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資金調達の手法を紹介!手法の種類から資金調達時の注意点まで徹底解説
「新たに会社を設立したい」「事業に必要な資金を集めたい」など、資金調達の利用を考えている方も多いでしょう。
資金調達の方法を探していると、種類が多すぎて選択する際に悩む方も多くいます。本記事では数多くある資金調達手法を細かく解説し、資金調達のタイミングごとにおすすめの手法を紹介します。
くわえて、資金調達時に気を付けたいポイントもまとめました。本記事を読んで、状況に合わせた最適な手法を選択して資金調達を成功させましょう。
記事の目次
資金調達とは?
資金調達とは、会社を経営していくうえで事業に必要な資金を融資などによって調達することを指します。
会社を経営していくには、資金の流れをうまく調整するのが大切です。そのためにも、まずは資金調達が必要な理由・資金調達手法4つの種類・出資と融資の違いについて解説していきます。
資金調達はなぜ必要なのか
資金調達は会社の設立の際に必要な開業資金として用いたり、会社の資金の流れを円滑にしたりするために必要です。
会社を運営していくための資金・設備投資・企業買収・新規事業の開拓など、調達した資金の使い道はさまざまです。ほかにも、従業員への給与・光熱費・宣伝広告費・買掛金などがありますが、支払いをしてから収益を得るまでには時間差があります。
仕入れ・支払い・設備投資のために支出したとしても、時間差が影響して収益が入金されるまでの間に資金がショートすれば、経営が立ち行かなくなる恐れがあります。
会社経営を悪化させず、資金繰りをうまく行うためにも資金調達は会社経営に必要な手段です。
資金調達手法4つの種類
資金調達手法は大きく以下の4つに分類されます。
- デットファイナンス(借入)による資金調達手法
- アセットファイナンス(現金化)による資金調達手法
- エクイティファイナンス(出資)による資金調達手法
- その他の資金調達手法
それぞれの資金調達手法をまとめた表を以下に示します。
資金調達手法の分類 | 概要 | 具体的な資金調達手法 | メリット | デメリット |
デットファイナンス | 会社の負債を増やして資金調達する方法です。 |
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アセットファイナンス | 売掛債・不動産などの会社が保有している資産を売却して資金調達する方法です。 |
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エクイティファイナンス | 自社に対して出資してくれる企業や人物を募集して資金調達する方法です。 |
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その他 | 補助金・助成金を活用したり、クラウドファンディングを利用したりして資金調達する方法です。 |
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このように資金調達の手法にはさまざまな種類があり、それぞれ調達までのスピードや返済の有無などが異なります。
資金調達のタイミング・目的・メリット・デメリットなどを把握したうえで、最も適した資金調達手法を選択するのが重要です。
出資と融資の違い
出資と融資の違いは、調達した資金の返済義務の有無です。
増資・ベンチャーキャピタルなどの出資は返済義務がなく、ビジネスローン・日本政策金融公庫・銀行などの融資にはあります。資金提供者にも違いがあり、融資は銀行などの金融機関、出資はベンチャーキャピタルや個人投資家などが行います。また、貸借対照表での取扱いで融資は負債、出資は純資産として扱えるといった違いがあります。
出資には返済義務がありませんが、出資者に対して出資比率に応じて議決権を付与したり、事業が成功した際に配当を受け取る権利を与えられたりするケースがほとんどです。
資金調達方法ごとの金利・手数料の相場
資金調達の方法ごとの金利・手数料の相場は以下の表の通りです。
