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企業活動においてキャッシュフローが重要と聞いたことはあっても、意味や重要性がわからない方は多いと思います。
キャッシュフローとは一言でいうと、事業運営におけるお金の流れのことです。企業の支払いは現預金から行われるからこそ、手元にお金を残す必要があるのです。
本記事では、キャッシュフローの意味・考え方・種類などを網羅的に解説します。また、キャッシュフローを改善する6つの方法についてもお伝えします。
キャッシュフローを理解して、長期的に健全な運営を続けられるようにしましょう。
記事の目次
キャッシュフローの意味
キャッシュフローとは、事業運営におけるお金の流れのことで「キャッシュ = お金」「フロー = 流れ」の意味です。
企業へキャッシュが入ることを「キャッシュイン」、反対に出ていくことを「キャッシュアウト」と表します。具体例を下記にまとめました。
キャッシュインの例 | キャッシュアウトの例 |
商品やサービスを提供した代金を回収する | 商品やサービス提供に必要な仕入代金などを支払う |
金融機関から借入をする | 金融機関へ返済をする |
資産を売却して現金化する | 従業員に給料を支払う |
企業が長期的に安定した運営を続けていくには、キャッシュインを増やして「すぐに動かせるお金」を手元に確保しておく必要があります。
こうしたキャッシュの動きを項目別に記録したものをキャッシュフロー計算書と言います。
キャッシュフローはなぜ重要か
キャッシュフローを把握しておくと会社の倒産は未然に防ぎやすくなります。
前提として、利益とキャッシュは異なります。利益そのものは「収益 - 経費」で算出される儲けの部分を指しますが、あくまで会計上の概念です。将来的にはキャッシュに変わりますが「すぐに使えるお金かどうか」といった違いがあります。
ではキャッシュフローがなぜ重要かというと、すべての支払いは現預金で行われるからです。
仕入れ先への支払い・金融機関への返済などは自分の預金口座から先方の預金口座にお金が動きます。そのため、お金が手元になければ支払いができません。逆にいうとキャッシュさえ手元にあれば支払い続けられるので、会社は存続できるのです。
そのため、自社のキャッシュフローを把握した上でキャッシュを手元に残しておく必要があります。
キャッシュがあれば黒字倒産は回避しやすくなります。黒字倒産とは、会計上は黒字になっているのに手元の資金が枯渇して倒産することです。
基本的に企業間の取引では、月末締め翌月末払いなどキャッシュの形に変わるまでのタイムラグが生じるのが一般的であるため、黒字倒産は起こりやすいのです。
キャッシュフロー計算書の項目は4種類
キャッシュフローの項目は下記の4種類です。
- 営業活動によるキャッシュフロー
- 投資活動によるキャッシュフロー
- 財務活動によるキャッシュフロー
- フリー キャッシュフロー
それぞれの特徴を見ていきましょう。
1.営業活動によるキャッシュフロー
営業キャッシュフローとは、本業のビジネス活動において生まれるお金の流れのことです。
下記のような項目が、営業キャッシュフローに該当します。
- 商品を販売して得たお金
- 商品の仕入れで支払ったお金
- 広告・宣伝などの活動で支払ったお金
- 従業員の給料など人件費の際に支払ったお金
また、法人税の支払いなど、投資活動・財務活動に該当しないものも営業キャッシュフローに計上します。
営業キャッシュフローがプラスであれば、事業が順調に進んでいると解釈できます。
直説法
直接法とは、営業活動によるキャッシュフローを総額で捉えて表示する方法です。
「営業キャッシュフローを取引別に示す」ことを目的にしています。主要な取引は下記のとおりです。
- 営業収入
- 仕入支出
- 人件費支出
- その他の営業支出
これらを項目ごとに計算してキャッシュフローの総額を算出します。
