フリーランスや個人事業主の新たな資金調達方法として注目されている「請求書買取サービス」をご存知ですか?
毎月クライアントに発行している請求書を売却することで、代金や報酬の決済期日(支払期日)が到来する前に、まとまった資金を受け取ることができます。
今回は請求書買取サービスを利用するにあたって理解しておくべきポイントや、おすすめの請求書買取サービスTOP5について解説します。
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インターネットですべてのやり取りを行うため、手続きが簡素化・迅速化されると同時に、事務コストも下げられます。2社間ファクタリングの手数料相場が10~20%といわれる中、オンライン完結型の10%前後の手数料は魅力です。しかし、審査基準が高めになるという点も考慮する必要があります。
記事の目次
請求書買取サービスとは
請求書買取サービスとは、主にフリーランスや個人事業主を対象とした「ファクタリングサービス」のことを指します。
ファクタリングは、事業者が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却して、決済期日前に買取代金を受け取るサービスです。
売掛債権とは、企業やフリーランス、個人事業主が取引先企業に商品やサービスを提供した際に発生する、「後から代金を請求する権利」を指します。
売掛債権には決済期日(支払期日)が定められており、一般的には仕事が完了してから数週間~数ヶ月後に入金されます。
ファクタリングを利用してこの売掛債権を売却すると、売掛債権が入金されるまでの期間を短縮、早期にまとまった現金を受け取ることができます。
売掛債権を売却する際に、その債権の存在を証明する証憑として「請求書」が必要となるため、「請求書買取サービス」とも呼ばれているのです。
ファクタリングは利用コストが大きいので実際に使うかどうかは別問題ですが、事業を営むフリーランスや個人事業主の「新たな資金調達方法の1つ」として覚えておきましょう。
請求書買取サービスの仕組み
ファクタリングには、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングという2つの契約方法があります。
請求書買取サービスは2社間ファクタリングで契約が結ばれるため、クライアントに請求書売却の事実を知られることなく現金化が可能です。
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの詳しい解説は、以下の記事をご参考になさってください。
請求書買取サービス(2社間)は、以下のプロセスで行われます。
①請求書を発行する
フリーランスがクライアント(取引先)に商品やサービスを納入後、仕事内容、報酬額、決済期日、振込先の金融機関の口座などを記載した請求書を発行します。
請求書はクライアントに代金の支払いを請求するため、確かに取引が成立したことの証拠となるため、「証憑」と呼ばれます。
BtoB(事業者間取引)は口約束だけでも成立する場合もありますが、後から「支払った・支払っていない」といったトラブルにならないよう、証憑を発行して取引の証拠を残しておくことが大切です。
②請求書買取サービスに申し込む(運営会社による審査)
請求書買取サービスに申し込むと、提出された書類をもとに運営会社でオンライン審査が行われます。
申し込みに必要な提出書類は、請求書、フリーランスの本人確認書類、事業用口座の入出金明細、昨年の決算書(確定申告書)などがあります。
請求書買取サービスに申し込んだその日のうちに買取代金を受け取りたい場合は、あらかじめ提出書類を揃えておきましょう。
なお、審査では銀行融資やビジネスローンのように、利用者の返済能力や信用情報よりも、売掛債権やクライアントの信用力が重視されます。
③買取代金が振り込まれる
請求書買取サービスの運営会社より、利用者の指定した金融機関の口座に買取代金が振り込まれます。
買取代金は、売却した請求書の額面から2~10%の買取手数料を差し引いた金額です。
たとえば、10万円の請求書を買取手数料5%で売却すると、差し引かれる手数料分は5,000円、手元に残る現金は9万5,000円です。
請求書買取サービスによっては、運営会社が振込手数料を負担してくれるところもあります。
