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将来債権ファクタリングは複数月にまたいで売掛債権を買い取る新しいサービスです。
従来のファクタリングサービスと比較したメリットや活用方法をご紹介します。
こんにちは、ベストファクターの四ツ柳と申します。
2020年4月1日に施行される民法の一部を改正する法律(改正民法)では、将来債権の譲渡が明文化されます。
これにより、さまざまな金融機関が将来債権を活用したサービスを提供することが予想され、ファクタリングも例外ではありません。
現在も少数ながら将来債権を活用したファクタリングサービスを提供している業者はありますが、今後はより活発化することが予想されます。
今回は将来債権の基本的な知識の解説、また将来債権を活用したファクタリングで債権譲渡による資金調達方法がどのように変わっていくのかを考えていきたいと思います。
記事の目次
将来債権とは
将来債権とは、文字通り将来的に発生が見込まれる債権のことを指しています。
商品やサービスを取引先に納品する場合、前払いや現金払いとなることは稀で、代金の支払いは翌月、翌々月となることが一般的です。この代金の支払いを受けることができる権利を「債権(売掛債権、売上債権)」と言います。
つまり、取引先との長期にわたる取引履歴があり、今後も毎月発生すると見込まれる債権が将来債権なのです。
民法における将来債権の譲渡
将来債権を譲渡することの可否について、現行の民法では明文化されていません。
もっとも、実務上では将来発生することが見込まれる債権を担保とした融資を目的として、将来債権の譲渡等は行われていました。
2020年4月1日に施行される改正民法では、将来債権の譲渡(担保設定)が可能であることが明文化されることとなります。
第466条の6
1.債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない。
2.債権が譲渡された場合において、その意思表示の時に債権が現に発生していないときは、譲受人は、発生した債権を当然に取得する。
ファクタリング業者の中にも、徐々に将来債権を活用した資金調達や資金繰り改善の提案が浸透しつつあります。
改正民法に明文化されたことにより、今後は将来債権を活用したサービスが次々に登場してくることが考えられます。
将来債権ファクタリング
将来発生が見込まれる債権を買取対象とする「将来債権ファクタリング」を取り扱うファクタリグ業者が登場しています。
将来債権ファクタリングでは、現在発生している売掛債権に加え、将来発生することが見込まれる売掛債権も買取対象となります。
たとえば、向こう3ヶ月にわたって毎月300万円の売掛債権の発生が見込まれる場合、1ヶ月後の発生済み債権から100万円、2ヶ月後の将来債権から100万円、3ヶ月後の将来債権からも100万円を買い取ることができます。
ただし、買取上限額は既に発生している売掛金の額となるため、上記の例では発生済み債権の300万円が買取上限額となります。
将来債権ファクタリングは売掛金の分割支払が可能
将来債権ファクタリングの最大のメリットは、ファクタリング業者に支払う売掛金を分割できることです。
ファクタリング業者が1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後の売掛債権からそれぞれ100万円ずつ、合計300万円の売掛債権を買い取った場合、売掛金の支払いは、債権が履行されたタイミングとなります。
つまり、300万円を毎月100万円ずつ3回払いするということになるため、ファクタリング利用会社の支払いの負担が軽減されます。
将来債権ファクタリングの必要書類
将来債権ファクタリングを利用するためには、ファクタリング利用会社(利用者)が数年単位で売掛先と継続した取引を行っていて、なおかつ今後も債権が滞りなく履行されるということを証明しなければなりません。
「今後も債権が滞りなく履行されることの証明」として、次の書類をファクタリング業者に提出します。
- 本人確認書類
- 請求書
- 銀行通帳など取引入金の履歴が確認ができる書類
- 決算書、損益計算書等
過去にファクタリングを利用されたことのある方であればお気づきかもしれませんが、基本的に将来ファクタリングも通常のファクタリングと必要書類は同じです。
将来債権ファクタリングを利用するには比較的厳しい要件を満たす必要はありますが、通常のファクタリングよりも有利な条件で利用できることは間違いありません。
通常のファクタリングとの比較
将来債権ファクタリングと通常のファクタリングのサービスの違いを、翌月末に入金される予定の売掛債権300万円を売買するケースで比較してみましょう。
通常のファクタリングは、翌月以降に支払いが予定されている債権の前倒しですので、既に発生している売掛債権が買取対象となります。