直接法は収入・支出を個別に合算するため、キャッシュの増加・減少を細かく把握できます。しかし、個別に算出するまでの作業が煩雑であり、企業であまり採用されていないのが現状です。
後ほど紹介する間接法との違いは、営業キャッシュフローの増減額を導き出す過程です。どちらも最終的には同じ金額になります。
間接法
間接法とは、損益計算書をベースにキャッシュが動いた部分を調整して表示する方法です。
「営業キャッシュフローの金額と損益計算書の利益がなぜズレているのか」を示すことが目的です。
以下に調整項目をまとめました。
- 減価償却費
- 受取利息
- 支払利息
- 固定資産売却益
- 売上債権の増減額
- 棚卸資産の増減額
- 仕入債務の増減額
これらを利益から各種税金を差し引く前の「税引前当期純利益」から、キャッシュを伴わない項目・来期にキャッシュが動く項目を調整していきます。
間接法のメリットは作成が簡単な点です。損益計算書をベースにするため、新しく資料を作成する必要がありません。デメリットは取引ごとのキャッシュフローが把握できない点です。
2.投資活動によるキャッシュフロー
投資キャッシュフローとは、企業が将来的に成長していくための投資活動におけるお金の流れのことです。
下記のような項目が、投資キャッシュフローに該当します。
- 投資有価証券の取得時に支払ったお金
- 投資有価証券の売却時に得たお金
- 固定資産の取得時に支払ったお金
- 固定資産の売却時に得たお金
投資キャッシュフローは、通常マイナスになります。企業が成長・拡大していくにあたって投資活動への出費は必要であり、怠ると企業が衰退していくおそれがあるからです。
投資キャッシュフローが将来の営業キャッシュフローのプラスにつながると言えます。
3.財務活動によるキャッシュフロー
財務キャッシュフローとは、財務活動におけるお金の流れのことです。
企業にとって営業・投資は、どちらも欠かせない活動です。しかし、営業でキャッシュは生まれますが投資ではキャッシュが出ていってしまいます。このとき必要になるのが財務活動です。
下記のような項目が、財務キャッシュフローに該当します。
- 金融機関からの借入による収入
- 金融機関への返済による支出
- 社債の発行による収入
- 社債の償還による支出
- 株式発行による収入
- 配当金の支払いによる支出
財務キャッシュフローがプラスであれば、資金調達をしている・マイナスであれば返済していることを表します。投資活動を支える費用であり、優良企業ほど財務キャッシュフローがプラスになっている傾向にあります。
4.フリーキャッシュフロー
フリーキャッシュフローとは、企業が自由に使えるお金のことです。
「営業キャッシュフロー + 投資キャッシュフロー 」で算出された金額がフリーキャッシュフローです。
企業が長期的に安定した経営を続けられるかどうかは「フリーキャッシュフローがどれだけ潤沢に手元に残っているか」にかかっています。
例えば、自由に使える現金が多ければ、金融機関への返済・社債の償還などで負債を減らせます。負債が少なくなれば、然るべきタイミングで設備投資・株式投資などが行えるのです。また、現金が足りない場合も資金調達を容易に実行できます。
フリーキャッシュフローが多ければ経営の自由度は増し、事業拡大のチャンスを掴みやすくなります。
各財務三表の違い
財務諸表とは通称決算書と呼ばれるものです。財務三表とは、キャッシュフロー計算書・貸借対照表、損益計算書の3つの書類を指します。
基本的には1年間の企業の財務状況・経営成績を、投資家などの利害関係者に報告するために作成するものです。これらの書類を参考に、自社へ投資をするか・融資をするかなどの判断をされます。
財務三表は、上場企業には作成が義務付けられていますが、中小企業・個人事業主は作成する必要がありません。
しかし、自社の経営状況を把握しておくため、財務三表の作成は望ましいです。
それでは、貸借対照表・損益計算書について解説します。
貸借対照表(B/S)
貸借対照表とは、企業の一定期間内の財産・調達方法を把握できる表のことです。
