事業資金の調達方法
資金調達ラウンドやシリーズとは?スタートアップのフェーズごとの融資方法を解説
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スタートアップが資金調達をスムーズに実行するために、資金調達ラウンドを理解しておきましょう。ラウンドとは、資金調達および事業の段階を表す言葉です。

金融機関や投資家は、スタートアップの資金調達ラウンドをもとに評価して投資を決定します。それぞれの資金調達ラウンドにおいて、適切な手法で資金調達を実行しなければなりません。

この記事では、各資金調達ラウンドの事業状況や資金調達方法を紹介します。後半では、スタートアップの資金調達方法の注意点もまとめました。この記事を参考にすれば、自社にとってベストな資金調達の方法がわかります。

ラウンドを十分に理解し、自社に最適な資金調達方法を検討しましょう。

資金調達ラウンドの定義とは?

資金調達ラウンドは、スタートアップの成長過程を事業状況や規模に応じて6つに分類したものです。資金調達ラウンドによって、適した調達方法や主たる投資家が異なります。スタートアップがスムーズに資金調達を実行するためには、自社がいまどのラウンドにいるのか明確にしなければなりません。

スタートアップの成長過程を段階分けしたもの

資金調達ラウンドは、スタートアップの成長過程を以下の6つに段階分けしたものです。

  1. エンジェルラウンド
  2. シードラウンド
  3. シリーズAラウンド
  4. シリーズBラウンド
  5. シリーズCラウンド
  6. シリーズDラウンド

上のラウンドから始まり、事業や組織の拡大に伴って下のラウンドに移っていきます。エンジェルラウンドならエンジェル投資家、シリーズAラウンドならベンチャーキャピタルといったように積極的に資金を拠出する投資家がラウンドによって異なります。また、一般にラウンドが進むほど大規模な資金調達が可能です。

スタートアップは、自社のフェーズを認識したうえで適切な投資家に対して出資・融資の交渉を進めなければなりません。

資金調達ラウンドは6つ

資金調達ラウンドにおける、各フェーズの事業状況や売上高の目安は次の通りです。

ラウンド 事業状況 資金調達額の目安
エンジェルラウンド ビジネスアイデアをもとに起業を準備している段階 ~1,000万円程度
シードラウンド 大枠のビジネスが決まった段階 ~5,000万円程度
シリーズAラウンド ビジネス開始・売上が発生 ~数億円程度
シリーズBラウンド 売上が拡大し黒字化のめどが立つ ~十数億円程度
シリーズCラウンド 安定的な黒字達成 ~数十億円程度
シリーズDラウンド IPOやM&Aなどの準備段階 ~数十億円程度

資金調達額が少なすぎると思い通りに事業展開できなかったり、事業成長が遅れたりする原因になります。資金調達額が多すぎると、出資者が増えて経営のコントロールがしづらくなる恐れがあります。

資金調達ラウンドは、投資家にとって企業の収益力・将来性・安定性などを見るための重要な指標の一つです。投資家は、企業の資金調達ラウンドをもとに価値評価したうえで出資・融資を決定します。

目安はあるが厳密な定義はない

資金調達ラウンドにはそれぞれ事業状況や資金調達額の目安がありますが、厳格な定義は特にありません。スタートアップの経営者と投資家間で資金調達ラウンドに対する見解に差異が発生して、交渉が難航するケースもあります。

たとえば、黒字化のめどが立ち始めたスタートアップがシリーズBラウンドの想定で資金調達交渉をしたとしましょう。投資家は、スタートアップが提示する事業計画書やピッチブックなどをもとに評価します。その結果として事業の収益安定性に疑念を持たれて、シリーズBラウンドとしての資金調達がかなわない可能性もあるのです。

資金調達をスムーズに進めるためには、自社のフェーズを的確に理解したうえで投資家と交渉しましょう。そのうえで、将来性や収益の安定性などに納得してもらわなければなりません。

エンジェルラウンドの資金調達や事業状況

エンジェルラウンドの資金調達・事業状況などの特徴は次の通りです。

事業状況 ビジネスアイデアをもとに起業を準備している段階
資金調達方法 創業融資
出資
補助金・助成金
ターゲット投資家 日本政策金融公庫
エンジェル投資家
インキュベーター
資金調達額の目安 ~1,000万円程度

