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会社や事業の資金繰りが悪化して資金ショートを起こすと、会社は倒産します。経営者は資金繰りが悪化したときに、何をするべきでしょうか。
今回の記事では、資金繰りに困ったときに経営者がやるべき対策について具体的に解説していきます。
資金繰り対策に早すぎるということはありません。日頃から資金繰りの状況を把握して、資金繰り悪化の兆しを掴んでおけば、遅きに失して倒産の憂き目に遭うこともないでしょう。
本記事を参考にして、早め早めの対策をとっていただければ幸いです。
記事の目次
1. 資金繰りの現状を把握する
資金繰りが悪化して倒産にまで至ってしまう会社にありがちなのは、経営者自身が自社の資金繰りを正しく把握していなかったというケースです。
日頃から会社の資産や現金、負債がどれくらいあるのかを知り、資金繰りが悪化したときはいつまでにいくら資金が必要なのか、経営者自身が資金繰り表を作成・管理することで事前に取り組むべき対策がわかります。
資金繰りの現状を把握したうえで資金調達に動けば、必要な資金を確保して倒産を免れることができます。
注意すべきは、「困ったら銀行から借りれば良い」と高を括ることです。
銀行は自社の資金繰りを把握していない経営者にお金を貸してはくれません。返済原資となる資金がいつ調達できて、どれくらいの資金があれば事業を再建できるか、返済計画書や資金繰り表、事業計画書などで示さなければ、たとえ長い付き合いのある銀行であっても審査に通過することが難しくなります。
まずは経営者が自社の資金繰りの現状を正しく把握し、倒産の危機を回避するための方法を見つけることが経営再建のためのスタートです。
2. 国や自治体の支援制度に申し込む
中小企業や個人事業主が資金繰りの悪化により今後の見通しが立たない場合に、最優先で考えなければならないことが、手元資金を増やすことです。
今般のコロナ禍においては、持続化給付金や雇用調整助成金など、国や自治体の支援制度が注目を集めました。
コロナに限らず、売上の減少により経営が悪化して資金繰りが厳しい場合にも、国や自治体の支援制度を活用できる場合があります。
経営を立て直すだけの十分な金額は得られないかも知れませんが、受給できる給付金や助成金・補助金は確実にもらい、緊急性の高い生計費や従業員の給料などにあてましょう。
ただし、受給までには2週間~1ヶ月ほどの時間がかかります。申請してから実際に資金を受給するまでの間は、別の資金調達手段も考えておく必要があります。
3. 支払いを猶予できるものは先延ばしにする
手元資金を増やすためにできることの一つに、支払いを猶予できるものはできる限り先延ばしにするという手段があります。
中小企業や個人事業主が支払うべきお金の優先順位は以下のとおりです。
- 手形・小切手(必ず支払うべき)
- 人件費
- 仕入・外注費
- 家賃、光熱費等の経費
- 銀行借入
- 社会保険料
- 税金(先延ばしにしても良い)
このうち優先順位の低いものは支払いを猶予してもらうことができたり、わずかなペナルティーで済んだりするため、手元資金を増やすためにも先延ばしを検討しましょう。
まず検討べきは、消費税や法人税などの税金、社会保険料などです。新型コロナウイルス感染症の影響により、期限までに申告・納付ができないやむを得ない理由がある場合には、期限の延長制度があります。
銀行の借入もリスケを交渉することで月々の返済負担を軽減できます。また、家賃の支払いも免除や減額してもらえないか、オーナーに対して積極的に交渉を試みましょう。
4. 入金前の請求書があればファクタリングで資金化する
売上入金までの支払サイトが長い場合や緊急性の高い資金ニーズに対しては、入金前の請求書(売掛債権)を早期に資金化するファクタリングを検討しましょう。
ファクタリングは融資と異なり、申込者の借入状況や信用状況よりも、売掛先(取引先、クライアント等)の信用力が重視されるため、自社がリスケ中や税金滞納中であっても利用できます。
スピードを重視するのであれば、自社とファクタリング会社の2社間で契約する「2社間ファクタリング」がおすすめです。売掛先に知られることなく、申し込みをしたその日のうちに買取代金が振り込まれます。
さらに、ファクタリング会社のなかには自社の経営課題に即した経営支援を提供するところもあり、資金調達と資金繰り改善・事業再生にセットで取り組むことができます。
注意点としては、ファクタリングの利用にあたっては所定の買取手数料がかかることです。2社間ファクタリングの場合は債権の買取額に対して5~20%、売掛先の同意が必要な3社間ファクタリングの場合は債権の買取額面に対して2~9%の手数料がかかります。
入金までのスピードを重視するか、調達コストの低さを重視するか、自社の資金繰りの状況を見て判断しましょう。
5. 公的金融機関の融資を受ける
日本政策金融公庫や信用保証協会の融資制度は、中小企業や個人事業主のセーフティーネットとしての機能があり、低金利で長期・固定で借り入れができるため、資金繰り改善に積極的に活用しましょう。
民間の金融機関の場合、業績悪化を来たしてる事業者が審査に通過することは難しいですが、公的融資なら融資が受けられる可能性があります。