④決済期日に売掛金が支払われる
決済期日にクライアントから、フリーランスが納入した商品やサービスに対する代金(報酬)が支払われます。
万が一、決済期日にクライアントからの代金が遅れることがわかったら、すぐに請求書買取サービスの運営会社に連絡しましょう。
⑤売掛金を請求書買取サービスで指定された口座に振り込む
クライアントから支払われた代金(報酬)は、フリーランスがいったん預かり、指定期日内に請求書買取サービスが指定した口座に振り込みます。
フリーランスが勝手に代金を使い込んだり、別の支払いで自動引き落としされたりした場合は、請求書買取サービスの運営会社のリスクとなってしまいます。
サービスの規約によっては遅延損害金が発生する可能性もあるため、代金は確実に振り込むようにしましょう。
請求書買取サービスを利用するメリット
請求書買取サービス(ファクタリング)を利用することで、フリーランスや個人事業主は以下のようなメリットが得られます。
資金繰りが改善できる|メリット1
フリーランスや個人事業主にもっとも多い悩みのひとつが「資金繰り」です。
商品やサービスを納入してクライアントから報酬が支払われるのは数週間~数ヶ月後で、その間もオフィスの家賃や人件費、外注費といった事業の経費は出ていきます。
請求書買取サービスでまとまった資金を早期に調達することで、事業の資金繰りにも活用することができます。
事業の運転資金が不足したとき、フリーランスや個人事業主の多くは銀行融資や公的金融機関からの借入に頼りますが、申し込みから審査、入金まで時間がかかる上に、書類集めや資料作成、手続きも煩雑です。
請求書買取サービスは煩雑な手続きや書類集めもなく、事前の準備をしっかり行えば、申し込みの当日に現金を受け取ることもできます。
利用者の返済能力や信用情報は重視されない|メリット2
請求書買取サービス(ファクタリング)は、売掛債権という資産を売買する債権売買契約ですので、銀行融資や公的金融機関の融資制度、ビジネスローンなどとは根本的に異なる資金調達方法です。
審査では利用者の返済能力や信用情報よりも、請求書の信用力が重視されます。
たとえば、すでに総量規制ギリギリまで借り入れがあったり、信用ブラックの状態であったりしても、信頼性の高いクライアントの請求書があれば、請求書買取サービスの審査に通過できます。
請求書買取サービスの利用後も、信用情報機関に登録されることはありません。
クライアントの同意が不要|メリット3
請求書買取サービスは、基本的に「2社間ファクタリング」と呼ばれる形式で請求書を売買します。
2社間ファクタリングとは、利用者とファクタリング会社の2社間で結ばれる契約で、クライアントの同意を得る必要なく、請求書を現金化することができます。
クライアントに請求書買取の情報は一切知られることがないため、「請求書を売却することをクライアントに知られたら、今後の取引に支障が出るのではないか?」という信用不安を心配する必要がありません。
オンラインで完結する|メリット4
請求書買取サービスは、面談不要、郵送による書類の送付も不要、スマホやPCからオンラインで手続きが完結するものがほとんどです。
オンラインで完結するということは、運営会社は実店舗を持つ必要がなく、請求書買取サービスにかけるコストが少なくて済むため、一般のファクタリングよりも5~10%ほど手数料が安く抑えられています。
支払不能(デフォルト)リスクを回避できる|メリット5
請求書買取サービスを利用して決済期日前に請求書を現金化すれば、支払不能(デフォルト)リスクを回避することができます。
デフォルトリスクとは、クライアントや取引先が倒産等の理由で代金や報酬が支払えなくなること(債務不履行)を指します。
事業の運転資金の大部分を報酬に頼っているフリーランスや個人事業主の資金繰りは、デフォルトによってたちまち悪化、仕入れ費用や人件費の支払いができなくなり、最悪の場合は倒産に陥る可能性もあります。
請求書買取サービスを利用して売却した請求書は、クライアントが支払不能となっても、リスクはすべて請求書を買い取った運営会社が負うため、利用者に買い戻しの義務がなく、なおかつ買取手数料を差し引いた分の現金は手元に残すことができます。
請求書買取サービスを利用する場合の注意点