ビジネスアイデアが事業として確立されていないエンジェルラウンドの特徴について、詳しく紹介します。

エンジェルラウンドの事業状況

エンジェルラウンドはビジネスアイデアのみがある段階で、当初はスタッフや設備などはほとんど所有していません。何もない状態から製品・サービスをテストするために、必要最低限のリソースを確保していきます。まだ事業化されていないため、顧客・取引先はほとんどいません。

エンジェルラウンドの資金調達方法

事業の将来性・安定性が未知数なエンジェルラウンドにおいて、検討可能な資金調達方法は限定的です。融資では、日本政策金融公庫の新創業融資制度がほぼ唯一の選択肢となります。新創業融資制度は、新たに事業を始めるための資金を無担保・無保証で調達できる制度です。(参考:新創業融資制度

また、エンジェル投資家やインキュベーターなど一部の投資家はエンジェルラウンドの事業に対して出資を行います。出資金は返済の必要がないため、初期の創業・運転資金として重宝します。ただし、出資比率が高いと投資家に経営権を握られて思い通りの事業経営が出来なくなるので注意が必要です。

そのほか、政府や自治体が提供している補助金を利用できる場合があります。適用される補助金は本拠地や事業内容によって異なり、また所定の期間のうちに申請が必要な制度も少なくありません。利用可能な補助金を事前に整理して、取りこぼさないように注意しましょう。

エンジェルラウンドのターゲット投資家

次の投資家が主要な候補となります。

  • 日本政策金融公庫
  • エンジェル投資家
  • インキュベーター

日本政策金融公庫は政府出資を受けている金融機関で、個人事業主や中小事業者を融資の面で積極的に支援しています。審査にて事業計画が評価されれば、エンジェルラウンドの段階でも融資を受けられる可能性があります。

エンジェル投資家とは、富裕層などの個人で創業前後のスタートアップを出資で支援してくれる投資家です。企業経営者やIPO経験者などが多く、起業に向けたアドバイスをもらえる場合もあります。

インキュベーターは、創業前後の企業を積極的にサポートする企業もしくは組織のことです。出資に加えて、オフィス・機械など創業に必要な経営資源や経理・財務などに関するコンサルティングも行います。

エンジェルラウンドの資金調達額の目安

エンジェルラウンドの資金調達額の目安は数百万円程度、多くても1,000万円程度です。まだ事業の計画段階で収益化の道筋が出来ていないため、資金調達額は必要最小限に抑えなければなりません。調達した資金は、製品・サービスの開発およびテストの実行や生産・販売のための設備投資などに活用されます。

シードラウンドの資金調達や事業状況

シードラウンドの資金調達・事業状況などの特徴は次の通りです。

事業状況 大枠のビジネスが決まった段階
資金調達方法 融資
出資
クラウドファンディング
補助金・助成金
ターゲット投資家 日本政策金融公庫・地銀・信用金庫
ベンチャーキャピタル
個人投資家
資金調達額の目安 ~5,000万円程度

ビジネスの形が決まりつつあるシードラウンドの特徴について、詳しく紹介します。

シードラウンドの事業状況

シードラウンドは、製品・サービスのテストを重ねてプロトタイプを制作する段階です。大枠の事業構想を固めたうえで、生産設備や販売チャネルなどを整えて事業化に向けた準備を進めます。早期に事業を軌道に乗せるために、市場調査やターゲット顧客に即したマーケティング戦略なども検討しなければなりません。

シードラウンドの資金調達方法

シードラウンドの資金調達方法は大きく分けて次の4つです。

  • 融資
  • ベンチャーキャピタルからの出資
  • クラウドファンディング
  • 補助金・助成金

融資では、日本政策金融公庫に加えて信金・地銀など地域金融機関を活用する場合もあります。ベンチャーキャピタルは、シードラウンドの企業に積極的に出資を行います。

クラウドファンディングでは、不特定多数の個人投資家から資金調達が可能です。あとで返済が必要な融資型と、投資家それぞれが出資者となる株式型があります。補助金・助成金は、シードラウンドにおいても主要な資金調達方法の一つです。

