この記事は約9分で読めます。
会社を経営していれば、避けては通れない「資金繰り」。その意味をしっかりと理解していますか?
資金繰りは、会社の資金の流れのことで、安定的な経営のためには絶対に欠かすことのできない重要な要素です。
経営者は資金繰りの基本的な仕組みを理解することで、また自社の資金繰りを「見える化」することで、余裕を持った経営ができるようになります。
今回は、初歩的ながら経営者には必須の知識である「資金繰り」の意味や、資金繰り表を作成して資金繰りを管理する意味、会社の資金繰りが悪化する要因とその対処法について解説します。
記事の目次
資金繰りの意味
資金繰りとは、一般的に「会社のお金のやり繰り」のことを指します。
家庭でも会社でも、入ってくるお金と出ていくお金をコントロールしながら、収支のバランスを保つことに変わりはありません。
ただし、事業を運転していく元手となるお金は、「資金」と呼ばれているため、会社のお金のやり繰りを一般的に「資金繰り」といいます。
資金繰りとキャッシュフローの違い
会社のお金のやり繰りを表す言葉には、資金繰りの他に「キャッシュフロー」というものもあります。
キャッシュフローとは、現金(=キャッシュ)の流れ(=フロー)を表す言葉で、一見すると資金繰りと同じ意味のように捉えられますが、資金繰りが近い未来のお金の流れを把握するためのものである一方、キャッシュフローは過去の一定期間の現金の流れを把握するためのものです。
たとえば、「今月は1,000万円の収入があったが、2ヶ月後に1,500万円の支払いがあるから、このままでは2ヶ月後に赤字になる」ということを考えるのが資金繰りです。
一方で、「月初に1,000万円を持っており、500万円の収入があって300万円の支出があれば、キャッシュは200万円増加、月末には1,200万円残っている」というように、過去の一定期間の現金の流れを表すのがキャッシュフローです。
このように、資金繰りとキャッシュフローは似たような意味でも、目的や活用方法が異なるということを理解しておきましょう。
資金繰りと資金調達の違い
資金繰りと同じく、経営者が頭を悩ませる会社の課題に「資金調達」があります。
この2つも混同されがちな言葉ですが、資金調達は「事業を運転する資金が足りなくなったときに補填すること」です。
資金繰りで会社の資金の流れをコントロールして収支のバランスを保ち、それでも資金が足りなくなったら資金調達で資金を補填すると考えると良いでしょう。
なお、経営者はなるべく資金繰りで資金が不足しないようにコントロールすべきで、どうしても資金が足りないときに資金調達をするという経営方針が望ましいです。
経営者が資金繰り表を作る意味
資金繰り表は、月単位、週単位、日単位と、一定期間において資金繰りの状況を表す書類です。
なぜ経営者は自ら資金繰り表を作成し、管理する必要があるのでしょうか?
会社の資金の流れを把握するため
資金繰り表の目的は、会社における資金繰りの状況を具体的な数字で把握して、上手くコントロールすることです。
資金がいくら入ってくる、どれだけ出ていくということを資金繰り表の数字で把握していれば、資金不足の兆候を早期に発見できるため、資金調達などの対策を練ることができます。一方で、資金繰り表の数字で将来的に資金の余裕ができることを把握していれば、タイミングを逃さずに事業活動への投資もできるため、効率的な事業展開が可能です。
何より、「会社の資金の流れが、資金繰り表ではっきりとわかる」というのは、経営者も精神的に余裕ができます。
銀行から融資を受けるため
資金繰り表は決算書とは異なり、税務署に提出することを求められていないため、作成・管理していない会社も少なくありません。
しかし、資金調達の必要に迫られ、銀行に融資を依頼する際、ほぼ確実に資金繰り表の提出を求められます。
銀行側は資金繰り表を見ることで、融資によって会社の経営が改善させるのか、返済原資をどうやって捻出するのかを確認します。
また、経営者側は資金繰り表を元に融資が必要な理由を述べることで、融資の実行につながります。
「資金繰りは自分の頭の中に入っているから大丈夫」と思っている経営者でも、いざ資金不足となったときにすぐ対応できるように、今からでも資金繰り表を作成しておきましょう。
「資金繰りが悪化する」の意味
資金繰りが悪化するとは、会社から出ていく資金が入ってくる資金を上回り、間もなく資金不足となる状態を指します。
健全な会社経営には、決算書が黒字になっているかよりも、手元に資金がどれだけあるのかの方が重要です。売上・利益があっても、手元に資金として入ってこなければ、支払いが滞って資金繰りが悪化、最悪の場合は黒字倒産してしまいます。
