資金繰りと経理の効率化
資金繰り返済のしすぎは危険な3つの理由。利益返済との違いは?
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企業は設備投資をしていかないとなかなか発展しません。設備投資には先立つもの=資金が必要ですが、資金を事業で得た利益で賄えれば理想です。しかし、資金が潤沢にある一部の会社を除けば、金融機関からの借り入れに頼らざるを得ない部分もあります。

今回の記事では「利益返済」と「資金繰り返済」という、2種類の借入金の返済方法について、詳しく解説しましょう。

利益返済と資金繰り返済の違い

最初に、利益返済と資金繰り返済の基本的な違いについて理解しておきましょう。

利益返済とは

利益返済とは、税引後利益を使って借入金を返済することです。利益償還とも言います。

利益返済では会社の現金が減らない

利益返済を続けている限りは、会社の現金は減りません。よりわかりやすくするために具体例を用いて説明しましょう。

仮に、毎月利益を出している会社が金融機関からの借入金について、毎月10万円ずつ利益返済をしていた場合の資金の動きは以下のようになります。

利益 借入金返済額 現金残高
前月繰越額 200万円
4月 30万円 10万円 220万円
5月 40万円 10万円 250万円
6月 20万円 10万円 260万円
7月 50万円 10万円 300万円

資金繰り返済とは

一方、資金繰り返済とは、利益以外の資金を使って借入金を返済することです。資金繰り償還とも言います。

資金繰り返済では会社の資金が減っていく

資金繰り返済を続けていると、会社の資金がどんどん減っていきます。利益返済の場合と同じように、具体的な数字を用いて説明しましょう。

仮に、毎月赤字続きの会社が金融機関からの借入金について、毎月10万円ずつ利益返済をしていた場合の資金の動きは以下のようになります。

利益 借入金返済額 現金残高
前月繰越額 200万円
4月 ▲30万円 10万円 160万円
5月 ▲50万円 10万円 100万円
6月 ▲30万円 10万円 60万円
7月 ▲50万円 10万円 0万円

わかりやすくするために極端な例を用いましたが、7月には手元資金がゼロになってしまいます。この場合、銀行から借り入れをしないと、仕入資金すら確保できません。当然、借入金返済額は増えてしまうため、一層資金繰りは厳しくなるでしょう。

借入金の用途により返済方法は異なる

銀行などの金融機関から借り入れを受ける際は、借り入れた資金の用途によっても、返済方法は異なります。返済計画にも大きく関わってくることなので、基本的な部分を押さえておきましょう。

設備資金の場合は利益返済

借り入れた資金を設備資金に回す場合は、利益返済を行うのが基本となります。例えば、以下の目的で使う場合が該当すると考えましょう。

  • 社内のパソコン・机・電話などの事務用品を新しくする
  • 工場に新しい機械を導入する
  • 社用車を買い替えて新車にする

運転資金の場合は資金繰り返済

一方、日々の事業に必要な資金=運転資金に使うために借り入れをした場合は、資金繰り返済を行うのが一般的です。例えば、以下の目的で資金を使った場合が該当すると考えましょう。

  • 商品の仕入に使う
  • 従業員に給料を払う
  • 事務所の通信費・光熱費などを払う

資金繰り返済のしすぎは危険な3つの理由

既に触れた通り、資金繰り返済には会社の資金を減らす効果があります。このため、運転資金を返済するなどの理由がある場合を除き、なるべくなら避けたほうが無難です。より細かくしましょう。

理由1.内部留保が減る

資金繰り償還には、企業の内部留保を減らす働きがあります。内部留保とは、企業が生み出した利益から税金や配当、役員報酬などの社外流出分を差し引いたお金で、社内に蓄積されたものです。

企業は内部留保を使って仕入をしたり、研究開発・設備投資・戦略投資を行ったりします。しかし、資金繰り償還を行いすぎると、内部留保が減っていくため、仕入や研究開発・設備投資・戦略投資を縮小せざるを得ないのです。

結果として、企業活動のスケールがどんどん小さくなり、利益も減っていくという悪循環に陥ります。

理由2.借入金が増える

資金繰り償還を続けている限り、手元の資金はどんどん流出していきます。そのため、企業は事業継続のために必要な資金を確保すべく、銀行などの金融機関からの借り入れを検討するでしょう。

しかし、資金繰り償還に頼らざるを得ないというのは「慢性的に事業で利益が出ない状態に陥っている」ということです。新たな借入金もいずれは枯渇する可能性が高くなります。結局、どこかのタイミングでまた新たな借り入れを行わなくてはいけません。