資産・負債・純資産の3つの項目で構成されており、企業がどのような財産(資産)を持ち、その財産の元となるお金(負債・純資産)をどうやって集めたかを把握できます。
貸借対照表を分析すれば、資金面・運用面から経営状況の改善が可能です。
損益計算書(P/L)
損益計算書とは、企業の一定期間内にいくら売上・支払いがあり、いくら利益があったのかを示す書類です。
収益・費用・利益の3つの項目が記載されており、企業がどのような理由で・どれほど売上が上がり・どのくらい儲けているかを把握できます。
損益計算書を見れば、1年間の成績が把握できるため収益性の分析に役立ちます。
キャッシュフローの考え方
キャッシュフローは企業のお金の増減を表しますが、プラスである必要はありません。
例えば、事業拡大による仕入れの増加・大規模な設備投資などの場合は、一時的にキャッシュフローがマイナスでも将来的にプラスに転じる可能性があるからです。そのため、一概にマイナスだと経営悪化を起こしているとは判断できません。
理想的なキャッシュフローとは「営業活動で十分にキャッシュが入り、企業の成長につながる活動に回している状態」です。
キャッシュフローには企業の状況を表す8タイプがありますので、後ほど詳しく解説します。
キャッシュフローを改善する6つの方法
キャッシュフローを改善する方法は、以下の6つです。
- 経費を削減する
- 不良在庫を処分す
- 資産を売却する
- 売掛金の回収を早める
- 事業用のクレジットカードを利用する
- ファクタリングを利用する
それぞれの方法を見ていきましょう。
1.経費を削減する
まずは、資金調達などの対策の前に削減できる経費がないか確認しましょう。
無駄なコストの洗い出し方は、下記のとおりです。
- 自社の支出をすべて洗い出す
- 重要度の低い項目を一旦削除する
- 得られる効果が上回りそうであれば一旦採用する
- 具体的にコスト削減の目標値を設定する
- 目標と照らし合わせながらプランを実行する
上記のサイクルを常に回し続けることでフリーキャッシュフローの増加が期待できます。
2.不良在庫を処分する
不良在庫とは将来的に売れる見込みのない在庫のことです。在庫が増えてきているようであれば、仕入内容を見直して処分を検討しましょう。
適正な在庫数を見つけるには、まず1ヶ月〜3ヶ月おきなど期間を決めて棚卸しをします。棚卸しとは社内にある在庫を数えたり価値を確認したりする作業のことです。
一定期間内おきに棚卸しをしておくと「過去に売れた数が3個だったのに、今は在庫が20個ある」など、売れない商品を把握しやすくなります。
売れる見込みがない在庫は処分をして「廃棄損」として経費計上しましょう。
在庫を保有したままだと「棚卸資産」に計上されて不良在庫に対して課税されますが、「廃棄損」になれば利益を圧縮できるので節税効果につながります。
3.資産を売却する
利用していない資産を売却したお金で資金調達を行えば、企業の資金繰りに充てられます。
資産とは、企業が保有しているすべての財産のことです。短期間に出入りする「流動資産」・長期間において出入りがない「固定資産」・一旦資産として計上した後、数年間にわたって償却する「繰延資産」の3種類があります。
それぞれの具体的な項目を下記にまとめました。
流動資産 | 固定資産 | 繰延資産 |
・現金 ・預金 ・商品 ・原材料 ・未収金 ・立替金 ・受取手形 |
・土地 ・建物 ・車 ・機械 ・営業権 ・商業権 ・借地権 ・保証金 ・投資有価証券 |
・開業着 ・社債発行費 |
上記の中には保有しておくと維持費がかかる項目もあります。売却してキャッシュに変えておけば、企業の将来の支出に対してお金を備えられます。
4.売掛金の回収を早める
先に商品やサービスを提供して後日代金をもらう掛取引では、売掛金を早く回収できるよう務めるのが重要です。
先に支払う金額が多くなると、手元のキャッシュがすべて先払いに充てられてしまいます。例えば、入金日が90日後の取引であれば、売上原価の3倍の金額を先払いしていることになります。
