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ベンチャー企業やスタートアップ企業におすすめの「返済不要」な資金調達方法をご紹介します。
こんにちは、ベストファクターの四ツ柳と申します。
創業前の企業や創業間もない企業は、業績がないことや事業がまだ軌道に乗っていないこともあり、起業や事業拡大、設備投資の十分な資金が得られないケースも少なくありません。
審査、金利で有利な創業融資で資金調達する方法もありますが、融資以外にも資金援助を受けるという選択肢もあります。
今回は返済不要の資金援助のメリット・デメリットや成功事例について解説します。
記事の目次
革新的なプランへの資金援助「ベンチャーキャピタル」
ベンチャーキャピタル(VC)は、将来の成長が見込まれるベンチャー企業やスタートアップ企業など未上場企業に対して出資を行う投資機関です。ハンズオンと呼ばれる成長支援や経営力強化を行うことで企業価値の向上を図り、キャピタルゲインを得ることを目的としています。
未上場企業側が自社の成長性や市場の発展性をVCに認められれば、スタートアップから数千万~数億円の多額の資金を調達することができます。
VCには銀行や証券会社、保険会社などの金融機関が運営する「金融系VC」をはじめとして、事業会社や商社、通信企業などの「事業系VC」、自治体や産業革新機構、日本政策金融公庫などの「政府系VC」、さらには関連企業を持たず資金調達を独自に行う「独立系VC」などがあり、投資対象や資金原資の違いがあります。
VCのメリット
VCから出資を受けられるということは、すなわち事業の将来性が見込まれているということに他ならないため、以後の資金調達がしやすくなります。さらに、ハンズオンで企業経営者や投資家といった百戦錬磨の経営のプロから具体的な成長支援が受けられます。
VCのデメリット
VCの大きな特徴であるハンズオンの内容によっては、これまでの事業戦略の変更を余儀なくされる場合もあり、VCと経営者の間で衝突が起きることも少なくありません。また、事業の成長が見込めないと判断された場合は、事業の大幅転換や支援の打ち切りとなる場合もあります。
VCの成功事例
日本でVCからの資金援助で成功事例として、スマホアプリの「メルカリ」のケースが代表的です。
2013年2月に創業した株式会社メルカリは、2014年3月に独立系VCの「グロービス・キャピタル・パートナーズ」から初期投資を受け、2015年には黒字化を達成。2016年3月には総額84億円の資金調達を実施して、日本で初めて評価額が10億ドルを超すユニコーン企業となりました。
2018年には6月にメルカリは東京証券取引所マザーズへの新規上場を発表、時価総額は約7,172億円となり、マザーズの時価総額ランキング2位のミクシィにと3倍以上の差をつけています。
参考:https://japan.cnet.com/article/35121102/
個人投資家からの資金援助「エンジェル」
エンジェルとは、創業間もない企業や起業家に資金援助をして、その見返りとして株式や転換社債を受け取る個人投資家のことです。金融機関やベンチャーキャピタルに比べて投資する金額は少ないものの、ビジネス面でのバックアップ、人脈、経営アドバイスなど新しい形の支援を行っています。
エンジェル投資家と起業家は専用のマッチングサイトを通じてつながることができます。日本では「Founder」や「Angel Fund」などが知られています。
エンジェルのメリット
エンジェル投資家は元起業家が多いため、資金面だけでなく精神面でも、その知恵やアドバイスを事業に活かすことができます。さらに、エンジェル投資家の幅広い人脈やコネクションを活用して、事業の成長を積極的にサポートしてくれるでしょう。
エンジェルのデメリット
エンジェル投資家の存在が資金面・精神面で大きな支えとなる一方、会社経営に深く介入してきて窮屈な思いをする場合もあります。さらに、エンジェル投資家の株の所有率が多く、創業者の比率があまりにも低いと、事業を進めていくうえで問題を抱えるほか、会社売却のメリットが十分に受けられないことにもなります。
エンジェルの成功事例