たとえば、日本政策金融公庫の中小企業・小規模事業者向け「セーフティネット貸付」は以下のような事業者の支援を目的としています。
経営環境変化対応資金 | 社会的、経済的環境の変化により、売上や利益が減少する等、業況が悪化しているが、中長期的にはその業況が回復し発展することが見込まれる方 |
金融環境変化対応資金 |
|
取引企業倒産対応資金 | 関連企業の倒産に伴い経営に困難を来たしている方 |
東日本大震災復興特別貸付 | 東日本大震災により被害を受けた方 |
参考:https://www.jfc.go.jp/n/finance/shikingri.html
信用保証協会の融資制度にも、借換保証制度やセーフティネット保証など、中小企業や小規模事業者の支援を目的としたものがあります。
ただし、公的金融機関の融資は申込みから融資実行までの期間が長いため、新規で申し込む場合は3週間~1ヶ月は見ておきたいものです。
「今月末の支払いができない」「従業員の給料日前に資金が不足する」といった緊急性の高い資金ニーズについては、ファクタリングなど別の資金調達手段を検討しましょう。
6. 短期ビジネスローンを利用する
「ビジネスローンは金利が高いから利用は避けたい」という経営者の方は少なくありません。
メガバンクのビジネスローンを除き、ネット銀行やノンバンクの無担保・無保証人のビジネスローンは、年15~18%の金利が設定されています。公的金融機関が年2~3%の金利を設定していることを考えれば、非常に高いと感じるでしょう。
しかしながら、「資金不足で今月末の従業員の給料も支払えない」といった逼迫した状況では、低金利であっも融資実行までに1ヶ月を要する銀行や公的金融機関の融資を悠長に待っている猶予はありません。
ビジネスローンはどうしても金利の高さに目が行きがちですが、短期で返済できる目処が立っていれば、非常に有効な資金調達手段です。
たとえば、ビジネスローンで50万円を年利18%で借り入れたとして、1年で返済した場合と1ヶ月で返済した場合とで返済額をシミュレーションしてみましょう。
返済総額 550,074円(うち利息50,074円)
毎月の返済額45,839円(最終回45,845円)
50万円 × 18% ÷ 365日 × 30日 = 507,397円(うち利息7,397円)
年18%の金利も、1ヶ月で返済すれば実質的に年1.5%の金利で借りたことと同じです。また、初回契約に限り30日間の無利息期間を設定しているノンバンクもあります。
「来月頭に売上の入金があるから、今月末の支払いを乗り越えれば……」といった経営状況であれば、短期ビジネスローンほど借りやすさとスピードに優れた資金調達手段はありません。
無借金経営を貫いている事業者の方や、追加融資が難しい事業者の方も、経営危機という状況においては感情論に左右されず、ビジネスローンの活用をおすすめします。
資金繰りに困った時のQ&A
資金繰りに困っている経営者がとるべき対策について、よくある質問とその回答をQ&Aにまとめました。
- Q.資金繰りに困ったときはどこに相談すれば良いですか?
- A.まずは商工会議所・商工会に相談しましょう。そこでは、具体的にどのような融資や補助金があるか、制度の仕組みと申請の手順などのアドバイスが受けられます。資金繰りや融資に関しては、日本政策金融公庫の各支店、商工中金、信用保証協会も相談窓口を開設しています。
- Q.取引銀行から資金繰り改善のための融資は受けられますか?
- A.銀行融資には銀行が100%保証する「プロパー融資」と、信用保証協会の保証を付ける「信用保証付き融資」があります。資金繰り改善を目的とした借入は後者を利用しましょう。たとえば、複数の金融機関からの借入があり、毎月の返済負担が大きい場合には、信用保証協会の「借換保証」で毎月の返済額を少なくすることができます。また、借り換えと同時に新たな資金を上乗せして融資を受けることも可能です。
>>「公的金融機関からの借入」について詳しく見る
- Q.売掛金の回収が上手く行かず資金繰りが回らないのですが、対策はありますか?
- A.回収前の売掛金を早期に資金化するファクタリングを利用しましょう。ファクタリングを利用すれば早期の資金調達はもちろん、売掛金の回収遅延や回収不能のリスクを回避することもできます。また、3社間ファクタリングであれば売掛金の管理・回収をファクタリング会社に任せられます。
>>「資金繰り対策としてのファクタリング」について詳しく見る
経営再建のためにやるべきことを実施する
資金繰りに困ったときに経営者がとるべき対策、経営再建のためにやるべきことを解説しました。
経営者は会社や事業、従業員、その家族を守るため、資金繰りが悪化した原因を把握し、経営再建に向けてできることを考え、そのために必要なことを実施する義務があります。
資金繰り悪化で資金不足が明らかとなっているのであれば、手元資金を残すことを最優先に考え、融資やファクタリング、支払いの先延ばしなどあらゆる対策をとりましょう。
また、経営再建のために外部から協力を得ることも一つの手段です。
ベストファクターはファクタリングによる早期の資金調達サポートのほか、資金繰り改善・経営再建を目的とした財務コンサルティングサービスもご提案いたします。弊社の経営支援により、経営者さまは本来の仕事に集中することができます。
資金繰りに困ったときは、ぜひベストファクターにご相談ください。