売掛先からファクタリング会社へ直接返金する |
3社間ファクタリングは、契約を結ぶ前に売掛先へ譲渡する旨を伝え、承諾を得るステップが入ります。
メリットは売掛先が契約関係に混ざるので、ファクタリング会社の貸し倒れリスクが低くなり、手数料が安く設定されることです。
反対にデメリットは、売掛先からの承諾書の送付を待つ必要があるため、現金化までに時間がかかる点です。また、ファクタリングの利用が開示されるので、関係性によっては信用不安を起こす可能性があります。
ファクタリングにかかる手数料の内訳
ファクタリング手数料の内訳は下記のとおりです。
内容 | 概要 | 費用相場 |
基本手数料 | 主に、ファクタリング会社の利益・契約へのリスク対価で算出される | 諸条件により異なる |
印紙代 | 契約書や証書など、経済的な取引に使用する文書に課せられる税金 | 1万円以下だと非課税・1万以上だと200円 |
債権譲渡登記費用 | 債権譲渡した旨を公的に証明するために登記する費用 | 登録免許税として7,500円・司法書士報酬として5万円〜10万円 |
振込手数料 | 買取金額の振込にかかる費用 | 0円〜1,000円 |
交通費 | 出張面談をする際にかかる費用 | 地域による |
このうち大きな費用となるのは、基本手数料・債権譲渡登記費用です。
債権譲渡登記は、利用者が法人で、なおかつ2社間ファクタリングを利用する際に求められるケースが多いです。
ただし、ファクタリング会社によっては登記をしなくて良い場合もあります。
ファクタリングの手数料率が決まる4つの要素
ファクタリングの手数料率が決まる要素は下記の4つです。
- 売掛先の信用力
- 売掛金の金額
- 支払サイト
- ファクタリング会社の利用回数
前述したように、ファクタリングにかかる手数料は取引形態によって◯%〜◯%といったように大枠が決まります。
この幅を目安に、どのように手数料率が決定されるかは主に下記の4つで算定されます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.売掛先の信用力
売掛先の信用力が高く、期日通りに回収できそうであればファクタリングの手数料率は低くなります。
なぜなら2社間ファクタリングも3社間ファクタリングも、売掛金を送金する大元は売掛先だからです。経営状況の悪化などで売掛金が回収できなければ、ファクタリング会社は損害を受けます。
例えば、売掛先が国・上場企業・公的機関などで、社会的信用が高ければ倒産する可能性が限りなく低いと判断されます。そのため、手数料は低く設定されやすいのです。
反対に売掛先が小規模事業者であれば、ファクタリング会社がリスクを抱える分、手数料が高くなる傾向にあります。
また、個人事業主が売掛先の場合、ファクタリングが利用できないケースもあるので事前の確認が必要です。
2.売掛金の金額
売掛金の金額が大きいほうが、ファクタリング手数料は低めに設定されます。
ファクタリング会社にとって売掛金が大きくても小さくても1回の契約にかかるコストに大差はないからです。コストが発生しない分、ファクタリング会社は効率よく利益を得られるので、売掛債権が大きいほど手数料は安くなりやすいです。
ただし、自社の年商に比べてあまりにも金額が大きい場合には、大口の仕事を行っていたとしても買取自体を断られる可能性があります。
例えば、年商1,200万円の企業がファクタリングで1,000万円を調達したいとなると「何に使うのか?」と疑問視されるからです。
自社の売上規模・調達額のバランスを意識して売却する売掛債権を選びましょう。
3.支払サイト
支払サイトの長さも手数料率の決定要因です。
売掛債権の支払サイトとは「支払期日は何日後なのか」という日数を指します。この日数が短いほうが低手数料に設定されます。
期日までの日数が長いほど、その期間中に経営悪化を起こす可能性が高まり、貸し倒れリスクに発展しやすくなるからです。
一般的にファクタリングで用いられる支払サイトは30日〜60日です。それ以上長いと手数料が高くなる上に、審査通過も厳しくなります。
4.ファクタリング会社の利用回数
ファクタリング会社の利用回数が、初めてなのか2回目以降なのかで提示される手数料は異なります。
健全な利用実績をもつ利用者は「約束通り返金してくれる優良顧客」として、手数料を安く設定されやすいです。
回収の見込みが十二分にあれば、手数料を多少引き下げてでも取引可能となります。
ファクタリングの手数料を抑える5つのポイント
ファクタリングの手数料を抑えるポイントは下記のとおりです。
- 3社間ファクタリングを利用する
- 信用力のある売掛債権を選ぶ
- 担当者に積極的に交渉をする
- 面談の印象を良くする
- 相見積もりを取る
それぞれ詳細を見ていきましょう。
1.3社間ファクタリングを利用する
手数料を抑えたいのであれば、3社間ファクタリングの利用を検討しましょう。
3社間ファクタリングは売掛債権の存在を対外的に証明できるので、ファクタリング会社の未回収リスクが低く、手数料を抑えられます。
ただし、3社間契約には売掛先の合意を得る必要があります。3社間契約で売掛先に生じるデメリットは以下のとおりです。
- 振込先変更の事務手続きが必要になる
- 万が一、送金が遅れてしまった際の対処が厳しくなる
このように、先方に少なからず不都合が生じるため、協力的な姿勢を見せてくれる売掛先かどうかは事前に判断しておく必要があります。
2.信用力のある売掛債権を選ぶ
売掛債権を複数保有しているのであれば、信用力のある売掛債権を選ぶのが理想的です。
