資金繰り管理の重要性や、資金繰り管理によって得られるメリットを解説します。
こんにちは、ベストファクターの四ツ柳と申します。
経営者の方のほとんどは、会社の資金繰りの悩みから解放され、本業でしっかりと利益を上げたいと考えているでしょう。
資金繰りはそれ自体が利益を生む業ではないものの、会社経営を続けていく上では避けては通れない課題です。
なぜ会社経営に資金繰り管理が重要なのか、資金繰り管理ができていないと会社はどうなるのか?
今回は資金繰り管理の重要性としっかりと管理を行うことのメリットについて解説します。
資金繰り管理ができていない会社の特徴
「自社は資金繰りがしっかりと管理できている」と胸を張って言えますか?
慢性的な赤字や資金ショートといった問題が表面化していない場合でも、以下のような特徴に該当する会社は「資金繰りが管理できていない」と言わざるを得ません。
経営者自身が資金繰りを把握していない
資金繰り管理を顧問税理士や財務担当者に丸投げして、経営者自身が自社の状況を把握していない会社は非常に多いです。
「顧問税理士から送られてくる月次試算表を毎月確認している」という経営者もいますが、その確認時期が早くて1ヶ月後、遅い場合には2~3ヶ月後という会社も少なくありません。これでは、いつまでにいくら資金が不足するかが見えず、月次試算表が完成する頃には資金ショート一歩手前で、慌てて金策に走る羽目になってしまいます。
また、月次試算表だけを作成しても、実際の会社の資金繰りは把握できません。
資金ショートになる前に具体的な対策が打てるようになるためには、経理体制を顧問税理士に丸投げするのではなく、経営者自身が自社の財務状況を資金繰り表などで「見える化」したうえで、タイムリーに把握できるようにしておく必要があります。
取引先の与信管理が不十分
売上が好調でも資金繰りに悩む会社の特徴のひとつに、取引先の与信管理が不十分というものがあります。
取引先の情報を収集・分析することにより、取引先の信用力やその動向を予測・分析しながら、取引額を調整し、損失を抑えながら販売代金を回収できるよう管理すること、すなわち「与信管理 」が必要となるのです。
たとえば、新規のクライアントから受注する場合には、よほど支払条件が良く、社会的信用力の高い企業相手でもないかぎり、いきなり大量に受注することは、売掛債権の未回収リスクにつながります。
大きな売上が見込めるからと言って、与信管理も不十分に取引を始めてしまうと、連鎖倒産や黒字倒産といった取り返しのつかないことになりかねません。少しずつ取引実績を積み重ね、支払いが確実に行われることを確認しつつ、徐々に売上を増やしていくようにしましょう。
支払いサイトの長い取引先が多い
約束手形や売掛債権など、支払いサイト(入金サイト)が長い取引先が多いと、入金を待つ期間に資金繰りが悪化する可能性が高くなります。
資金繰りは「キャッシュインはなるべく早く、キャッシュアウトはなるべく遅く」が鉄則です。売上が手元に入って来るまでの時間が長いほど、自社の資金繰りは苦しくなります。
特に、仕入れ費用の支払いが早い場合には、先にお金を払って取引先に商品やサービスを提供、後で支払われる売上金を待つという期間が長くなるため、支払いサイトには十分に気をつけましょう。
取引先と支払い条件の交渉をしていない
新規のクライアントと取引を開始したり、新たな仕入れ先を開拓したりした場合に、支払い条件の交渉をしていますか?
「大きな売上が見込める」「安く仕入れられる」という取引でも、自社にとって「キャッシュインが遅く、キャッシュアウトが早い」となる条件だと、いずれ資金繰りが悪化してしまいます。
相手先の条件を鵜呑みにするのではなく、自社の資金繰りを悪化させないよう交渉を試みましょう。
交渉の結果、希望の条件のとおりにならないケースもありますが、ダメ元でも自社に有利な条件交渉をする心構えは必要です。特に、売上が急激に増加するような大きい取引となる場合には、自社の資金繰りを悪化させる要因となる場合もあるので、細心の注意を払いましょう。
資金繰り管理の重要性
資金繰りを管理することは事業で利益を上げ続けることと同様に、会社にとって重要な課題のひとつです。
利益が出ているはずなのに、手元に資金が残っておらず、常に資金調達に奔走してるのであれば、資金繰り管理が不十分と言わざるを得ません。
ここでは、なぜ会社にとって資金繰り管理が重要なのか、いくつかのポイントをご紹介します。
倒産を未然に防ぐ
資金繰りを管理して、将来の資金不足を予測する最大の目的は、倒産を未然に防いで会社を存続させることです。
「黒字倒産」とは、文字通り決算書上では黒字になっているのに、手元に資金が入ってこないために支払いが滞り、やがて倒産することを指します。
決算書では売上や利益の増減を見ることはできても、先の資金不足までは予測できません。資金不足による倒産を防止するためには、資金繰り表を作成して将来の支払いを把握することが重要です。
資金繰り表を作成して自社の資金の流れを「見える化」すれば、将来的に資金不足が起きる状況を事前に察知して、早めの対応ができるようになります。
