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余裕を持って経営を行うためには、一般的に月商の3ヶ月分の現預金をキープすることが重要とされています。
しかし、会社を運営していくための運転資金が不足しはじめ、ついには現預金が底を尽きるまでの期間が短くなると「資金繰り悪化」の状態です。
経営者は通常、営業や商品開発といった売上に直結する本業に注力していることが多く、資金繰り悪化の兆候をつかめないまま、突然お金が足りなくなったことに焦ってしまいます。
「気づいたときには、すでに手遅れ」にならないためにも、資金繰り悪化の原因と改善のための対策をしっかり把握して、日頃から準備しておくことが大切です。
今回は資金繰り悪化の主な原因を7つ取り上げ、経営者が取り組むべき改善のための具体的な方法を解説します。
記事の目次
資金繰り悪化の原因
資金繰り悪化の原因は、「会社に入ってくるお金が少なくなる」と「会社から出ていくお金が多くなる」の2つに大別されます。
たとえば、「売上の急増」は資金繰りを悪化させる原因のひとつですが、材料の仕入れ費用の増加、人員追加のための人件費の増加、水道光熱費の増加など、「会社から出ていくお金が多くなる」からこそ、資金不足が引き起こされます。
これらを踏まえ、中小企業や個人事業主にありがちな資金繰り悪化の原因を見ていきましょう。
会社に入ってくるお金が少なくなる
資金繰りが悪化する原因のひとつである「会社に入ってくるお金が少なくなる」要因には、おもに以下のようなものが挙げられます。
- 売上の減少
- 売掛金の不良債権化
- 支払サイトの長期化
ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
売上の減少
売上が減少すれば会社に入ってくる資金が少なくなるため、当然ながら資金繰りが悪化します。
たとえば、今般の新型コロナウイルス感染症の影響により、営業自粛や事業活動の休止・閉鎖を余儀なくされ、今期の売上が大幅に減少した事業者の方も多いのではないでしょうか。
売上が減少する理由には、新型コロナウイルス感染症のように突発的に起こるものもあれば、商品が旬を過ぎて新規顧客の獲得数が減っていくなど、徐々に売上に影響を与えるものもあります。
売掛金の不良債権化
商取引では、商品やサービスを先に納入、後から代金を受け取る「掛取引」が一般的です。代金の支払いは翌月末や翌々月末、業種によっては半年~1年以上後という場合もあるでしょう。
代金を回収する前に売掛先(取引先、クライアント)が倒産すれば、売掛金が不良債権化して回収不能となってしまい、会社に入ってくる資金が減少します。
なお、決算書上では黒字決算のはずなのに、売上を回収できないことで資金ショートに陥り、自社が倒産してしまうことを「黒字倒産」と言います。
支払サイトの長期化
支払サイトとは、売掛先に商品やサービスを納入した後、代金を受け取るまでの期間のことです。前述した通り、商取引では代金が支払われるまでに1ヶ月以上の期間を要します。
この支払サイトが長ければ長いほど運転資金の回転が悪くなり、事業継続の見通しが立たなくなったり、最悪の場合は倒産したりするリスクがあります。
会社から出ていくお金が多くなる
「会社から出ていくお金が多くなる」要因には、おもに以下のようなものが挙げられます。
- 売上の急増
- 在庫の増加・過剰在庫
- 過剰投資・投資の失敗
- 業績悪化時の固定費削減の遅れ
ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
売上の急増
売上が急増すると、代金が支払われる前に仕入れコスト等の経費の増大が先に来るため、資金繰りの悪化、ひいては黒字倒産を引き起こすリスクがあります。
たとえば、原価率30%、月の売上3,000万円のA社が大口顧客から月9,000万円の仕事を受注、売上代金9,000万円の入金が90日後だとしましょう。支払い期日までの間、A社は仕入れコストの3,000万円に加え、人件費や水道光熱費が発生し続けることになります。入金までに資金が不足すれば、A社は倒産に陥ってしまいます。