シードラウンドのターゲット投資家

融資では日本政策金融公庫・信用金庫や地方銀行などの地域金融機関、出資ではベンチャーキャピタルや個人投資家が候補となります。地域金融機関は地域の創業や経済振興を重視しているため、シードラウンドの段階なら売上実績がなくとも融資交渉が可能です。

シードラウンドで地域金融機関の融資を受ける場合には、ほとんどが信用保証協会の保証つき融資となります。信用保証協会は、地域の創業者や中小企業の融資に保証を付与して円滑な融資をサポートする組織です。

ベンチャーキャピタルは新興企業に出資をして成長をサポートし、企業価値が向上したあとに売却して大きな収益を得る投資ファンドです。スタートアップの提案や相談を通じて事業の将来性が認められれば、出資を受けられる可能性があります。

クラウドファンディングを通じて、ハイリスク・ハイリターンな投資を希望する投資家から資金調達が可能です。多くの人に新規事業の魅力を伝え、共感が得られれば想定以上の資金を得られるケースも見られます。

シードラウンドの資金調達額の目安

シードラウンドの資金調達額の目安は、最大で5,000万円程度です。製品・サービスを完成させ安定した生産・販売体制を構築するために、エンジェルラウンドよりまとまった金額を必要とします。生産設備への投資や初期のスタッフへの人件費、市場調査費用など資金の用途はさまざまです。

シリーズAラウンドの資金調達や事業状況

シリーズAラウンドの資金調達・事業状況などの特徴は次の通りです。

事業状況 ビジネス開始・売上が発生
主な資金調達方法 融資
出資
クラウドファンディング
ターゲット投資家 日本政策金融公庫・地銀・信用金庫
ベンチャーキャピタル
個人投資家
資金調達額の目安 ~数億円程度

事業化して売上が計上され始めるシリーズAラウンドの特徴について、詳しく紹介します。

シリーズAラウンドの事業状況

事業を開始して、実際に売上が入り始めたらシリーズAラウンドとなります。売上はあってもまだ赤字の状態で、そのままでは資産が減ってやがて事業を継続できなくなります。事業を軌道に乗せるために、黒字化に向けて課題を解決していかなければなりません。

マーケティング施策を通じて市場の認知度を高めるとともに、購入者や市場の評価をもとに製品・サービスを改善させましょう。同時に、生産・販売を拡大させるための設備投資も必要となります。

シリーズAラウンドの資金調達方法

シリーズAラウンドでは資金調達の規模が一段と大きくなるため、金融機関からの追加融資が有効です。売上を計上した実績とともに堅実な事業計画をアピールすれば、よりまとまった金額での資金調達が期待できます。

出資を検討する投資家も増えると期待されますが、資金量が必要だからといって出資比率を高くしすぎないように負債とうまく組み合わせて資金調達しなければなりません。

出資を受けるために、しばしば種類株式を発行します。種類株は普通株式と異なる権利・条件を付与して発行する株式で、具体例は以下の通りです。

  • 優先株(配当金や清算時の残余財産の優先配分を受けられる株式)
  • 上場時に普通株式に転換できる
  • 上場時に自動的に普通株式に転換される

現段階の経営陣の出資比率や上場時に想定される資本構成などを見ながら、最適な形で出資を募りましょう。

シリーズAラウンドのターゲット投資家

融資では信金や地方銀行などの地域金融機関、出資ではベンチャーキャピタル・個人などが主なターゲットです。さらなる事業成長に充分な金額を集めるためには、地域金融機関の融資獲得が重要になります。

ベンチャーキャピタルやコーポレートベンチャーキャピタルは、シリーズAラウンドの企業に積極的に出資します。コーポレートベンチャーキャピタルとは、一般の事業会社がファンドを組成してベンチャー企業などを支援する組織です。売上実績や成長性をアピールすれば、より多くの投資家から資金調達が可能です。クラウドファンディングを活用して、個人投資家から資金を集める方法もあります。

シリーズAラウンドの資金調達額の目安

シリーズAラウンドの資金調達の金額目安は、最大で数億円程度です。販売体制の拡充やマーケティング施策の実行、製品・サービスの持続的な改善など多くの用途に資金を投じなければなりません。売上が増えるに従って組織や生産・販売体制も拡大させる必要があります。