本業にリソースを集中できる
資金繰りの管理に追われ、金策走る時間が多くなれば、経営者の本来の目的は達成できません。
経営者が資金繰りに割くリソース(お金や時間)を減らすためには、資金繰り管理をシステムに落とし込み、管理レベルを向上させることが重要です。
たとえば、一からExcelなどの表計算ソフトを使って資金繰り表を作るよりも、すでに多くの企業が導入している資金繰り管理ソフトや資金繰り表のテンプレートを利用することで、すぐにでも資金繰りの「見える化」ができます。
資金繰り管理のレベルが向上して、事前に対策が打てるようになれば、資金不足になって慌てて金策に走る必要もありません。
また、新しい商品・サービスの開発や事業拡大のために自由に使えるお金があることは、会社にとって事業を大きくするうえでの強みとなります。
すべての経営者が資金繰りのエキスパートではなく、できれば会社経営に集中したいものです。資金繰り管理のレベルを向上させ、お金を心配する必要がなく、本業にリソースを集中できる環境を作り上げましょう。
会社の信頼性が高まる
銀行から運転資金や設備資金の融資を受けるためには、資金繰りの管理がしっかりとできていることが大前提です。
いくらの融資が必要なのか、返済原資はどのようにして捻出するのか、経営改善までの道筋は……など、資金繰りの管理ができていなければ、銀行の融資担当者が融資の可否を判断するための資料作りができません。
裏を返せば、資金繰り管理がしっかりとできていて、銀行を説得できるだけの資料を提出できる会社は信頼性が高まります。
銀行融資はもちろん、取引先も安心して取引に応じてくれるでしょう。資金繰り管理がルーズで、ちゃんと支払ってくれるかどうか不安な会社とは、誰しも取引をしたいと思わないものです。
普段から信頼を得られるような付き合い方ができていれば、いざというときに融資を受けられたり、取引の交渉に譲歩してもらったりして、自社を助けてもらうこともできるのです。
「資金繰り表」でしっかり管理するためには
ここまでに何度も触れているように、会社の資金繰りをしっかりと改善するには「資金繰り表」を作成して、会社の資金の流れを把握することが最重要です。
資金繰り表を作成して数ヶ月先の資金繰りの状況を予測、いつ資金が不足するかが「見える化」できていれば、早期に対策を打つことができます。
また、銀行から融資を受ける際に提出を求められる資金繰り表は、キャッシュフローの実績や売上予測・返済原資の根拠を示すための「重要書類」です。
自社の資金繰りをしっかりと管理するため、いざというときに銀行からお金を借りられるようにするため、資金繰り表は経営者自身が作成・管理することをおすすめします。
資金繰り管理に関するQ&A
資金繰り管理に関して、よくある質問とその回答をQ&Aにまとめました。
- Q.いつ会社が資金不足になるか、資金繰り表でどのようにして予測することができますか?
- A.自社のキャッシュイン(入金)とキャッシュアウト(出金)のタイミングを把握することが大切です。ほとんどの商取引では、商品やサービスを納入した後、売上代金の回収は1~2ヶ月後となります。売上の入金前に仕入れや経費の支払いが発生すれば、資金ショートになるおそれがあるため、資金調達や売上金の早期回収などで対策を講じる必要があります。
- Q.いわゆる「資金繰りが上手くいっている状態」とは、どのような状態のことですか?
- A.一般的に、「赤字でないことを前提として、月商の3ヶ月分の現預金があれば、資金繰りが安定している」と言われています。
- Q.2ヶ月後に資金不足になる予測が出ているのですが、すでに銀行から借り入れがあり、資金調達のあてがありません……
- A.借入以外の方法であれば、不要な資産を売却したり、回収前の売掛債権を売買する「ファクタリング」を利用したりして、早期の資金調達が可能です。売却できる資産がない場合は、他社借入があっても利用しやすいノンバンクのビジネスローン、事業者ローンを検討しましょう。
- Q.融資の審査で有利になる資金繰り表のコツはありますか?
- A.銀行が資金繰り表で「実績値」と「予測値」を確認します。実績値は正確な数字を入力するということを前提として、より重要なのは予測値のほうです。銀行は、借主がしっかりと返済できるか、借入によって経営改善ができるかを重要視します。資金繰り表で、融資を受けたことによる借入金返済額の増加分よりも、月商の増加額が上回るという予測を立てることが、融資の審査に通過するための絶対必要条件となります。
「攻めの経営」のためにも資金繰りの管理を
資金繰り管理の目的として、倒産を未然に防止することを挙げましたが、そのような「守りの経営」だけでなく、会社の成長を実現するために手元の現預金を増やす「攻めの経営」をするためにも、資金繰りの管理は非常に重要です。
資金繰りに無関心、どんぶり勘定で経営を回している会社に、社会的信頼性があり、将来性が見込める会社はひとつもありません。
会社の規模にかかわらず、経営者自身が資金繰りを管理・把握するためにも、まずは資金繰り表の作成から始めてみませんか?