会社経営者は本業の利益を追求することも大事ですが、一方で、日頃から自社の資金繰りについても把握しておく必要があります。
今般の新型コロナウイルス感染症の影響で売上が激減したときはもちろん、逆に売上が急増したときも、会社の資金繰りが悪化すれば、手元の資金(キャッシュ)がゼロになってしまう「資金ショートを引き起こし、最悪の場合は倒産に陥ってしまいます。
資金ショートは、日々の資金繰りをしっかりと把握していれば、未然に防ぐことができます。その資金繰りを「見える化」したものが資金繰り表です。
本記事でご紹介する資金繰り表作成・管理ソフトを利用すれば、簡単に資金繰り表を作れるだけでなく、資金繰りシミュレーションで会社の将来の資金繰り状況を正確に把握することもできます。
資金繰り表とは
会社の収入や支出(お金の流れ)をあらわす表のことを「資金繰り表」と言います。
資金繰りを作成・管理できるようになると、会社の財務状況を把握したり、資金不足の原因を究明したりすることが可能になります。
資金繰り表を作る目的
資金繰り表は、主に以下の3つの目的で作られます。
- 未来の資金ショートを予測するため
- 過去の実績と予測を照合するため
- 融資や銀行リスケの説明資料とするため
それぞれの目的について詳しく見ていきましょう。
未来の資金ショートを予測するため
資金繰り表を作って未来のお金の流れを把握することで、将来起こりうる資金ショートの可能性を予測することができます。
企業間取引では、売上の発生と売上の入金にタイムラグがあります。とくに売上が右肩上がりに成長しているときほど、お金の流れを把握しておくことが重要です。
売上が伸びている状況では売上の入金を待つ間にも、次の取引の着手金や準備金が必要となるため、どうしても資金ショートに陥りやすくなります。
お金の流れを把握していないと、決算書上では黒字が出ているのに、手元の資金が足りなくなってて倒産に陥ってしまうこともあります(「黒字倒産」といいます)。
一方、資金繰り表で将来の資金ショートが予測できれば、ファクタリングで売掛債権を早期に資金化したり、支払いを先伸ばしにしたりなどの対応が可能です。
したがって、資金繰り表を作成して、現在のお金の流れから将来の入金と出金を予測する必要があるのです。
過去の実績と予測を照合するため
資金繰り表には、過去の資金繰りの実績を表す「資金繰り実績表」と、将来の資金繰りの見込みを表す「資金繰り予定表」の2つがあります。
資金繰り予定表が資金繰り予定表のとおりであった場合には、会社として予定通りに経営ができていることになり、また両者にズレがある場合は理由を分析したりして、今後の資金予測の正確性を高めることができます。
2つの資金繰り表の正確性は、すなわち経営者が会社の資金の流れを正確に把握しているということなのです。
融資やリスケの説明資料とするため
資金繰り表は金融機関から融資を受けるときや、リスケの交渉のときに提出を求められることがあります。
金融機関の担当者が、以下の情報を資金繰り表で確認するためです。
- 借入金の使いみち
- 返済原資と返済計画
- 他に融資を受ける予定があるか
- 他の借入の返済状況
しっかりとした資金繰り表を作成しておけば、融資やリスケの交渉を有利にすすめることができます。また、経営者が自社の資金繰りを把握しているかどうかも重要です。
現在は無借金経営でも、将来的に融資を受ける可能性がある場合には、資金繰り表を作成・管理しておきましょう。
おすすめの資金繰り表作成・管理ソフト7選
資金繰り表はエクセルで作ることもできますが、ソフトを使えばより簡単で、わかりやすい表を作ることができます。ここでは、資金繰り表の作成・管理が簡単にできるおすすめのソフトをご紹介します。
簿記に不安のある方でも安心の「弥生会計 21」
料金プラン(年間) | 【スタンダード】27,200円~(税抜) 【プロフェッショナル】36,100円~(税抜) 【プロフェッショナル(2ユーザー)】55,600円~(税抜) |
こんな方におすすめ |
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公式サイトURL | https://www.yayoi-kk.co.jp/products/account/price.html |