このように先払いが多い状態は資金が潤沢にあれば成立しますが、そうでなければ資金ショートを引き起こすリスクがあるのです。資金ショートとは手元のキャッシュが不足して、運転資金が足りなくなる現象のことです。
売掛金の回収を早める方法は下記の2つがあります。
- 新規の取引先に契約の段階で早めの入金日に設定しておく
- 現在の取引先へ支払いを早められないか交渉する
現在の取引先への交渉は断られる可能性もあります。相談する際には、割引などのメリットを提示するのも1つの手です。
5.事業用のクレジットカードを利用する
事業用のクレジットカードを利用して、支払日をなるべく遅らせましょう。
資金繰りを改善するには「出金は遅く、入金は早く」のサイクルをつくることが重要です。クレジットカードであれば支払いを1ヶ月〜2ヶ月遅らせられるので、手元のキャッシュを確保しやすくなります。
6.ファクタリングを利用する
売掛金の入金までに支払日を迎えてしまう場合は、ファクタリングを利用するのも1つの選択肢です。
ファクタリングとは、企業の保有する売掛債権を売却して早期に現金化する資金調達方法の1つです。請求書を発行するタイミングで売却できるので、売掛金の回収を本来の入金日よりも30日〜60日早められます。
ただし、銀行融資などの利息に比べてファクタリング手数料は高めに設定されています。手数料は業者によって異なりますが1%〜20%程度です。
同じ売掛債権でもファクタリング会社によって手数料が異なるため、利用の際は相見積もりを取りましょう。
キャッシュフローのよくある質問
ここではキャッシュフローについてよくある質問に回答します。
キャッシュフロー計算書のひな形はありますか?
あります。キャッシュフロー計算書のひな形は、中小企業庁の会計ツール集にて無料でダウンロードできます。
入力の流れは下記のとおりです。
- 「会計ツール集のダウンロード[Excel]」をクリック
- シート⑨の【キャッシュ・フロー計算書の簡易作成ツールの入力の仕方】で入力方法を確認
- シート⑦の【キャッシュ・フロー計算書を自動的に作成したい方へ】に数字を入力
項目の入力を終えたら、次に紹介する8パターンのどれに該当するかチェックしてみてください。
キャッシュフローにはどのようなパターンがありますか?
キャッシュフローには下記の8パターンが存在します。
タイプ | 営業キャッシュフロー | 投資キャッシュフロー | 財務キャッシュフロー |
安定タイプ | + | + | + |
改善タイプ | + | + | ー |
積極タイプ | + | ー | + |
優良型タイプ | + | ー | ー |
要注意タイプ | ー | + | + |
やや注意型タイプ | ー | + | ー |
勝負タイプ | ー | ー | + |
事業検討タイプ | ー | ー | ー |
このうち、理想的なキャッシュの流れと言われているのは「優良型タイプ」です。営業活動で十分なキャッシュを得ながら、企業の成長につながる活動にお金を充てられている状態を表しています。
反対に避けたほうが良いのは「要注意タイプ」です。キャッシュが十分に得られず、投資・資金調達が行えない財務状況に陥っており、目先の資金繰りを注視すべき企業だと言えます。
自社がどのパターンに該当しているか確認してみましょう。
財務コンサルティングサービスありのファクタリングを検討しよう
キャッシュフローの計算が苦手な方は、財務コンサルティングサービスありのファクタリングサービスの利用がおすすめです。
前述したように、ファクタリングは売掛金を早期回収できる資金調達サービスです。当サイトを運営している弊社ベストファクターは、ファクタリング利用者に向けた無料の財務コンサルティングサービスを提供しています。
具体的には貸借対照表の分析・資金繰りに関するアドバイスなど、資金調達と同時に財務体質の改善を目的としたサポートも行います。
自社のキャッシュフローにお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度ベストファクターにご相談ください。