資金調達方法 | 金利・手数料相場 |
銀行系ビジネスローン | 2.35%~9.0% |
信用金庫 | 5.5%~11.5% |
日本政策金融公庫 | 1.10%~2.80% |
ノンバンク系ビジネスローン | 3.1%~18.0% |
ファクタリング | 1%~20% |
手形割引 | 2%~15% |
資金調達の方法ごとに手数料が異なります。上限金額の違い・担保の有無などによっても金利・手数料が変わるため、上記の比較表は参考程度に見てください。
デットファイナンス(借入)による資金調達手法
デットファイナンスは、会社の負債を増やして資金調達をする手法です。
デットファイナンスには、以下のような資金調達手法があります。
- 銀行・信用金庫・日本政策金融公庫の融資
- 自治体による制度融資
- 銀行・ノンバンクのビジネスローン
- 社債の発行
デットファイナンスは返済の必要がありますが、利息で節税ができたり資金調達先が多く探しやすかったりするといった点がメリットです。
デットファイナンスによる資金調達手法をそれぞれ解説していきます。
銀行・信用金庫・日本政策金融公庫の融資
デットファイナンスでメジャーな方法は、銀行・信用金庫・日本政策金融公庫の融資の利用です。ほかの資金調達手法と比較して資金調達コストが安く、多くの企業が活用している手法です。
融資には信用保証付き融資・プロパー融資の2種類があります。
信用保証付き融資とは、その名の通り保証がついている融資方法であり、銀行が行う融資制度を利用する際に信用保証協会が保証を行う融資です。保証内容は、融資を受けた企業が返済できなくなった場合に信用保証協会が代理で払うというものです。保証を無料で受けられるわけではなく、保証料をいくらか支払わなければなりません。
また、信用保証協会が代理で支払って終わりではなく、事業主は信用保証協会に返済していく必要があります。
プロパー融資とは、信用保証協会の保証なしで銀行と事業主の間で直接融資を行う方法です。返済が滞ると銀行側にとって損害となるため、企業の決算書・事業計画書などをもとに返済能力の有無を慎重に見分けます。そのため、プロパー融資は信用保証付き融資に比べて審査が厳しい傾向があります。
銀行融資の特徴は以下の通りです。
- 信用保証付き融資とプロパー融資がある
- プロパー融資は信用力が重視される
- 信用保証付き融資は保証料がかかる
中小企業・小規模事業者は融資審査に通りやすい信用保証付き融資がおすすめです。事業規模が大きくなり、返済実績を持ち合わせるようになればプロパー融資の利用も検討してみましょう。
日本政策金融公庫とは、政府が運営している金融機関であり、経済発展や国民のために融資を行っています。そのため、民間の金融機関よりも金利が安く設定されています。
日本政策金融公庫の特徴は以下の通りです。
- 個人事業や小規模事業者向けの融資
- 日本政府が運営している金融機関
- スタートアップ支援や事業再生支援などのサポートが充実
- 金利が1.10%~2.80%と安い
さまざまなサポートが充実しており、金利が低いため開業や中小企業の資金調達方法として最初に検討するべき手段です。
自治体による制度融資
金利がリーズナブルなデットファイナンスとして、自治体による制度融資の利用を検討しましょう。
自治体による制度融資は自治体・信用保証協会・金融機関の3つが連携し、中小企業の経営安定化・創業支援・産業振興を目的として貸付を行います。制度融資のメリットは以下の通りです。
- 低金利で資金調達できる
- 長期間の借入が可能
- 審査に比較的、通過しやすい
- 利子・保証料の補助が受けられる
- 無担保・無保証でも申し込める
都道府県・市区町村によって制度が異なるため、利用を検討しているなら各自治体の公式サイトを確認しましょう。
大阪府を例に挙げると、以下のような制度融資が実施されています。
- 開業サポート資金
- 小規模企業サポート資金
- チャレンジ応援資金
- 経営安定サポート資金
大阪府の各市町村は独自に補助を行っており、支払った保証料の半額や利子の1%を負担してくれます。
制度融資は日本政策金融公庫と同様に、資金調達コストがリーズナブルな資金調達手法です。利用する場合は各自治体に問い合わせて、制度融資の詳細を確認しましょう。