「弥生会計 21」は、初心者からプロフェッショナルまで、記帳作業の効率化や決算書作成、資金繰り管理ができる会計ソフトです。
スタンダード、プロフェッショナル、ネットワークの3つのグレードがあり、資金残高の推移を資金繰りシミュレーターで管理する「未来資金管理」の機能は、すべてのグレードで利用できます。
未来資金管理機能では、売掛金の回収や買掛金の支払などの定期的な入出金予定を登録することで、入力日付から60日後までの資金残高の推移をシミュレーションします。これにより、将来予測される資金不足に余裕を持って対応することができます。
ただし、資金繰り表の作成機能はプロフェッショナル以上のグレードでなければ使用できません。プロフェッショナルは初年度無償ですが、2年め移行は選択した料金プランによって年間36,100円~の維持費がかかります。
格安プランでも資金繰り表が作成できる「クラウド会計freee」
料金プラン(年間) | 【ミニマム】23,760円~(税抜) 【ベーシック】47,760円~(税抜) 【プロフェッショナル】477,600円~(税抜) |
こんな方におすすめ |
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公式サイトURL | https://www.freee.co.jp/houjin/ |
「クラウド会計freee」は、事業所のパソコンだけでなく、自宅のパソコンやスマホなど、いつでもどこでもアクセスできます。
ネットバンキングやクレジットカードの情報を登録すれば、明細を自動取得して経理を自動化してくれるため、入力作業はほぼ必要ありません。
資金繰り表作成機能は、もっともリーズナブルなミニマムプランにも搭載されており、入力作業ゼロで資金繰り表が作成されます。また、売掛金の入金や買掛金の支払、納税、借入金返済など、今後の入手金予定を入力することで、将来の資金繰り状況のシミュレーションもできます。
個人事業主向けと法人向けがあり、どちらも30日間の無料お試し期間が付いていますので、まずは自社の資金繰り管理に使えるかどうか試してみると良いでしょう。
資金繰りチャートと表が作成できる「Money Forwardクラウド会計」
料金プラン(年間) | 【スモールビジネス】35,760円~(税抜) 【ビジネス】59,760円~(税抜) 【エンタープライズ】要問い合せ |
こんな方におすすめ |
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公式サイトURL | https://biz.moneyforward.com/accounting |
「Money Forwardクラウド会計」は、日々の取引の入力など面倒な作業を自動化して、業務効率を大幅に改善できる会計ソフトです。
銀行、クレジットカード、電子マネー、勤怠管理などさまざまなサービスと連携させることにより、入力や仕訳を自動化します。小規模~中規模法人に対応した「ビジネス」プランが初期費用0円で利用できます。
「Money Forwardクラウド会計」では、仕訳された情報をもとにしてキャッシュフローチャートとキャッシュフロー表が自動作成されます。
キャッシュローチャートは、過去・現在・未来の入出金および現金残高が表示されており、将来のキャッシュフローも入力済みの将来取引をもとに試算します。キャッシュロー表では、月次の営業・投資・財務のキャッシュフローの詳細が表示されます。
かんたん資金繰り表作成サービス「Gurinosuke」
料金プラン(年間) | 【無料プラン】0円 【プレミアムプラン】月額1,650円(税込) |
こんな方におすすめ |
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公式サイトURL | https://www.gurinosuke.com/gurinosuke/index.php |
「Gurinosuke」は、合同会社オンザウェイが提供する格安の資金繰り表作成・管理ツールです。これまでに紹介した会計ソフトのように多機能ではありませんが、資金繰り表・支払い予定管理・現預金出納帳作成が無料~月額1,650円で手軽に作成・管理できます。
シンプルで使いやすい仕様のため、初めて資金繰り表を作成する方でも安心です。
