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資金繰りを改善する6つの方法を具体例と共に紹介します。
なぜ資金繰りが悪化してしまうのか、各要因の対処法を知るとともに、キャッシュフローの重要性や考え方を身につけましょう。
事業を続けるために必要な「資金繰り」は、売上が下がってしまったり支出が増えたりするとあっという間に悪化してしまいます。
そこでどのような対策をとり、いかに素早く資金繰りを改善させるかどうかで会社の今後が大きく変わると言っても過言ではありません。
この記事では、多くの経営者が気に留めるべき、6つの資金繰り改善方法を解説します。
資金繰りとは?
「資金繰り」とは、収入と支出のバランスを調整して、事業を続けられるようにすることです。
資金繰りは、すぐ先の未来の現金の流れを把握、管理することです。
対してキャッシュフロー計算書は、過去の資金の流れを把握、管理します。
一般的に、資金繰りがうまくいかなくなると支払いが滞り、企業は倒産します。しかし、たとえ黒字でも倒産する可能性はあります。これを調整して事業を継続できるようにするのが、資金繰りです。
黒字倒産は、売上があるものの手元にお金が入ってくるタイミングが遅く、先に支出が多くなったために事業継続が難しくなった状態を指します。つまり、支払いのタイミングより前に売掛金が回収できない状態です。
なぜ資金繰りが悪化する?
資金繰りが悪化してしまう理由は企業によってさまざまですが、資金繰りが悪化する原因を大まかに分けて考えてみましょう。
資金繰り悪化の原因は以下のように整理できます。
【キャッシュ・インの減少】
- 売上の減少
- 費用の増加
- 売掛債権の回収遅れ
【キャッシュ・アウトの増加】
- 過大在庫
- 過剰な設備投資
- 過大な不良資産
- 仕入債務の早期支払
- 前払金、貸付金、仮払金の増加
- 借入金早期返済
【認識不足】
- 資金の流れを把握できていない
- 投資・消費・浪費がしっかり分けられていない
支出の増加には、たとえば過剰在庫を抱えていたり、新たな人材を雇って人件費が増えたりすることが考えられます。店舗を改装したり新たな機材を導入したりするなど、一時的に支出が増えるケースもあるでしょう。
キャッシュインが減ってしまうこと、キャッシュアウトが増えてしまうことは企業が健全に経営を進めていく上で大きな「課題」と認識しましょう。
また、黒字倒産の例でもご紹介しましたが、支払いと収益が入る時期がずれることも資金繰り悪化の大きな要因です。月末まで入金がないにもかかわらず、それまでに支払いが重なってしまうというケースがあります。
自社の資金の流れを把握・管理しきれていないなど、なぜ資金繰りが悪化したのか、その理由がわかっていない人も少なくありません。
資金繰りが悪化する理由がわかったところで、具体的な改善方法を見てみましょう。
資金繰り改善方法とは?具体的事例付き
ここからは、資金繰りを改善するためにできることを6つご紹介します。
支出を減らして改善する方法
すぐにできる資金繰り改善方法として、出ていくお金、つまりキャッシュアウトを少なくすることが挙げられます。家計の見直しもまず固定費の見直しから行うように、事業においても余計な支出を減らすことは重要なポイントです。
- 在庫確認、余剰在庫の処分
- 業務内容によっては外注も検討
- スタッフの勤務時間の見直し
在庫確認、余剰在庫の処分
まず、棚卸を実施するなどして在庫を確認し、余剰在庫を処分しましょう。
具体的な方法
- 商品管理を徹底し、死に筋(売れない製品・商品)の基準を作り、短期サイクルで排除する
- 長期滞留不良在庫は年度末に損失計上して処分する
人件費の削減
人件費も企業にとって大きな支出となりますが、必要以上に削ってしまうと経営に悪影響を及ぼす可能性があるため、慎重に見極めましょう。業務内容によっては自社でスタッフを雇うのではなく、外部への業務委託なども検討すると良いでしょう。
スタッフの勤務時間の見直しを行うと、場合によっては反発が起きることもあります。また、棚卸などで負担がかかるケースもあるため、闇雲に支出を減らすための取り組みをするのではなく、スタッフとのコミュニケーションを図りながら相談する形をとるのもおすすめです。
具体的な方法
- グループウェアなどの業務効率化を図るシステムを導入し、スタッフの残業時間・人数を減らす
- データ管理を自社でするのではなくクラウド化(外部)へ任せる
決算書の情報で改善する方法
資金繰りを改善するために、経営者として理解・把握しておきたいのが「決算書」です。