海外のエンジェルで有名なエピソードに、創業間もないアップルコンピュータへ投資したマイク・マークラの事例が知られています。マークラはアップル株式の3分の1を買い占めて二代目の社長やCEOを含む重役を務めました。アップルコンピュータが法人化し、大企業へと発展したのは彼の手腕によるものが大きいという見方もあります。
独創的なプロジェクトへの資金援助「クラウドファンディング」
クラウドファンディングとは、アイデアやプロジェクトを実現したい企業や個人が起案者となり、専用のインターネットサイトを通じて不特定多数の個人から出資を募る資金調達方法です。一般のユーザーは魅力を感じたプロジェクトに少額から出資を行い、その見返りに起案者の商品やサービスを受け取ります。
当初は社会貢献事業に関するプロジェクトが主流でしたが、現在では中小企業の活動や事業に対するファンドが増えつつあります。クラウドファンディングには購入型、寄付型、投資型、融資型の4種類があり、もっともスタンダードで手続きも簡単なのが購入型です。
最近では東京都の「クラウドファンディングを活用した資金調達支援」など、政府や自治体が中小企業の創業や商品・サービスの創出を支援して地方経済を活性化しようという動きもあります。
さらに、支援者はプロジェクトに共感した「ファン」でもあるため、クラウドファンディングは資金調達に加えて新規顧客の獲得という側面にも注目が集まっています。
クラウドファンディングのメリット
クラウドファンディングは、インターネットで全世界に情報を発信して広く支援者を募ることができます。InstagramやTwitterなどのSNSを利用すれば、プロジェクトの情報をより広く拡散することも可能です。
さらに、クラウドファンディングは完全成功報酬型なので、支援者を募る段階で手数料が発生しません。プロジェクトに魅力があれば、事業経験や資金力に関係なくだれでもプロジェクトを発案することができます。
クラウドファンディングのデメリット
クラウドファンディングで資金を集められるかどうかは、起案者の熱意やプロジェクトの魅力をユーザーに伝えられるかどうかにかかっています。多くのユーザーの共感が得られなければ、どれだけ素晴らしいプロジェクトであっても資金を集めることはできません。
さらに、専用サイトでプロジェクトページを魅力的に見せるためには、画像や動画を作成したり、SNSで積極的に呼びかけたりする必要があります。リターンが現物の商品である場合は配送の必要もあるため、目標額を達成するまでにかかるコストは決して安いものではありません。
クラウドファンディングの成功事例
片渕須直監督・脚本、MAPPA制作の長編アニメーション映画『この世界の片隅に』は、「片渕須直監督による『この世界の片隅に』のアニメ映画化を応援」というプロジェクト名で、クラウドファンディングサービス「Makuake」にて公開されるや、わずか8日で目標金額の2,000万円を達成しました。
目標達成後の2016年11月に映画本編が公開され、世界各国30か国以上で上映されています。クラウドファンディングで集まった資金は、映画の製作費やスタッフの人件費などに利用されました。
最終的に募集金額は3,900万円、支援者数は3,300人を超え、2015年当時のクラウドファンディング市場で最高記録を達成しています。
参考:http://konomanga.jp/interview/29799-2
国や自治体からの資金援助「助成金・補助金」
助成金は主に厚生労働省が雇用促進や人材育成のため、補助金は主に経済産業省が新規事業や、創業促進、さまざまな国策を促進するために実施している制度です。
いずれも申請すればすぐにお金が受け取れるというものではなく、「公共の利益となり得るか」という公益性が求められるため、一定の条件や申請、審査が必要となります。
たとえば、東京都の創業助成金(東京都中小企業振興公社)は、都内で創業を予定している、または創業後5年未満の中小企業者等のうち、創業のモデルケースになりうる対象者に対し、交付決定日から1年以上2年以下を対象期間として、賃借料、広告費、従業員人件費等の助成対象となる経費の2/3以内が交付されます。