わかりやすくいうと「借金を返すために別のところから借金をする」という自転車操業のような状態に陥るのです。

理由3.資金がショートする

「借金を返すために別のところから借金をする」という状態は、お金を貸してくれるところがあるから成り立つ話です。銀行などの金融機関もずっとお金を貸してくれるわけではなく「返済してもらえる可能性が低い」と判断した時点で、融資をストップさせ、これまで融資した額の一括返済を求めてくるでしょう。

ここまで来ると、取引先への買掛金、従業員への人件費、他の金融機関への返済などの支払いもできません。つまり、資金がショートして倒産に至るのです。

資金繰り返済をなるべくしないための3つの工夫

資金繰り返済を続けていると、最終的には会社が倒産するという最悪の事態に至りかねません。そのため、なるべく資金繰り返済をしない工夫をしましょう。具体的にやるべきことを3つ、紹介します。

日々資金繰り管理を厳格に行う

日々の資金繰り管理は厳密に行いましょう。個人事業主だとなかなか難しいかもしれませんが、できれば日次の資金繰り表を作るのが理想です。資金繰り表を作成することで、借入金の返済が資金繰り返済にあたるのか、利益返済にあたるのかを把握できるようになります。

資金繰り返済が続いている場合は、できる限り早期に利益返済に転換できるよう「売上をアップさせる」もしくは「毎月の費用を減らす」ための施策を講じましょう。また、売掛金の回収漏れが起きていないかも、念のために確認すると効果的です。

投資計画を慎重に検討する

仮に、事業が順調だったとしても、資金繰り返済に頼らざるを得なくなる事態は考えられます。代表的なケースが「設備投資をしたものの、当初予想した通りの収益が上がらない」です。

設備投資をして増えた分の利益で、設備投資に使った資金の返済ができればそれに越したことはありません。しかし、当初の予想が外れ、収益がなかなか上がらなかった場合は、内部留保や借入金を使って返済する羽目になります。

設備投資を行う際は、慎重な検討を重ねた上で実行に移すようにしましょう。特に、以下のポイントは意識するようにしてください。

  • 会社が現状抱えている経営上の課題に沿った投資案件を選ぶ
  • 投資に対して十分なリターンが得られるかを吟味する
  • 投資案件が決定したら、具体的かつ綿密な資金計画の作成を行う
  • 国・地方自治体が実施している補助金・助成金制度を活用する

なお、国・地方自治体が実施している補助金・助成金制度には毎年変更があります。制度自体の実施の有無、支援内容については、関係省庁のWebサイトを確認しましょう。税理士に相談するのも効果的です。

据置期間を活用する

据置期間とは、元金の返済が発生しない期間のことです。据置期間の間は利息だけを支払えば構いません。

どんな事業であっても、創業したり、新しい設備を導入したりしたばかりの間は、なかなか利益は出ません。利益が出るまでには、数ヶ月から1年程度かかると考えましょう。このため、据置期間を設け、利益がでるようになってから元金の返済も開始するようにすれば、資金繰り返済をしなくて良くなります。

創業したり、新しい設備を導入したりする際は「いつごろから利益が出せそうか」を慎重に見極めましょう。

なお、創業したり、設備を導入したりする際に、日本政策金融公庫の各種融資制度を使う人も多いかもしれません。主な融資制度について、据置期間も含めた情報をまとめました。

融資制度 利用対象 融資限度額 融資期間(据置期間)
新創業融資制度 新たに事業を始める人、または事業開始後で税務申告を2期終えていない人 3,000万円(うち運転資金1,500万円) 各融資制度に定める返済期間以内
新規開業資金 新たに事業を始める人、または事業開始後おおむね7年以内の人 7,200万円(うち運転資金4,800万円) 設備資金:20年以内(2年以内)運転資金: 7年以内(2年以内)
女性、若者/シニア起業家支援資金 女性または35歳未満か55歳以上で新たに事業を始める人、または事業開始後おおむね7年以内 7,200万円(うち運転資金4,800万円) 設備資金:20年以内(2年以内)運転資金: 7年以内(2年以内)
マル経融資(小規模事業者経営改善資金) 商工会議所、商工会または都道府県商工会連合会の実施する経営指導を受け、商工会議所等の長の推薦を受けた人 2,000万円 設備資金:10年以内(2年以内)運転資金: 7年以内(1年以内)
経営環境変化対応資金 売上が減少するなど業況が悪化している人 4,800万円 設備資金:15年以内(3年以内)運転資金: 8年以内(3年以内)

引用元:日本政策金融公庫「融資制度一覧から探す」

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  • 売掛先との取引内容履歴の確認事項
  • 売掛先との契約書類
  • 発注書、納品書、請求書など
  • 身分証明書
  • 登記簿贈本(履歴事項証明書)
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