請求書買取サービスを利用するにあたって、以下に挙げる注意点を確認しておきましょう。
手数料がかかる|注意点1
請求書を買い取ってもらうにあたって、請求書額面の2~10%の手数料がかかり、売却した請求書の額面が大きいほど手数料の影響は大きくなります。
一見するとさほど高くない手数料に思えますが、請求書買取サービスで早期に現金化したことで、満額を受け取ることができないということです。
ギリギリの資金繰りで操業しているフリーランスや個人事業主にとっては、請求書買取サービス利用後の経営改善計画をしっかりと立てておく必要があります。
支払期日を過ぎた請求書は買い取ってもらえない|注意点2
買い取ってもらえる請求書は、あくまでも決済期日前の請求書です。
決済期日が過ぎた請求書は不良債権となり、請求書買取サービスで現金化することはできません。
フリーランスにおすすめの請求書買取サービスTOP5
資金繰りに悩む個人事業主やフリーランスにおすすめの請求書買取サービスをご紹介します。
以下に紹介する請求書買取サービスは基本的にオンライン完結型で、クライアントに同意を得る必要がない「2社間ファクタリング」であるため、最短即日で請求書を現金化することができます。
クラウドファクタリング|OLTA(オルタ)
手数料 | 2~9% |
入金スピード | 最短24時間以内 |
買取限度額 | 無制限 |
提出書類 |
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URL | https://www.olta.co.jp/ |
OLTA(オルタ)は、法人・個人どちらも利用できるオンライン完結型「クラウドファクタリング」で、創業2年にして申込金額100億円を突破、今もっとも勢いのあるファクタリング会社です。
一般的な2社間ファクタリングは手数料10~20%が相場のところ、クラウドファクタリングは手数料2~9%で、買取金額に上限も下限もありません。
さらに、継続して利用すると優待内容がグレードアップしていく独自のシステムもあり、手数料カットや利用金額アップなどの優待が受けられます。
初めて請求書買取サービスを利用する方は、同社を利用すれば間違いないと言っても過言ではありません。
即日払い|FREENANCE(フリーナンス)
手数料 | 3~10% |
入金スピード | 最短即日 |
買取限度額 | 要確認 |
提出書類 | 請求書(即日払いの審査時) |
URL | https://freenance.net/ |
FREENANCE(フリーナンス)は、フリーランスや個人事業主向けに、仕事中の事故を補償する「あんしん補償」、請求書買取サービスの「即日払い」という2つのサービスを提供しています。
「即日払い」を利用するには、事前にフリーナンスに個人情報を登録(要審査)して、請求書の振込先を「フリーナンス振込専用口座」にする必要があります。
フリーナンス側は利用者に振込専用口座を作らせ、クライアントからの報酬を振込専用口座に入金させることにより、2社間ファクタリングのリスクのひとつである「利用者による使い込みリスク」を回避、一般的な2社間ファクタリングよりも低い手数料を実現しています。
請求書ファイナンス|Freee(フリー)
手数料 | 2~9% |
入金スピード | 1営業日以内 |
買取限度額 | 要確認 |
提出書類 |
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URL | https://www.freee.co.jp/finance/invoice-finance/ |
請求書ファイナンスは、会計ソフトで知られる「freee」が、登録済みユーザーに提供する請求書買取サービスです。
同サービスに申し込むと、あらかじめfreeeに登録した財務データ、売掛債権データをもとに、買取可能性の高い売掛債権が自動試算され、申込者に買取オファーが出されます。
買取オファーを受けるためには、取引先が法人であること、請求書に振込期日(入金予定日)の記載があること、正しい試算表が登録済みであることが条件です。
オファー後は最終申込手続きを経て、最終審査(OLTAによる審査)の結果が開示され、買取成立となります。