銀行・ノンバンクのビジネスローン
一般的な融資より審査が柔軟なビジネスローンは、多くの企業に利用されるデットファイナンスです。
ビジネスローンとは、自営業者や法人事業者向けの融資を指しており、通常の融資よりもスピーディーな資金調達が可能です。ビジネスローンには銀行系ビジネスローン・ノンバンク系ビジネスローンの2種類があります。
銀行系ビジネスローンの特徴は以下の通りです。
- ノンバンク系よりも金利が安い
- 審査が厳しい
- 借入限度額が融資先により異なる
ノンバンク系ビジネスローンの特徴は以下の通りです。
- 銀行系より金利が高い
- 審査がやさしい
- 借入限度額が低い
- 提出書類が少ない
- 最短即日融資
ノンバンク系ビジネスローンは保証人や担保なしで利用できる場合が多く、即日融資が可能なケースがほとんどですが、貸し倒れリスクの回避のために金利が高い傾向があります。
ビジネスローンは即日融資が可能なサービスもあるため、緊急で資金調達が必要になったときに利用するのがおすすめです。普段の借入先として利用すると割高な利率の影響を受けてしまうため、節度を守りながら利用しましょう。
社債の発行
長期的な安定資金が必要なら、社債の発行も有力な資金調達手法の1つです。
社債とは、設備投資などのために会社が発行する債券を指します。簡潔にいうと、投資家たちに債券を購入してもらいお金を借りる方法です。社債は大きく公募債と私募債の2つに分けられます。
公募債は、証券会社に頼んで社債を購入してくれる投資家を不特定多数の中から探す方法です。自社に期待を寄せてくれる投資家が多ければ多額の資金を得られますが、有価証券として届け出る手間などを含め時間がかかる点がデメリットです。
私募債は、証券会社を介さずに会社が投資家に対して直接社債を販売する場合を指しています。資金調達できる額は少なくなりますが、公募債ほど手続きに手間がかからず素早い資金調達が可能です。
公募債と私募債のメリットとデメリットを把握したうえで、自社に最も適した方法を選択しましょう。
アセットファイナンス(現金化)による資金調達手法
アセットファイナンスは、自社が保有している資産を現金化して資金調達をする手法を指します。
不動産や土地といった固定資産以外にも、売掛債権・有価証券・不動在庫などを売却して資金を調達するのもアセットファイナンスに含まれます。保有している資産を元手に資金を調達するため、即金性が高くリスクがない点がメリットです。
アセットファイナンスによる資金調達方法を解説していきます。
売掛債権のファクタリング
アセットファイナンスでもっともメジャーな資金調達方法は、売掛債権のファクタリングです。
売掛債権とは、掛け取引でまだ入金されていない商品やサービスの代金を受け取る権利を指します。自社の売掛債権をファクタリング会社に売却して、手数料を差し引いた金額を支払期日よりも前に現金化する方法がファクタリングです。
ファクタリングには、2社間ファクタリング・3社間ファクタリングという2つの契約形態があります。
ファクタリング形態 | 特徴 | メリット | デメリット |
2社間ファクタリング | 利用者・ファクタリング会社で契約 |
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3社間ファクタリング | 利用者・ファクタリング会社・売掛先で契約 |
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ファクタリングのメリットは以下の通りです。
- 申し込みから入金まで即日で急な資金調達にぴったり
- 資金繰りが改善できる
- 担保・保証人が不要
- 審査が融資より柔軟
一方、デメリットは以下のようになります。
- 手数料が割高
- 売掛債権以上の額は資金調達できない
「早急に資金が必要」「融資の審査に落ちて困窮している」といった人は、ファクタリングの利用を検討しましょう。リーズナブルな手数料で資金調達したいなら、3社間ファクタリングがおすすめです。
手形割引
手形を取引に利用しているなら、資金調達の手法として手形割引を検討しましょう。