前述したように、ファクタリングを低い手数料で利用するには、確実な回収が見込める売掛債権を選ぶことが重要です。なるべく規模が大きく、業績・財務状況などが安定している売掛先の債権を売却候補にしましょう。
3.担当者に積極的に交渉をする
ファクタリング会社の担当者に積極的に交渉を持ちかけるのも有効です。
売掛先が社会的信用力のある企業だと手数料率は優遇されやすいです。
もし、小規模事業主との取引しかない場合には、売掛先との取引実績が証明できる資料を用意しましょう。具体的には、通帳のコピーを提示された期間より多めに持っていくなどです。
小規模事業だと、一時の業績悪化に耐えられず倒産する可能性があると敬遠される傾向にあります。しかし、長期にわたって良好な取引実績が続けられている事実を証明できれば、貸し倒れリスクの不安を払拭できるからです。
売掛金回収の見込みの高さを証明できる資料を用意し、担当者に手数料を交渉してみてください。
4.面談の印象を良くする
売掛先の支払能力が重視されるファクタリングですが、利用者の情報がまったく見られないわけではありません。
とくに、契約をオンライン完結ではなく、はるばる面談を必須にしているファクタリング会社は利用者の人柄を重視している傾向にあります。
明らかに社会人としてのモラルに欠けていたり、書類の不備が多すぎたりすれば、手数料が高くなるどころか買取拒否にもなりかねません。
担当者に良い印象を抱いてもらえるよう、誠実な対応に努めましょう。
5.相見積もりを取る
ファクタリングを利用する際には、必ず相見積もりを取りましょう。
同じ売掛債権でも、相談するファクタリング会社によって手数料の算出方法が異なるからです。相見積もりは下記の手順で行います。
- ファクタリング会社の公式サイトを見る
- 手数料が相場より大幅に高くないかをチェックする(2社間:10%〜20%・3社間:1%〜10%)
- 一旦3社ほどに絞って問い合わせをする
3社程度に絞る理由は、1社〜2社だと比較が難しく、3社より多いと選択に時間と労力がかかるためです。
提示された手数料に納得できないようであれば、さらに複数者に相見積もりを取ってみましょう。
他社と比較して手数料の安いおすすめのファクタリングサービス4選
他社と比較して手数料の安いおすすめのファクタリングサービス4選をご紹介します。
ベストファクター
種類 | ・2社間ファクタリング ・3社間ファクタリング ・注文書ファクタリング |
調達可能額 | 30万円~1億円 |
手数料 | 2%~20% |
入金スピード | 最短即日 |
手続き方法 | オンライン・電話 |
公式サイト | https://bestfactor.jp/ |
ベストファクターは、審査通過率92%を超える柔軟審査が特徴のファクタリング会社です。
赤字決算・債務超過・税金滞納など財務状況の悪化により融資落ちしてしまった事業主様にも、積極的にファクタリングサービスを提供しています。
また、ベストファクターではファクタリングを提供しつつ、事業主様が再び資金繰り悪化を起こさないよう財務体質改善のアドバイスもしています。
資金調達と同時に経営改善も検討されている方は、ぜひベストファクターに相談しましょう。
PayToday
種類 | ・2社間ファクタリング |
調達可能額 | 10万~ |
手数料 | 1%~9.5% |
入金スピード | 最短30分 |
手続き方法 | オンライン |
公式サイト | https://paytoday.jp/ |
PayTodayは申込みから最短30分のスピード入金を誇るファクタリングサービスです。
申込みの手続きはWeb上で書類をアップロードするだけなので、必要書類さえ揃っていればすぐに資金調達に進めます。
また、手数料は1%〜9.5%と非常に良心的な設定であり、上限額が固定されているのも安心です。
資金調達を急いでいる・手続きを簡素に済ませたい方におすすめのサービスです。
OLTA
種類 | ・2社間ファクタリング |
調達可能額 | 下限・上限なし |
手数料 | 2%~9% |
入金スピード | 最短即日 |
手続き方法 | オンライン |
公式サイト | https://www.olta.co.jp/ |
OLTAは、業界最安の低手数料2%〜9%で提供しているファクタリング会社です。
手数料の高さがデメリットになりがちな2社間契約も、OLTAのファクタリングであれば、調達コストを抑えて利用可能です。
また、AI審査を導入しており、最短即日振込を実現しています。
手数料を安く抑えたい・手軽に資金調達をしたい方は利用を検討すべき1社と言えます。
FREENANCE
種類 | ・2社間ファクタリング |
調達可能額 | 下限・上限なし |
手数料 | 3%~10% |
入金スピード | 最短30分 |
手続き方法 | オンライン |
公式サイト | https://freenance.net/ |
FREENANCEは、個人事業主・フリーランス特化型のファクタリングサービスです。
調達可能金額に制限がなく、小口債権・大口債権のどちらにも対応しており、幅広いシーンで利用できます。
また、FREENANCEの魅力は、予想外の災害に逢ってしまった際に「フリーナンスあんしん補償」が無料で受けられる点です。
例えば、納品物の破損・災害によって生じた納期の遅延など、偶然起きてしまった事故に対して最大5,000万円まで補償が受けられます。
万が一の出来事に備えたい事業主にはうってつけのサービスと言えます。
ファクタリングの手数料についてよくある質問
ここでは、ファクタリングについてよくある質問をまとめました。
ファクタリングの手数料の勘定科目はどれですか?