たとえ売掛先と長年にわたって良好な取引を継続していて、将来的に債権が発生することが見込まれても、未発生の債権を現金化することはできません。
売掛債権を売却して資金を調達後、売掛先から期日通りに売掛金が入金されたら、ファクタリング会社に300万円を一括で支払います。
一方、将来債権ファクタリングは、現在発生している売掛債権に加え、将来的に発生することが見込まれる売掛債権も買取対象となるため、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後の売掛債権からそれぞれ100万円ずつ買い取るということもできます。
将来債権から買い取った分の支払いは、債権が履行されたタイミングとなります。
つまり、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後とファクタリング会社への売掛金の支払いが100万円ずつ分割される形となるため、通常のファクタリングの一括支払いと比べ、キャッシュフローへの負担が軽くなるのです。
将来債権ファクタリングで1回の支払いの負担が軽くなることで、よりキャッシュフローの改善に向けた事業運営が可能となります。
将来債権ファクタリングの活用方法
将来債権ファクタリングの活用方法をご紹介します。
ファクタリングに依存するリスクを軽減する
通所のファクタリングは、一度利用すると依存してしまって抜け出せなというリスクがあります。
なぜなら、月次の営業にかかる費用をまかうために再度ファクタリングが必要になり、常態化してしまうからです。
ファクタリングで売掛債権を売却すれば、最短即日~3日程度でまとまったキャッシュが調達できるものの、実際に調達できる資金は売却した売掛債権の満額より少なくなります。
たとえば、期日通りに売掛金の支払いを待てば満額300万円の入金があるところ、ファクタリングの手数料が10%であれば、調達できるキャッシュは270万円とるわけですから、通常よりも30万円少ないキャッシュで事業を回していかなければなりません。
ファクタリングの利用から売掛金の支払いまでの1ヶ月間に何かしら資金繰りの対策を打っておかないと、翌月以降もキャッシュ不足でファクタリングに依存してしまうリスクがあります。
将来債権ファクタリングであれば、ファクタリング業者への売掛金の支払いを分割できるため、ファクタリング依存のリスクを軽減することができます。
ただし、あくまでもリスクの軽減ですので、将来を見据えた資金繰りの改善は行っていく必要があります。
根本から経営・財務を改善する
将来債権ファクタリングで売掛金の支払い負担が軽減できるということは、その場しのぎの一時的なキャッシュ不足の解消ではなく、根本から経営・財務を改善することが可能になったとも言えます。
従来のファクタリングでは1回の支払いの負担が大きいため、ファクタリングに依存しやすい体質を作ってしまうというリスクがありました。
将来債権ファクタリングなら1回の支払いの負担を減らし、長いスパンで資金繰りや財務体質の改善に取り組むことができます。
将来債権ファクタリングを利用した事例
運送業A社:車両購入費の600万円を将来債権ファクタリングで調達
数十年の付き合いがある主要取引先からこれまでの取引実績を評価され、東京~青森までの長距離輸送便を依頼されたA社。
これをきっかけにスタッフの増員と大型輸送車を増車していければ、大手企業からの受注も増えて事業拡大のチャンスでしたが、手元の資金だけでは車両購入等に必要な費用の工面が難しい状況でした。
銀行からはすでに利用額いっぱいに借りていたため、ファクタリングの利用を検討することに。
しかし、支払いが確定している売掛債権で600万円の資金を調達することは可能でも、翌月以降に従業員の給与の支払い等が難しくなるなど、資金繰りが悪化する懸念がありました。
そこでA社は付き合いのある税理士に相談、将来債権ファクタリングを取り扱っている業者を紹介されます。
A社には毎月750万円の売掛債権がコンスタントに発生していることが認められ、3ヶ月分の売掛債権から200万円ずつを買い取ってもらい、無事に車両購入費の600万円を調達することができました。
将来債権を取り扱う市場は拡大が見込まれる
将来債権ファクタリングはまだまだ新興のサービスで知名度もあまり高くはありませんが、改正民法が施行される2020年4月を皮切りに、ファクタリング業界の中でもサービスを提供する業者の増加が予想されます。
将来債権の活用によってファクタリング市場が活発化することで、いま以上に手数料等の見直しが行われ、より好条件で低コストな資金調達を可能にする環境が整うでしょう。
一方で、将来債権ファクタリングをうたった悪質なサービスを提供する業者も現れないとは限りません。
以上のことから、今後ますますファクタリングの利用は業者選びが重要となるでしょう。
各会社のホームページや口コミサイト等による情報収集、実際にコンタクトを取って見積もり依頼をするなど、より慎重に自社の資金調達目的に合ったファクタリング会社を選ぶことが大切です。