手形割引とは、自社が保有する手形を支払い期日前に銀行・専門業者に手数料を支払って買い取ってもらう資金調達手法です。
手形割引のメリットは以下の通りです。
- 手形割引はファクタリングより手数料がリーズナブル
- 審査が柔軟で融資より通過しやすい
- 最短即日で資金調達できる
一方、デメリットは以下のようになります。
- 不渡りになると弁済が必要
- 金額の分割ができない
- 手数料がかかる
「手形取引をしている」「早急に資金が必要」「より安い手数料で資金調達したい」といった場合は、手形割引の利用を検討しましょう。
不動産・車・設備など固定資産の売却
「利用していない」「利益より維持費が高い」といった状態の固定資産を売却し、事業をスリム化しつつ資金調達しましょう。売却できる固定資産として以下のようなものが考えられます。
- 土地
- 建物
- 機械
- 車
- 営業権
- 商標権
- 借地権
- 投資有価証券
「維持費・税金がかかり損益でマイナスになっている」「長期間、利用していない」「特に業務に関係しない」といった、切り捨てても経営に影響がない固定資産を売却しましょう。
固定資産を売却するメリットは以下の通りです。
- 自己資本比率の改善
- 維持費・税金などの支払いが減少
一方、デメリットは以下のようになります。
- 希望した金額で売却できない可能性
- 売却までに時間がかかるリスク
- 使用している固定資産を売却するとリース代がかかる
長期保有していても資産価値が下がり、将来的に不利益を被る恐れもあるため、時期を見極めて不要資産の売却を検討してみましょう。
事業の一部を売却
事業の一部を売却すれば、「中核事業への注力・経営のスリム化」といった目的も資金調達と同時に実現できます。
会社にある事業の一部を売却して資金調達をする方法を事業譲渡といいます。
事業の一部を売却するメリットは以下の通りです。
- 譲渡で利益を得られる
- 後継者問題が解決できる
- 譲渡利益を既存事業に再投資できる
一方、デメリットは以下のようになります。
- 譲渡益に法人税がかかる
- 契約を移す手間がかかる
- 負債が残る可能性がある
事業譲渡の契約と債務の引継ぎは分類されており、債務の引継ぎを行えないと負債が残る可能性がある点に注意が必要です。
会社の改革のために切り離したい事業がある場合は、事業売却による資金調達を検討しましょう。
売却後にリースするリースバック
リースバックは自社の土地や設備などをリース会社に売却し、賃料を払って賃貸しながら事業を継続する方法です。
リースバックを利用するメリットは以下の通りです。
- まとまった資金を得られる
- 固定資産税や修繕費などの経費削減ができる
- 売却後も住所変更が不要
一方、デメリットは以下のようになります。
- 賃料が相場よりも高くなる
- 買戻し時の価格が高くなる
- 所有権を失う
リース会社に売却した資産は買い戻せるため、一時的な業績の悪化をしのぐ手段としては有効です。
エクイティファイナンス(出資)による資金調達手法
エクイティファイナンスは、出資してもらって資金調達を行う方法です。
個人投資家・ベンチャーキャピタル・コーポレートベンチャーキャピタルなどから出資してもらったり、株主を募集するために公募増資してもらったりするなどの方法があります。エクイティファイナンスは、借入ではないため負債が増えず返済義務がない点が大きなメリットです。銀行・信用金庫の融資のように利息の負担もなく、調達した資金はすべて有効に使えます。
エクイティファイナンスによる資金調達方法を紹介していきます。
ベンチャーキャピタルからの出資
ベンチャーキャピタル(VC)とは、未上場のベンチャー企業(新興企業)に出資して株式を取得し、上場した際の値上がり幅を利益として得る目的の投資家を指します。
ベンチャーキャピタルは出資した会社が成長しなければ利益を得られないため、会社の成長性を重要視しています。そのため、ベンチャーキャピタルからの出資を希望する場合は、出資に見合った将来性のある事業計画を明示しなければなりません。
ベンチャーキャピタルからの出資を受けるメリットは以下の通りです。
- 返済義務がない