シリーズBラウンドの資金調達や事業状況

シリーズBラウンドの資金調達や事業状況は次の通りです。

事業状況 売上が拡大し黒字化のめどが立つ
主な資金調達方法 融資
出資
ターゲット投資家 地銀・信用金庫
メガバンク
日本政策投資銀行
ベンチャーキャピタル
PEファンド
資金調達額の目安 ~十数億円程度

黒字化を達成し事業が軌道に乗り始める、シリーズBラウンドの特徴を詳しく紹介します。

シリーズBラウンドの事業状況

企業ブランドや商品・サービスの認知度が高まり、売上が増えて黒字化のめどが立った状態がシリーズBラウンドです。経営が安定化し、さらなる事業拡大を検討し始めるタイミングです。

継続的に黒字を計上して企業規模を拡大していくために、さらなる事業投資を進めなければなりません。経営者や出資者によっては、事業の売却やIPOなどの出口戦略(エグジット)を検討し始める段階でもあります。

シリーズBラウンドの資金調達方法

シリーズBラウンドでは、融資と出資をうまく組み合わせて潤沢な資金を調達しなければなりません。融資の形態はシリーズAと大きく変わりませんが、検討可能な金融機関は広がります。シリーズBでも、種類株発行による増資が出資を受けるための主要な方法です。

シリーズBラウンドのターゲット投資家

融資では地域金融機関・メガバンクが、出資ではベンチャーキャピタルのほか未上場企業に出資して収益獲得を目指すPEファンドや、企業に事業資金の融資や投資などを行う政府系機関である日本政策投資銀行などがターゲット投資家です。黒字を計上するまでに成長した企業なら、大手企業を中心に取引するメガバンクからの融資を受けられます。信用金庫や地方銀行などの地域金融機関も、引き続き重要な取引先です。

PEファンドや日本政策投資銀行のエクイティ投資は、事業が軌道に乗り将来のエグジットの道筋が立ち始めるシリーズBラウンド段階のスタートアップから出資を検討します。資金調達方法はシリーズAと大きく変わりませんが、調達金額が膨らむためより多くの投資家から出資・融資を募らなければなりません。

シリーズBラウンドの資金調達額の目安

シリーズBラウンドの資金調達額の目安は十数億円程度と、事業規模の拡大に伴って必要資金も大きくなります。黒字化を継続させるために、さらなる設備投資・マーケティングや組織拡大のための確保などが必要です。より多くのターゲットを顧客に取り込むための広告・宣伝にかかる費用も増大します。

シリーズCラウンドの資金調達や事業状況

シリーズCラウンドの資金調達や事業状況は次の通りです。

事業状況 安定的な黒字達成
資金調達方法 シンジケートローン
プロパー融資
種類株による発行
IPO(普通株式発行)
ターゲット投資家 地銀・信用金庫・メガバンク
日本政策投資銀行
PEファンド
資金調達額の目安 ~十数億円程度

黒字計上が継続し安定的に企業が拡大する、シリーズCラウンドの特徴を詳しく紹介します。

シリーズCラウンドの事業状況

シリーズCラウンドは、黒字経営を安定的に達成できる状態です。毎期黒字計上できれば内部留保が膨らんでいくため、企業の規模が持続的に拡大します。事業成長の道筋が明確になったシリーズCの段階で、エグジットする経営者・投資家も少なくありません。

事業の全国展開や海外展開など、規模の拡大に従って大規模な事業投資を実行する企業もあります。一方で、商品・サービスの改善やラインナップ拡充など競争優位に立つための対策も欠かせません。

シリーズCラウンドの資金調達方法

シリーズCラウンドではプロパー融資やシンジケートローン、出資ならIPOによる普通株発行が新たな資金調達方法として加わります。

プロパーローンとは信用保証協会などの保証をつけず、企業自身の信用力だけを評価して融資を受ける方法です。審査が厳しくなる一方で、一般に融資限度額が拡大し借入金利が低くなる傾向があります。さらに大きな金額を調達する際には、複数の金融機関が協調して融資するシンジケートローンも有効です。