ファクタリング会社への手数料は「売上債権売却損」の勘定科目にて、経費として計上します。
なお、ファクタリングの仕訳は下記の3つのタイミングで必要になります。
- 売上金が発生したとき
- ファクタリング契約をしたとき
- 売掛金の売却額が振込まれたとき
売掛債権が100万円だと仮定して、ファクタリングの仕訳例を見ていきましょう。
【売掛金が発生したときの仕訳】
通常の商取引と同様に、請求書を起こしたときに「売掛金」「売上」を入力します。
借方 | 貸方 | ||
売掛金 | 100万円 | 売上 | 100万円 |
【ファクタリング契約をしたとき】
ファクタリング契約を締結したら「売掛金」を消して「未収入金」として入力します。未収入金とは、資産を売却して代金を後払いしてもらうときに使用する勘定科目です。契約締結から入金までの間はこのままの状態です。
借方 | 貸方 | ||
未収入金 | 100万円 | 売掛金 | 100万円 |
【売掛金の売却金額が振込まれたとき】
ファクタリング会社から売却額が振込まれたら、手数料10%だった場合は「売上債権売却損」に10万円・残りの売却額である90万円を「普通預金」に入力します。
借方 | 貸方 | ||
普通預金 | 90万円 | 未収入金 | 100万円 |
売上債権売却損 | 10万円 |
以上で仕訳は完了です。契約日と入金日が同じ日であれば、2番目の【ファクタリング契約をしたとき】が不要になります。
会計ソフトに「売上債権売却損」の鑑定科目がなければ、支払手数料・雑損失・債券割引料に入力しても問題ありません。
個人事業主でもファクタリングは利用できますか?
個人事業主・フリーランスでも売掛債権の保有があれば買取可能なファクタリング会社は多いです。
ただし、法人のみ対象にしている業者も多いので、事前に公式サイトで確認しましょう。
なお、売掛先が個人事業主ではなく「個人」の場合は、買取できないケースがほとんどです。
ファクタリングの手数料に消費税はかかりますか?
ファクタリングの譲渡代金・手数料に消費税はかかりません。
ファクタリングは、国税庁が定める非課税取引の1つである「有価証券等の譲渡」に分類されます。
ただし、譲渡代金・手数料以外には消費税がかかります。例えば、面談にかかる交通費・債権譲渡登記をする際の司法書士への報酬などです。
そのため、契約書に「消費税」という名目が記載されていたら、何に対して課税されているかを確認しましょう。
ファクタリングの手数料に上限はありますか?
ファクタリングには手数料の相場はありますが、上限はありません。
融資には利息の上限を定めた「利息制限法」がありますが、ファクタリングには上限を規制する法律がないためです。
そのため、利用するファクタリング会社を選定する場合には「相場より高くないか?」が重要なチェックポイントになります。
手数料は売掛債権にもよりますが、一般的には2%〜15%程度になることが多いです。
ファクタリング業界には高額な手数料を要求する悪徳業者も存在します。相場や手数料の要素を正しく理解して、被害に遭わないよう気をつけましょう。
ファクタリング手数料を理解して損のない資金調達をしよう!
ファクタリングの利用には手数料がかかります。
手数料が決まる要因はファクタリング会社独自の審査基準もありますが、基本的には貸し倒れリスクの高さに比例して変動します。
手数料を安く抑えたいのであれば手数料率の決定要因を理解しておくことが必要です。調達コストを最大限に抑えて、効果的な資金調達を行いましょう。