- ベンチャーキャピタルのノウハウを活用できる
一方、デメリットは以下のようになります。
- 経営に干渉される場合がある
- 保有株式比率が下がる
- 結果を出す必要がある
個人投資家からの出資
資金調達手法として、エンジェルと呼ばれる個人投資家からの出資を検討しましょう。
個人投資家からの出資を受けるメリットは以下の通りです。
- 経営・事業への的確なアドバイスが得られる
- 審査手続きが不要
一方、デメリットは以下のようになります。
- 出資が少額になるケースが多い
- 経営に関与される
コーポレートベンチャーキャピタル・事業会社からの出資
コーポレートベンチャーキャピタルとは、ベンチャーキャピタルのように上場した際の値上がり幅を利用して利益を得る投資を目的としておらず、ベンチャー企業と相乗効果を生む目的で出資しています。さまざまな分野の企業に対して出資するベンチャーキャピタルとは異なり、コーポレートベンチャーキャピタルは自社に近い分野のベンチャー企業へ投資するケースがほとんどです。
コーポレートキャピタルによる資金調達のメリットは、以下の通りです。
- 経営資源の提供を受けられる
- 企業の認知度と信頼性の向上
- 資金調達がスムーズ
一方、デメリットは以下のようになります。
- 競合他社と取引しづらくなる
- 経営に干渉される恐れがある
コーポレートベンチャーキャピタルはベンチャー企業ならではの発想力やノウハウを求めており、自社の事業に活用して事業成長を図りたいと考えています。出資してもらえるような魅力的な事業計画や、独自のノウハウをアピールするのが大切です。
株主を募集する公募増資
公募増資は特定の第三者にこだわらず、幅広く一般の投資家に向けて株式を発行して資金調達する方法を指します。
公募増資を利用するメリットは以下の通りです。
- 多額の資金調達が可能
- 一般投資家からの注目が集まる
- 株式の流動性が上がる
一方、デメリットは以下のようになります。
- 配当金の支払いが必要
- 税負担が増加
- 議決権割合の低下
公募増資ならではのメリットもありますが、デメリットを理解したうえで利用を検討しましょう。
その他の資金調達手法
デットファイナンス・アセットファイナンス・エクイティファイナンス以外のその他の資金調達手法として、以下の3つがあります。
- 政府・自治体の補助金・助成金
- クラウドファンディング
- 自己資金
それぞれの資金調達方法を紹介していきます。
政府・自治体の補助金・助成金
国や地方自治体が事業者をサポートするために資金の一部を給付する制度として、補助金や助成金を提供している場合があります。
政府・自治体の補助金・助成金を利用するメリットは以下の通りです。
- 返済が不要
- 事業計画をブラッシュアップできる
- 社内体制の整備ができる
一方、デメリットは以下のようになります。
- 補助金・助成金を利用する条件がある
- 手続きの手間がかかる
- 情報収集が難しい
- 後払いである
まず自社に適合した条件の補助金・助成金があるかを確認するために、本社所在地の自治体に問い合わせてみましょう。
デメリットが少なくメリットが大きい資金調達手法のため、可能な限り補助金や助成金の利用をおすすめします。
クラウドファンディング
クラウドファンディングは、インターネットを利用して不特定多数の方から資金調達をする方法です。クラウドファンディングにはさまざまな種類があり、種類によって支援方法や出資者へのリターンが異なります。
基本的には出資者に支援してもらい、お礼としてサービス・物品・権利などを返す場合がほとんどです。中には投資家から出資してもらったり、融資と同様に返済が必要になったりするクラウドファンディングもあります。
クラウドファンディング(寄付型)のメリットは以下の通りです。
- Webを使って気軽にスタートできる
- 税制優遇を受けられる
- 返礼品が不要
一方、デメリットは以下のようになります。
- 事業の進捗具合を定期報告しなければならない
- 返礼品などを使った宣伝ができない
クラウドファンディングはさまざまな手間がかかるため、長期的な視点から利用するかどうかを判断しましょう。
自己資金