出資は種類株の発行のほか、IPOで上場して普通株式による増資を始める企業もあります。普通株式による資金調達が実現すれば、さらに柔軟な資本調達が可能です。

シリーズCラウンドのターゲット投資家

シリーズCラウンドでは多様な金融機関や投資ファンドから資金調達が可能なうえ、上場すれば不特定多数の個人からも出資を受けられます。

融資では地方金融機関とメガバンクの双方が候補先となります。経済環境が悪化しても安定して資金調達ができるよう、複数の金融機関から融資を受けられる状態にしておきましょう。

資本調達では、PEファンドや日本政策投資銀行がターゲットです。IPOで上場したあとであれば、生損保やアセットマネジメントなどの機関投資家・個人など幅広い投資家から出資を募れます。

シリーズCラウンドの資金調達額の目安

シリーズCラウンドでは、最大で数十億円程度が資金調達額の目安となります。企業の社会的信用力が高まり、まとまった金額での調達が可能です。

事業規模が大きい分、新たな事業投資・運転資金ともに大きな金額が必要になります。過大な資金調達を行うと、たちまち財務を圧迫して経営を悪化させるリスクがあります。事業環境や財務状況をふまえて適度な金額を調達して、健全なバランスシートを維持してください。

シリーズDラウンドの資金調達や事業状況

シリーズDラウンドの資金調達や事業状況は次の通りです。

事業状況 IPOやM&Aなどの準備段階
資金調達方法 シンジケートローン
プロパー融資
種類株による発行
IPO(普通株式発行)
社債発行
ターゲット投資家 地銀・信用金庫・メガバンク
日本政策投資銀行
PEファンド
資金調達額の目安 ~数十億円程度

シリーズDラウンドは、多くの経営者がエグジットに向けて準備を進める段階です。ここからは、シリーズDラウンドについて紹介します。

シリーズDラウンドの事業状況

シリーズDラウンドは、大きな規模で安定した利益を継続的に計上できている状態です。スタートアップから、大企業に成長しつつある段階といえます。IPOやM&Aで保有する株式を売却して、経営を他者に委ねる方も少なくありません。多角化やM&Aの実行により、急速な規模拡大を追求する経営者もいます。

シリーズDラウンドの資金調達方法

シリーズDは企業の信用力が充分に高いため、多様な資金調達手法を選択できます。融資では、複数の金融機関からプロパー融資やシンジケートローンで多額の調達が可能です。また、社債発行で多数の投資家から負債調達を行う企業も少なくありません。

資本調達では引き続き種類株発行が選択肢の一つとなります。一方で、IPOを行ったのちは、公募増資を通じて個人を含む幅広い投資家から出資を募れます。

シリーズDラウンドのターゲット投資家

シリーズDラウンドでは、多額の資金を拠出できる投資家とうまく付き合う必要があります。融資であれば、数十億円単位の借入にも対応可能なメガバンクを積極的に活用してください。融資先の分散の観点から、融資可能な範囲で地銀など地域金融機関も活用します。

また、公募増資や公募社債の発行を通じて幅広い投資家から資金調達が可能です。生損保や年金・アセットマネジメント・個人投資家など、公募発行を通じて投資家の多様化を進める企業も少なくありません。

シリーズDラウンドの資金調達額の目安

シリーズDに到達した当初の目安は数十億円程度ですが、その後は企業規模に応じて拡大していきます。大企業に仲間入りすれば、数百億円単位の資金を調達する企業も珍しくありません。財務状況や事業規模をもとに、企業経営を進める上で適切な金額で資金を調達しましょう。

資金調達の注意点

資金調達の規模が大きくなる分、安定した事業経営において適切な金額での調達を心がけてください。資金調達の方法には、大きく分けて融資などの負債調達と出資などの資本調達があります。どちらの方法にもリスクがあるため、無闇に多額の資金調達を行うべきではありません。

融資による資金調達のリスク

融資など負債による資金調達には次のようなリスクがあります。

  • 利払いが将来の経営圧迫要因となる
  • 返済できずに倒産するリスクがある
  • 経営が安定するまで実行しづらい

資金を借入すると、完済まで利息を支払わなければなりません。企業にとって利息の支払いは、長期にわたる収支の圧迫要因となります。利息は企業の信用力や実績に応じて決まるため、資金力に乏しい成長初期の企業の方が高くなりがちです。