決算書は、会社が現在どのような財務状況なのかを示すもので、「貸借対照表」や「損益計算書」、「キャッシュフロー計算書」などがこれにあたります。
- 貸借対照表(B/S)とは、
決算時点における会社にある資産や負債、純資産の状態を表す書類。 - 損益計算書(P/L)とは、
会計年度期間内で、会社の活動よって得られた収支を表す書類。 - キャッシュフロー計算書(CFS)とは、
会計期間内の現金の流れを数字で示したもので、どこから収入があり、どこへ出ていくのかをあらわす書類。
固定費の見直しではわからない部分をあぶり出せるのが、決算書です。どの書類の、どの項目が経営に影響を与えているのかを把握しましょう。
貸借対照表の見直し方
短期的な経営の安全性を確かめるために「流動比率」を用います。
100%を下回ると固定資産が使われていたり、社債などの固定負債が使われていたりする可能性があるため、経営の安全性が危うい状態です。逆に、100%を上回っていると安全性が高く、問題が少ないと言えるでしょう。
損益計算書の見直し方
売上高が低い場合は売掛債権回収を早める、売上原価が高い場合は仕入や材料を見直す、営業外収益として補助金・助成金の活用を検討する、販売費や一般管理費が高い場合は投資を見直したり支払いのタイミングを遅くしたりするなど、それぞれの項目で見直しをしましょう。
キャッシュフロー計算書の見直し方
営業活動によるキャッシュフロー確認のために、キャッシュが増加しているかを確認します。減少している場合は、営業活動の方法を見直す必要があります。
たとえキャッシュが増加していても、売掛債権の回収が遅い、不良在庫を抱えている場合などは、結果的にキャッシュが目減りしている状態です。営業活動の見直しを行いましょう。
融資で資金繰りを改善
融資を受けると、当面の資金繰りは解決できます。
デメリットとして、その後は継続的に返済する必要があり、場合によっては担保や保証人が必要になったり、借りられないケースも考えられます。また、実際にお金が入金されるまでに時間が必要です。
借入金を交渉で改善する方法
資金繰りの悪化によって借入金の返済が滞りそうな場合、借入金の金利や返済方法を交渉してみましょう。
たとえば、月あたりの支払額を下げるために返済期間を長くしたり、金利を見直してもらったりするなどの方法があります。
ただし、この方法には経営改善計画が必要です。お金を貸している金融機関も、無計画なままこうした提案には納得してもらえません。具体的な計画を立てるためにも、資金繰り表を作成しましょう。
資金繰り表で改善する方法
資金の流れを把握するためにも、「資金繰り表」を作成しましょう。
資金繰り表とは、お金の流れをまとめた表のことで、資金がショートしてしまう前に現状をすばやく把握しやすくなります。
資金繰り表で何がわかる?
資金繰り表があると資金の流れがわかり、借入のタイミングを把握できたり、黒字倒産を防いだりするメリットがあります。また、上述の「借入金の金利や返済方法を交渉する」でもご紹介しましたが、金融機関への相談にも利用できるため、ぜひ作成しておきましょう。
関連記事:資金繰り表の作り方・見方を簡単解説!Excelテンプレート付き
資金繰り表の作り方
資金繰り表の具体的な作り方については、こちらを参考にしてみてください。
普段利用しているExcelですぐに作成できるため、ぜひチャレンジしてみましょう。
関連記事:「資金繰り計画書を見る」重要な考え方や自分で作る方法を解説
また、Excel以外にも会計ソフトを利用して資金繰り表を作成できます。おすすめの会計ソフトをご紹介しているので、こちらも参考にしてみてください。
関連記事:資金繰り表の作成・管理おすすめソフト6選!無料から有料まで便利機能を解説
売掛の回収で資金繰り改善
借入や支出の見直しに比べ、よりリスクが低く現金が早く手に入るのが「売掛債権(売掛金)の回収」です。
黒字倒産の大きな要因でもある支払いサイトの長い売掛金は、支払期限・サイクルについて交渉したり、債権として売却するファクタリングを利用したりして早期に資金化することで資金繰りの改善に繋がります。
売掛金は資産のため、ファクタリングは借入と違って返済する必要がありません。利用時の手数料はかかるものの、厳しい審査もなく、売掛金をより流動的に使える現金資産に変えることで黒字倒産を防ぎ、資金繰りの健全化につながります。
ファクタリングで資金繰りが改善する仕組み
ここからは、資金繰り改善方法のひとつ、ファクタリングについて詳しくご紹介します。