自己資金とは、企業や個人事業主が保有しているお金です。株主が出資した資金や、事業運営で配当に回さず累積している力の合計が自己資金になります。
自己資金を利用するメリットは、ほかの資金調達方法と違い返済が不要でありリスクがまったくない点です。また、自己資金はビジネスローンのように資金使途を限定されません。
また、融資は審査時に自己資金に応じて融資額の上限が設定される場合があります。将来的な事業拡大・設備投資・新規事業を検討しているなら、自己資金をできるだけ蓄えておきましょう。
タイミング別の資金調達手法
以下の3つの場合に分けて、タイミング別におすすめの資金調達手法を紹介します。
- 企業のための資金調達
- 中小企業の資金調達
- 経営が傾いた時の資金調達
資金調達をしたいと考えているタイミングごとに、おすすめの資金調達手法は異なります。資金調達までの時間・手続きの手間・審査の可否など、考慮すべき点が数多くあります。
起業のための資金調達
起業のための資金調達でおすすめの手法は、自己資金・補助金・助成金・クラウドファンディング・日本政策金融公庫などです。
起業していない状態では会社の信頼度や将来性が先行き不透明なため、ベンチャーキャピタルや投資家からの出資を受けるのは難易度が高くおすすめできません。出資を求めるよりは、自己資金を貯めたり起業予定の分野によっては自治体などの助成金・補助金を活用したりする方法がおすすめです。
日本政策金融公庫では個人企業・小規模企業を対象とした創業・スタートアップを支援する「新規開業資金」があり、1%~2%ほどの低金利で融資が受けられるため起業時のサポートとして役立ちます。
すでに事業計画がまとまっていたり、サービスや商品の詳細まで立案できていたりする場合は、クラウドファンディングの利用も検討してみましょう。
中小企業の資金調達
中小企業が資金調達する際におすすめの手法は、ベンチャーキャピタルや投資家からの出資・日本政策金融公庫・ビジネスローンです。
これらの中でも特におすすめなのが日本政策金融公庫です。日本政策金融公庫は政府が運営している金融機関であり、日本の経済成長や国民生活を安定させるために融資を行っていて金利が低く設定されています。リスクを背負えない中小企業にとって、低金利で融資を受けられる点は大きなメリットになります。
ベンチャーキャピタルや投資家からの出資も、中小企業にとって有効な資金調達手法です。資金調達だけではなく経営のアドバイスをもらえる手法であるため、将来的に会社を成長させて株式上場やM&Aを目指している中小企業におすすめです。
審査に通りづらくてなかなか融資が受けられない場合は、ビジネスローンの利用を検討しましょう。金利が高い点はデメリットですが比較的審査がゆるく、早期に資金調達したい場合におすすめです。
経営が傾いた時の資金調達
経営が傾いた時の資金調達におすすめの手法は、補助金や助成金の活用・アセットファイナンス・日本政策金融公庫などです。
経営が傾いている状態では、金融機関からの融資を受けづらくなります。経営状態・財務状況が悪い場合は、会社が持っている資産を売却するアセットファイナンスの利用がおすすめです。融資審査に通らない状態でも、資産の売却なら確実かつ迅速に資金調達ができます。
補助金・助成金は、条件さえ合えば経営常用に関係なく資金調達が可能です。くわえて、借入ではなく返済義務がないためにリスクがない点は大きな魅力です。
また、日本政策金融公庫の経営環境変化対応資金の利用も検討してください。利用条件を満たせば低金利で融資を受けられるため、経営不振で困っている場合は確認してみましょう。
資金調達を成功させるためのポイント
資金調達を成功させるためのポイントは以下の3つです。
- 資金調達タイミングの見極め
- 信頼の構築
- 資金調達手法ごとのコストの確認
3つのポイントを押さえたうえで、資金調達を成功させて経営の安定・事業の拡大を実現しましょう。
資金調達タイミングの見極め
資金調達を成功させるために、タイミングを見極めましょう。
経営が順調な場合は、審査に通過して融資が簡単に受けられる可能性が高いです。しかし、経営がうまくいかず資金調達が必要になった時には、条件が厳しかったり融資を受けられなかったりする恐れがあります。なぜなら、経営状態の悪化は、金融機関にとって貸倒れリスクの増加につながるからです。