売上が倍増すれば、その売上を生み出すためのコストも増えることになるため、とくに大口の案件は慎重に検討しなければなりません。
在庫の増加・過剰在庫
製品在庫を多めに持つことには、急な大口の受注にも対応できる、欠品の心配がないといったメリットがあります。その反面、在庫維持費の増加、品質劣化や陳腐化といったデメリットもあります。
また、過剰在庫を処理する場合には、値下げして廉価販売するか、それでも売れ残ったら廃棄しなければなりません。当初見込んだ売上や利益が得られないばかりか、投入した資金の回収もできないため、損失が発生して資金繰りの悪化を招いてしまいます。
過剰投資
新しい店舗を展開する、何年かに1度は機械や車両を新しくするというように、事業継続には投資が欠かせません。
しかし、その設備投資が売上・利益を生み出す投資でないと過剰投資になります。
現金で投資して回収できなければ現金が減少しますし、借入やリースで購入すれば負債が増加して結果的に資金繰りが悪化します。
業績悪化時の固定費削減の遅れ
会社の費用は、売上の増減にかかわらず必ず発生する「固定費」と売上の増減で変動する「変動費」に分けられます。
固定費・・・人件費、地代家賃、水道光熱費、接待交際費、リース料、広告宣伝費、減価償却費など
変動費・・・原材料費、仕入原価、販売手数料、消耗品費など
業績の悪化に伴うコスト削減を検討する際、優先すべきは固定費の削減です。固定費は売上の増減にと連動しないため、固定費を減らしてもただちに売上には影響が出ません。
しかしながら、業績が悪化しているのに固定費をそのままにしておくと、「入ってくるお金が少なくなったのに、出ていくはお金そのまま」という状態になり、資金繰りが悪化します。
資金繰りを改善させる具体的な方法
資金繰りが悪化したときに経営者が取り組むべき具体的な対策をご紹介します。
仕入先への支払いを遅くしてもらう交渉をする
売上の入金よりも支払いが先に来ているために資金繰りが悪化している場合は、仕入先に支払いを遅くしてもらう交渉をしましょう。
仕入先への支払い日は、契約時に両者の合意のもとで決められるため、後から変更することは容易ではありません。しかし、資金繰りの悪化により資金ショートが目前に迫っているのであれば、しっかりと状況を伝えましょう。
最もやってはいけないことが、黙って放置することです。何の連絡もせずに仕入先への支払いが遅れたりすると、これまで築いてきた信頼関係が一瞬にして崩れてしまいます。
経費を削減する
業績が悪化したときは、固定費の削減を優先しましょう。
たとえば、業務の一部を外注化(アウトソーシング)したり、役員報酬を減額したりすることで、固定費を削減することができます。
経費削減は、会社にかかっているコストを把握するところから始まります。従業員・部門ごとにコストを把握・見える化することで、会社が一丸となって経費削減の足並みを揃えることができます。
借入金返済のリスケ
資金繰りが悪化したときに、金融機関と交渉して借入金の返済条件を変更し、元金の返済を減らしてもらうことをリスケ(リスケジュール)と言います。
たとえば、「月50万円返済×残12ヶ月」の借入金を、「月25万円返済×残24ヶ月」にリスケすれば、返済期間が長くなって返済総額は大きくなるものの、月々の返済額はこれまでの半分となり、負担を減らすことができます。
金融機関は「この会社はいま資金繰りが苦しいが、一時的に返済を減額して資金繰りを立て直せば、将来的には全額を返済ができるだろう」と判断すればリスケに応じてくれます。
交渉の際には、資金繰り表や返済計画書で実現可能性の高い返済計画を提示しましょう。
不要な資産を売却する
抱えすぎてしまった在庫や事業用に使う見込みのない資産などは、売却して現金に変えてしまいましょう。売れない、使わない資産に管理費などのコストを支払い続けるよりも、早期に資金化して運転資金に回せば、資金繰りの改善につながります。
さらに、不要な資産を売却することは自己資本比率を向上させることにつながり、結果的に金融機関の融資の審査で有利に働きます。
融資を受ける