ファクタリングは、すぐには使えない債権という資産を売却して「現金・預金」にする取引で、資金繰り改善を目的として利用されることがほとんどです。
手数料がかかりますが、数ヶ月先の支払いを今日受け取ることが可能です。
ファクタリングには、次のようなメリット・デメリットがあります。
ファクタリングのメリット
- 売掛金の未回収が早期に解決
- 現金化によりキャッシュフロー改善
- 今後の立て直しに早く取り掛かることが可能
- 取引先の倒産リスクに備えられる
低金利で利用できる金融機関の借入や、スピーディーに入金されやすいビジネスローンなどさまざまな方法がある中で、ファクタリングは条件を満たせば審査に通りやすく、入金までのスピードも速いのが特徴です。
ファクタリングのデメリット
- 手数料がかかる
- 契約によって、取引先にファクタリング利用が知られるケースもある
ファクタリングは、他の資金調達方法に比べて手数料は割高なものの、資金繰りが苦しい場合はメリットが上回ります。また、取引先にファクタリングの利用を知られたくない場合には、ファクタリング業者と自社の間でやり取りをする「二社間ファクタリング」を利用すると良いでしょう。
資金繰りが悪化している中で重要なのは、できるだけ早く立て直しを始めることです。ファクタリングは借入ではないため返済義務もなく、売掛金の早期現金化により資金繰りを改善できる方法です。
関連記事:ファクタリングとは
関連記事:ファクタリングのメリット・デメリット
資金繰りに重要なFCFとは?
資金繰りで重要なのが「フリーキャッシュフロー(FCF)」です。
FCF(フリーキャッシュフロー)とは?
事業で得た収入(キャッシュ)のうち、自由(フリー)に使えるお金を示したもので、純現金収支とも言います。
商品販売やサービス利用などで生まれた収入(利益)から、設備投資や買収などの投資にかかった金額を差し引き、手元に残った余剰資金がフリーキャッシュフローです。
FCF(フリーキャッシュフロー)の計算式
FCF(フリーキャッシュフロー)の計算式は以下です。
ただし、実はキャッシュフロー計算書では、現事業維持のための設備投資等の金額まではわかりません。
投資活動によるキャッシュフローには、他の投資額も一緒に入っているからです。
したがって、以下のように計算することもできます。
FCF(フリーキャッシュフロー)の使い道
フリーキャッシュフローには決まった使い道がありません。
言い換えると、そのまま資産として残しておくほか、新しいシステムを導入する費用に使ったり、備品を新調したりもできます。
他方、フリーキャッシュフローとして自由になるお金は、株主への分配や新規事業などへの投資資金、借入金の圧縮などの目的に使われることになり、会社の今後を大きく左右する可能性があると言えるでしょう。
FCFの使い道とそのメリット
まず、フリーキャッシュフローが大きくなればなるほど、手元に現金(キャッシュ)があるということになり、売掛債権の回収が遅くなったり、一時的に売り上げが下がったりしても余裕のある経営ができます。
フリーキャッシュフローが多ければ多いほど、会社をより大きくしたり、株主など周りの人へ還元したりするなど選択肢が増えます。
余剰資金があると、具体的にどのようなことができるか見てみましょう。
投資
→資金流入が大きくなる可能性
従業員、顧客の満足度アップや、さらなる収益アップにつながる可能性がある
還元
→配当を増やし、株主への還元に充てると企業価値の向上につながる
企業として今後期待されたり、成長につながったりする可能性がある
返済
→今後の借入金返済額が減り、借入をしている銀行との信頼関係構築につながる
負債が減り、経営がスムーズになりやすい
このように、フリーキャッシュフローは会社を安定させたり、成長させたりする使い方があります。
会社の利益につながることへお金を使うか、より負債を減らして健全な経営状態にしていくか、会社を支えている株主へ還元するか、会社にとってより大きなメリットを得られる使い方を検討しましょう。
資金繰り改善方法はスピード勝負
資金繰りはひとたび悪化すると、立て直しが難しくなってしまいます。具体的な計画を早く立てるほど、資金繰り改善のチャンスがあると考えておきましょう。
資金繰り表の作成とともに、借入をはじめとする資金不足解消の方法を検討しましょう。資金調達方法はスピード、難易度、利用後のリスクを考慮すると、どの点においても借入よりもファクタリングに軍配が上がります。
資金調達や資金繰りに関するお悩みは、ファクタリングを提供するベストファクターへぜひご相談ください。