また、融資は当初取り決められたスケジュールに沿って返済しなければなりません。経営が悪化して返済が滞れば、キャッシュフローが枯渇して倒産の原因となります。多額の借入を行えば、それだけ返済が苦しくなるリスクが高まるのです。

融資は株式と異なり、資産価値が向上してもリターンが増えることはありません。そのため、銀行など融資を出す金融機関は、企業の経営の安定性や返済能力の有無を重視します。スタートアップの初期段階ほど売上や利益が安定しづらいため、融資先を見つけるのに苦労しがちです。

出資による資金調達のリスク

返済不要の出資にも、次のようなリスクが存在します。

  • 経営権を外部に握られるリスク
  • 上場しづらくなるリスク

企業経営は、原則として株の出資比率に応じて経営権が左右されます。経営者の株式保有率が下がれば、それだけ自由な経営が困難になるのです。

スタートアップの成長段階において経営の自由度が下がると、他者の介入により業績が悪化するリスクがあります。他者の出資比率が高いと、上場後に株を集めて経営権を握られるリスクが大きくなるため、上場の阻害要因にもなります。

スタートアップの資金調達にファクタリングも有効な手段に

負債調達も資本調達もしづらいとき、ファクタリングがスタートアップの有効な資金調達手段の一つとなります。ファクタリングとは、保有する売掛債権をファクタリング会社に譲渡して債権の額面から手数料を引いた金額を現金化する手法です。

借入ではないため、ファクタリングを実行してもバランスシートを圧迫せずに済みます。迅速に現金化できるため、一時的なつなぎ資金を得るのに有効です。ここからは、スタートアップがファクタリングを活用すべきケースと適さないケースを紹介します。

ファクタリングによる資金調達が適したケース

一時的なつなぎ資金を獲得するうえで、ファクタリングはスタートアップにも適した資金調達手法です。ファクタリングによる資金調達は、以下のようなケースでの活用に最適です。

  • 大口取引で先に発生する仕入れや製造費用による資金繰りの圧迫
  • 新規ビジネスチャンスがあるのに資金が不足している
  • 広告出稿により売上拡大が期待できるのに広告費用が足りない

一時的な資金手当により売上の拡大が期待できる局面では、積極的にファクタリングを活用しましょう。

特に信用力に乏しく融資の審査通過が難しい、もしくは審査に時間がかかりすぎて間に合わない場合などに有効です。なぜなら、ファクタリングは売掛先の信用状況を審査で重視するため、利用者の経営状態・財務状況が悪くても審査通過が可能だからです。

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ファクタリングによる資金調達が適さないケース

短期間で売上増加につながらない、急ぎではない資金調達でファクタリングを使うのはおすすめしません。

  • 人材雇用のコスト
  • 事務所の移転
  • 不確実性の高い研究開発に対する費用

ファクタリングは、年率で考えた場合のコストが借入より高くなるケースも少なくありません。無闇に売掛債権をファクタリングに出すと、本当に資金が必要なときに取れる資金調達手段がなくなる恐れもあります。中長期的な成長を見込んで資金を活用するときには、ファクタリングよりも長期借入を優先的に活用しましょう。

資金調達ラウンドの特徴をおさえてスタートアップ企業の成長を加速させよう

スタートアップは6つの資金調達ラウンドに分けられて、それぞれの段階で資金調達方法やターゲット投資家が異なります。資金調達ラウンドは厳格に定義されたものではないので、まずは自社がいまどのラウンドにいるのかを明確にしましょう。そのうえで、ラウンドにあった規模や方法で資金調達を実行してください。

一般に資金調達というと負債調達・資本調達の二択から検討しがちですが、どちらの方法にもリスクがあります。財務状況や事業計画から必要資金を見極めて、適切な金額での資金調達が望ましいといえます。どちらの方法も取りづらい状況では、ファクタリングが有効なケースもあります。

今回の記事では資金調達ラウンドごとの特徴を紹介しました。また、融資と出資による資金調達のリスクやファクタリングによる調達が有効なケースについても解説しています。この記事を参考にして、スタートアップの資金調達をスムーズに進めてください。

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