ここでは、資金繰りが悪化する要因について解説します。
赤字経営の継続
資金繰りが悪化する原因はさまざまありますが、最大の要因は会社に入ってくる資金よりも、出ていく資金のほうが多くなる「赤字」の状態が続くことです。
基本的に、利益を上げたり、資金調達をしたりして会社に入ってくる資金が出ていく資金を上回れば、資金不足になることはありません。
しかし、毎月利益が出ているからといって、過剰に商品在庫を抱えたり、設備投資をしたりすると、資金繰りが悪化してしまいます。
在庫や設備への投資は、数ヶ月先の資金繰りまで予測した上で、なお余裕があると判断できるときに着手するようにしましょう。
売上の急増
短期間で売上が大きく伸びたときにも、資金繰りの悪化に注意が必要です。
会社が商品やサービスを納入するまでには、原材料や設備費用、人件費、外注費などがかかります。売上が急増すると利益アップにも期待できますが、一方で多額の先行投資が必要になり、資金繰りが悪化します。
さらに、売上・利益の入金よりも支払いが先に来ると、通常よりも資金不足になるスピードが加速してしまいます。
企業同士の商取引は、手形や売掛金を用いる掛取引が主流のため、どうしても売上が入金されるまでにはタイムラグがあります。
大量受注などで売上がアップが見込まれても、売上金の回収と仕入先や人件費等の支払いのタイミングには、十分に気をつけましょう。
資金繰りを改善させるには
資金繰りを改善するには、会社の資金の流れを把握することが最重要です。
資金繰り表を作成して数ヶ月先の資金繰りの状況を予測、いつ資金が不足するか把握できれば、早期に対策を講じることができます。
会社の手元の資金が足りないのであれば、外部からの資金調達を試みましょう。資金調達には銀行から融資やファクタリングによる売掛債権の早期資金化、あるいは遊休資産や有価証券の資金化などが挙げられます。
さらに、売上金の入金のタイミングが支払いよりも後に来るのであれば、クライアントに売上の入金を早めてもらったり、逆に仕入先などに支払いを先延ばしにしもらったりして、なるべく「回収が先、支払いが後」の状態を作ることが重要です。
より詳細な資金繰りの改善方法は、以下の記事をご参考になさってください。
資金繰りの意味に関するQ&A
資金繰りの意味に関して、よくある質問とその回答をQ&Aにまとめました。
- Q.資金繰りをうまく回すには、資金にどれくらいの余裕があれば良いですか?
- A.赤字でないことを前提とすれば、月商の3ヶ月分の資金があれば安定していると言えます。
- Q.なぜ銀行融資の審査で資金繰り表が重視されるのですか?
- A.銀行が融資の際にもっとも重視するのは、「資金使途」と「返済財源」です。資金使途はお金の使いみち、返済財源はお金を返すあてのことを指します。資金使途が明確で、なおかつ返済財源がしっかりしていれば、銀行は問題なくお金を貸してくれます。資金繰り表は資金使途と返済財源を具体的な数字で表し、銀行からお金を借りても返済に問題がないことをアピールするために必須の書類です。
>>「資金繰り表の意味」について詳しく見る
- Q.資金不足になる前に資金調達をしたいのですが、すでに銀行から借り入れがあり、借りるあてがありません……
- A.事業用に購入したにもかかわらず、ほとんど利用しない資産があれば、すぐに資金化することをおすすめします。また、回収前の売掛債権があれば、ファクタリングで早期に資金化するのも有効です。売却できる資産がない場合は、金利こそ高くなりますが、他社借入があっても利用しやすいノンバンクのビジネスローンを検討しましょう。
- Q.ファクタリングで資金調達を検討していますが、取引先から同意が得られるか心配です。
- A.売掛先の同意が不要な「2社間ファクタリング」をおすすめします。2社間ファクタリングは利用会社とファクタリング業者の2社間で交わす債権売買契約で、売掛先は一切関与しないため、債権売買の事実を第三者に知られる心配がありません。
資金繰りを安定させるためには
資金繰りを安定させるためには、売上をしっかりあげて利益を確保していくことを大前提とした上で、売上金を早期に回収して手元の資金を増やすことが最重要です。
前述の通り、どれだけ決算書が黒字でも、手元の資金がショートすると、会社は遅かれ早かれ倒産に陥ってしまいます。
決算書だけでなく、資金繰り表で近い未来の会社の資金の流れを把握しておくことで、「転ばぬ先の杖」として、万が一の資金不足にも早期に対処できるようになります。