助成対象期間に資金援助が受けられるほか、期間終了後も助成金・補助金の運営者から継続的な支援を受けられる場合があるため、積極的に利用していきましょう。
助成金・補助金のメリット
助成金は原則通年で申請可能で、業種や社員数など条件に合致していればほぼ交付されるため、難易度は低めです。一方の補助金は助成金よりも種類が豊富で経費の適用範囲も広く、支給額は数百万~数億円と助成金に比べて大きくなっています。
助成金・補助金のデメリット
いずれも制度の性質上、資金援助は「後払い」となるため、必ず自社負担が発生します。たとえば、助成金制度の対象となる人材育成では、人件費や育成のための費用がかかるため、ある程度の先出しの資金を準備しておく必要があります。
さらに、公募期間が短く(年に数回)、支給されるまでに時間がかかるというのも制度の特徴です。助成金や補助金の受け取りを希望するなら、国や自治体のホームページ、あるいは「ミラサポ」などのポータルサイトの情報を常にチェックしておきましょう。
助成金・補助金の成功事例
静岡県にある原田精機株式会社は、航空機や人工衛星などの高精度な技術力を要求される精密部品の設計・試作開発・製造を一貫して手がける会社です。
同社は、これまで開発してきた惑星探査用車両をベースに、インターネットを介した遠隔操作システムの試作開発プロジェクトで成果を挙げ、遠隔操作システムの商品化やレスキュー現場での新たな製品ニーズを生み出しました。
この一連のプロジェクトは中小企業庁の平成21年度ものづくり中小企業製品開発等支援補助金の事例の一つとして掲げられています。
参考:https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/sapoin/monotsukuri/download/seikajireisyuu.pdf
返済不要の資金援助に関するQ&A
返済不要の資金援助に関するQ&Aについて、よくある質問にQ&A形式でお答えします。
- Q.ベンチャーキャピタルの「ハンズオフ」にはどのような特徴がありますか?
- A.VCの「ハンズオフ」はハンズオンの逆で、資金援助をして経営に口を出さない手法のことです。経営の方針を変更する必要がないというメリットがある一方、上場のスピードや変革が遅くなるというデメリットもあります。
- Q.調達希望額が高いとエンジェル投資家とのマッチングは難しくなりますか?
- A.調達希望金額が1,000万円を超えるくらいになると、かなり難易度が上がります。なぜなら、1,000万円規模の出資が可能なエンジェル投資家が少ないことや、
エンジェル投資家によるリスク評価が厳しくなることが理由です。
- Q.クラウドファンディングで目標達成額に届かない場合は全額を返金する必要がありますか?
- A.クラウドファンディングのサービス会社のルールには、集めた分だけ調達の「All in」と全額返金調達ゼロの「All or Nothing」の2種類があります。利用する予定のサービス会社のホームページ等で確認しましょう。
- Q.助成金や補助金は何度も申請できますか?
- A.一般的には可能ですが、同一の公募についての複数申請は制限される場合もあります。
- Q.資金援助以外、融資以外で資金調達ができる方法はありますか?
- A.遊休資産の売却やファクタリングなどが挙げられます。詳しくは融資以外の資金調達でご確認ください。
融資以外の資金調達はファクタリングも有効
ベンチャー企業やスタートアップ企業におすすめの返済不要の資金援助をご紹介しました。
今回挙げた資金援助の中でも、VC、エンジェル、クラウドファンディングは創業資金、事業資金が不足している場合でも、革新的・独創的な事業であれば高額な資金を調達できる可能性があります。
当然ながら確実に資金援助が受けられるというわけでもないため、援助が受けられなかった場合の資金調達を想定しておかなくてはなりません。
ベンチャー企業やスタートアップ企業は、比較的審査に通りやすい創業融資が受けられますが、融資に頼りたくない場合や無借金経営を貫きたい場合は、ファクタリングという選択肢もあります。
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