手数料は請求書買取サービス最安水準の2~9%で、あらかじめ提出書類を揃えておけば、申し込み当日に現金を受け取ることができます。
Chatwork 早期入金|チャットワーク
手数料 | 2~9% |
入金スピード | 最短24時間以内 |
買取限度額 | 無制限 |
提出書類 |
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URL | https://lp.chatwork.com/ja/factoring/ |
「Chatwork 早期入金」は、クラウド型ビジネスチャットツールで知られるChatWork(チャットワーク)が、ファクタリング大手のOLTAと提携したサービスです。
Chatworkの利用者は、請求書の売却をChatWorkの専用相談フォームに必要事項を記入のうえ送信します。相談を受けたChatworkがOLTAへ利用者の個人情報、請求書情報を提供し、OLTAから利用者へ請求書の買取について案内が届きます。
手数料はOLTAのクラウドファクタリングと同じ2~9%で、入金スピードや買取限度額、提出書類もOLTAのクラウドファクタリングと共通しています。
yup(ヤップ)先払い
手数料 | サービス利用料10%、振込手数料:250円 |
入金スピード | 即日(正午までに審査が完了した場合) |
買取限度額 | 1万円~ |
提出書類 | 請求書 |
URL | https://lp.yup.jp/ |
yup(ヤップ)先払いは、フリーランス向けの報酬即日払いサービスです
利用にあたっては、あらかじめyupにアカウントを登録(個人情報・事業者情報の登録)、請求書を登録しておく必要があり、取引先に送った入金前の請求書情報をyupに登録、審査に通過すれば、請求書買取が成立します。
24時間対応のサービスですので、振込は即座に実行され、セブン銀行からいつでも引き出すことができます。
買取手数料は申請金額の10%+振込手数料で固定となっていますが、他社の請求書買取サービスに比べて提出書類が少なく、手続きも非常に簡単というメリットがあります。
請求書買取サービスに関するQ&A
請求書買取サービスに関して、よくある質問とその回答をQ&Aにまとめました。
- Q.赤字決算が原因で銀行融資を断られているのですが、請求書買取サービスは利用できますか?
- A.すでに金融機関から融資を断られていても、信用力の高いクライアントの請求書があれば、請求書買取サービスが利用できます。
>>「請求書買取サービスは利用者の信用情報を重視しない」について詳しく見る
- Q.請求書買取サービスを利用するにあたって、代表個人が連帯保証になったり、第三者を保証人に立てたりする必要はありますか?
- A.ありません。請求書買取サービスは担保や保証人が一切不要です。
- Q.銀行から既に借り入れがあり、返済中でも請求書買取サービスは利用可能ですか?
- A.決済期日前の請求書があれば可能です。請求書買取サービスは借入ではないため、利用者の返済能力や信用情報に関わりなく利用できます。
- Q.請求書買取サービスでは、どのような請求書が買取対象となりますか?
- A.運営会社にもよりますが、「法人または官公庁向けの売掛債権」であり、なおかつ入金日と金額が確定している「確定債権」である必要があります。個人事業主や個人向けの債権は対象外で、決済期日を過ぎた不良債権、入金日が確定していない将来債権の請求書は、買取対象となりません。
- Q.クライアントの会社が倒産した場合、請求書買取サービスの利用者はどうなりますか?
- A.請求書買取サービスは、運営会社がクライアントの倒産リスク(支払不能リスク)も含めて買い取りする「ノンリコース契約(償還請求権がない契約)」ですので、利用者に買い戻しなどの保証を求めることは一切ありません。
フリーランスの資金繰りは請求書買取サービスで改善
請求書買取サービスは、銀行融資やビジネスローンなどと比べると、認知度や普及率がまだまだ低い金融サービスですが、経済産業省も借入に代わる新たな資金調達方法として推奨しています。
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今回の記事で紹介した請求書買取サービスのポイントやおすすめの会社を参考に、自身の利用目的に合ったサービスを利用してみてください。