無料ユーザー登録をすれば、30日間プレミアムプランの機能が全て無料でお試しできます。
無料プランでも資金繰り表・支払い予定管理・現預金出納帳の作成と管理、pdf出力ができますが、データの保存期間は3ヶ月間に限られます。有料のプレミアムプランは月額1,650円の格安料金で、無料プランの全機能が利用可、およびエクセル出力、CSVデータの取り込みによる一括作成機能、データの3年間保存が利用できます。
月額500円で使える資金繰り専用アプリ「feliz(フェリス)」
料金プラン(年間) | 【標準プラン】月額500円(税抜) 【お得プラン】5,000円(税抜) |
こんな方におすすめ |
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公式サイトURL | https://tact-info.com/cashflow/index.html |
ただし、iOS端末でのみ利用でき、Android端末には対応していません。
資金繰り表をタブレットで簡単作成できる「社長の管理会計クラウド」
料金プラン(年間) | 月額5,000円~(税抜) |
こんな方におすすめ |
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公式サイトURL | https://uconnect.jp/psa/ |
「社長の管理会計クラウド」は、2019年10月にリリース、現在も機能拡張中の資金繰り表作成ソフトです。パソコンやスマホ、タブレッドで簡単に資金繰り表を作成・管理ができます。
2020年12月時点では、資金繰り管理表の作成・管理がメインの機能で、月額5,000円はややコストが高めの印象を受けますが、今後も短期利益計画・中長期利益計画のリリースが予定されています。
まずは30日間無料お試しで、機能や使い勝手を確認すると良いでしょう。
資金繰り表作成・管理に関するQ&A
資金繰り表作成・管理に関して、よくある質問とその回答をQ&Aにまとめました。
- Q.資金繰りは税理士におまかせしても大丈夫ですか?
- A.資金繰り管理を税理士などのプロや、配偶者にまかせている経営者も少なくありませんが、経営者が資金繰りを把握していない会社ほど、黒字倒産のリスクが高いと言えます。また、金融機関から融資を受けるときや返済計画について交渉するときは、経営者自身が自社の資金繰りを把握していないと、審査で不利になることもあります。経営者である以上、自身で資金繰り表を作成・管理して、常日頃から自社の資金繰りを把握しておきましょう。
- Q.資金繰り表を作りにあたって、押さえておきたい項目を教えて下さい。
- A.資金繰り表には決まったフォーマットがありませんが、「営業収支」「経常収支」「翌月繰越」の3項目については必ず押さえておきましょう。
営業収支…商品やサービスの販売など、本業の部分でのお金の出入りを表す項目
財務収支…銀行などから借入・返済したときのお金の出入りを表す項目
翌月繰越…その月の月末に現金預金がいくらあるのかを表す項目
さらに、「営業収支」と「経常収支」は、収入の部・支出の部で細かい項目があります。資金繰り表に記載することが望ましい項目については、ベストファクターが配布している無料の資金繰り表テンプレートをご確認ください。
>>「資金繰り表テンプレート」について詳しく見る
- Q.資金繰り表と損益計算書の違いを教えて下さい。
- A.資金繰り表は会社のお金の流れを表す書類です。会社の財務状況を正確に把握したり、将来の資金ショートを予測したりする役割があります。一方の損益計算書は会社の「利益」を把握するための書類です。売上の発生時点での費用・利益を表すもので、会社の実際のお金の出入りまでは把握できません。
ベストファクターの資金繰り表テンプレートもおすすめ
はじめて資金繰り表を作る方には、インターネット上で無料あるいは有料で公開されている資金繰り表テンプレートをダウンロードして使用する方法もおすすめです。
基本的な機能はあらかじめ備わっており、必要に応じて編集ができます。
ベストファクターでは、エクセルベースの資金繰り表を無料で配布しています。
エクセルがインストールされたパソコンにダウンロードすれば、すぐに自社の資金繰り表として使用することができますので、ぜひご確認ください。
ご自由にお使いください。