経営が完全に立ち行かなくなってから融資を希望しても、審査通過は困難です。自社の状況を的確に把握して、適切なタイミングで資金調達をする必要があります。
信頼の構築
資金調達を成功させるために、普段から金融機関・出資者などとの信頼関係を構築しておきましょう。資金調達は、共に会社を成長させていくパートナーを見つけるよい機会でもあります。
ベンチャーキャピタルや投資家は数多くの経験を持っており、的確なアドバイスで会社を成長させてくれるビジネスパートナーとなる可能性があります。会社の成長に関わる貴重な機会を活用するために、普段から信頼関係を築くのが大切です。
資金調達手法ごとのコストの確認
資金調達を成功させるために、資金調達コストを確認しましょう。
資金調達の手法は多数あります、それぞれ手数料や利率などのコストが異なります。資金を調達できればよいわけではなく、返済時の計画も考えなければなりません。たとえば、ビジネスローンでは資金調達までのスピードは早いものの、通常の融資よりも利率が高くコストがかさむ傾向があります。
急ぎの資金調達でスピードを重視する場合はビジネスローン・ファクタリング、余裕があるなら金利の安い日本政策金融公庫・補助金・助成金・信用金庫を活用しましょう。自社の経営状況や資金調達までの猶予期間などを考慮して、資金調達手法を選ぶのがおすすめです。
資金調達時に注意するポイント
資金調達時に注意するポイントは以下の3つです。
- キャッシュフローの悪化
- 返済不能に陥る
- 株式の希薄化
資金調達は会社の経営改善や成長のために必須の手段ですが、リスクがある点に注意が必要です。
リスクをあらかじめ知っておくか、知らないまま資金調達をするかでは大きな差が生まれます。リスクを理解したうえで資金調達を行い、失敗する確率を減らしましょう。
キャッシュフローの悪化
資金調達コストが高いと、キャッシュフローが改善するどころかかえって悪化しかねません。資金調達の多用で返済と利子が積み重なり、資金の流れが悪くなるからです。
悪化したキャッシュフローを改善するためには、資金繰り表を作成する・在庫を減らす・ファクタリングを活用するなどの方法が考えられます。
返済不能に陥る
返済不能に陥らないように、事業計画・返済計画・資金計画は綿密に作成しましょう。
資金調達しても、うまく経営状況が改善せず返済が追いつかなくなる恐れがあります。
返済不能状態に陥らないためには、安定した利益が上げられるベースを作り、リスクを最小限に抑えたうえで借入をするなどの工夫が大切です。返済できなければ利子などの手数料が増え続けてしまうため、業績不振になった場合でも返済ができるかを確認しておくのも重要なポイントです。
株式の希薄化
株式の希薄化で、経営権が弱くならないように注意しましょう。
資金調達手法で株式を発行した場合、経営者の所有割合が減少してしまうため経営権が弱くなる恐れがあります。
株式の希薄化に陥らないためには、株式発行による資金調達に頼りすぎず分散して資金調達するのがおすすめです。
複数ある手法から最適なものを選んで資金調達を成功させよう
資金調達手法にはさまざまな種類があり、デットファイナンス・エクイティファイナンス・アセットファイナンス・その他の資金調達手法の4種に大別されます。適切な資金調達手法は、事業形態や自社の経営状態などによって異なります。
すでに事業を始めていて経営が安定している状態であれば、数多くの資金調達手法の中から自由に選択が可能です。しかし、開業前や創業してすぐの会社の場合は、信用力もなく利用できる資金調達手法は限られます。本記事で紹介した資金調達手法の中から、最適な資金調達方法を模索しましょう。
また経営状況が悪化してしてから資金調達を試みても、資金調達しづらく条件が不利になる可能性が考えられます。そのため、余裕のあるうちに適切なタイミングを見計らって資金調達するのが大切です。本記事で紹介した「資金調達を成功させるためのポイント」「資金調達時に注意するポイント」などを参考にしつつ、経営の安定・事業の拡大のために資金調達を成功させましょう。