金融機関が「将来的に必ずや経営を改善してくれる」と判断すれば、資金繰りが悪化している会社でも、融資を受けられる可能性は十分にあります。
返済のリスケと同じように、審査の際には資金繰り表や返済計画書、事業計画書などを用いて、返済と資金繰り立て直しのプランを提示しましょう。
また、借り換えローンを利用することで、毎月の返済額を減らしたり、利息・返済総額を減らしたりすることもできます。
ファクタリングで入金前の売掛金を資金化する
ファクタリングは、入金前の売掛金(請求書)をファクタリング会社が買い取り、所定の手数料を差し引いた買取代金を振り込むサービスです。
支払サイトの長い売掛金であっても、ファクタリングを利用すれば最短即日で資金調達ができます。
ファクタリングには、大きく分けて「3社間ファクタリング」と「2社間ファクタリング」の2種類があります。
3社間ファクタリングは売掛先の同意が必要になるため、最短即日の資金調達は難しくなりますが、手数料が債権額面の2%~9%と低めです。
2社間ファクタリングは売掛先の同意が不要なため、ファクタリング会社の審査に通過すれば、最短即日で売掛金を資金化できます。ただし、手数料は債権額面の5%~20%と高めです。
手数料や入金スピード、売掛先との関係を考慮して、自社にとってベストなファクタリングを選びましょう。
経営者が自社の資金繰りを把握しておくことが重要
経営者が自社の資金繰りの管理をしていないことも、資金繰りの悪化を深刻化させる原因の一つです。経営のトップが資金繰りを把握していないと、資金ショートが目前に迫っているにもかかわらず、気づいたときにはすでに手遅れという場合もあります。
日頃から経営者自身が資金繰り表を作成、管理していれば、資金繰り悪化の兆候を早期に発見して、具体的な対策を講じることができます。
資金繰り表の作り方やテンプレートについては、こちらの記事をご参考ください。
資金繰り悪化と改善する方法に関するQ&A
資金繰り悪化と改善の方法に関して、よくある質問とその回答をQ&Aにまとめました。
- Q.資金繰り悪化の兆候にはどんなことがありますか?
- A.資金繰り悪化の兆候にはさまざまありますが、中小企業や個人事業主にありがちなこととして、「売上アップを狙って大口の案件を受注した」「借入金の返済が遅れがちになっている」「運転資金や納税資金を借入でまかなわないと支払えない」「資金繰りのことが頭から離れず、本業に集中できない」といったことが挙げられます。経営者一人で悩むのではなく、取引のある金融機関や公的な相談窓口にて相談されることをおすすめします。
- Q.資金繰りショートを未然に防ぐには、具体的にどのような対策を行えば良いのでしょうか?
- A.資金繰りを悪化させないための大前提として、日頃から経営者が自社の資金繰りを把握しておくことが大切です。経営者が自ら、資金繰り表やキャッシュフロー計算書などを作成・管理して会社の資金の流れを把握していれば、資金繰りが悪化する兆候を早期に発見して、早めの対策を講じることができます。
- Q.資金繰り表の作り方を教えて下さい。
- A.資金繰り表は月単位、週単位、日単位といった一定期間において、会社のお金の流れを表す書類です。とくに決まった形式はないため、表計算ソフトやインターネットの無料テンプレートをダウンロードすることで作ることができます。弊社サイトでは資金繰り表のテンプレートを無料で配布しておりますので、そちらをご利用ください。 >>「資金繰り表の作り方」について詳しく見る
資金繰り悪化の応急処置はファクタリングが有効
資金繰り悪化の原因と改善のための具体的な方法について解説しました。
売上の急増や支払サイトの長さが資金繰り悪化の一端であれば、ファクタリングによる早期資金化をおすすめします。
ファクタリングで資金繰りを改善するポイントは、審査が柔軟で経営支援が充実しているファクタリング会社を選ぶことです。
ベストファクターは柔軟審査を信条としており、平均買取率92.2%という業界でも高い水準を維持しています。さらに、ファクタリングをご利用のお客様には、経営課題に即した財務コンサルティングをご提供いたします。
資金繰りや資金調達についてのお悩みは、ぜひベストファクターにご相談ください。