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資金繰りコンサルタントとは、中小企業が抱える資金繰りや経営の課題を解決するために、経営者の右腕となってサポートする人のことです。
では、経営者が資金調達や金融機関との交渉について、資金繰りコンサルタントに相談したいと思ったら、どうやって自社の課題とマッチングする相手を探せば良いのでしょうか?
今回は、資金繰りコンサルタントの選び方、優良業者を見極める方法を解説します。
記事の目次
資金繰りコンサルタントとは
コンサルタント(consultant)とは、「ある分野について、クライアントの相談に乗って、解決策を提案する人」のことです。
資金繰りコンサルタントと言う場合には、資金繰りに困っている経営者の相談に乗り、深い知識と経験に基づいた解決策を提案、資金調達や経営改善などの支援を行う専門家を指します。
- 経営改善計画の提案
- 資金調達の提案
- 金融機関との交渉
- 書類作成の代行・支援
資金繰りの改善策は、会社の数だけあると言っても過言ではありません。たとえば、経費削減だけで資金繰りが改善する場合もあれば、事業再生まで視野に入れた抜本的な改善が必要な場合もあります。
そのため、資金繰りコンサルタントはリスケや資金調達のサポートのみならず、クライアントの事業運営を活性化させ、利益を生み出して黒字化させるまでを目的として支援を行います。一般的に、月商の3ヶ月分以上のキャッシュがあれば、財務状況が健全化すると言われています。
資金繰りコンサルタントの契約形態
資金繰りコンサルタントの契約形態には、主に「顧問契約」「スポット契約」「プロジェクト契約」の3つのタイプがあります。
顧問契約
顧問契約とは、月額でコンサルフィー(コンサル料金)を定め、継続的に相談が受けられる契約形態です。
コンサルタントが月に1~2回のペースで定期的に会社を訪問したり、経営者がコンサル会社に来社したりして、長期にわたって経営全般に関して支援を受けられます。
顧問契約を結んだコンサルタントは、言わば意思決定のない経営幹部ですので、経営顧問や社外取締役に就任することもあります。
コンサルタントが経営全般を支援する場合の費用相場は、月に1~2回程度の訪問で月額20万~50万円程度です。
プロジェクト契約
プロジェクト契約とは、ある一定期間内にゴールを達成するための契約形態です。事業再生と黒字化という最終的なゴールを目指し、コンサルタント、弁護士、税理士等の専門家がチームを編成し、短期集中でサポートを行います。
料金は、サポート内容、目指す成果、参加する人数、目標までの期限などにより、ケース・バイ・ケースです。
たとえば、コンサルの時間単価が1万~5万円として、3ヶ月間で事業再生と黒字化を目指すプロジェクトの場合、費用総額は500万円以上かかることもあります。
スポット契約
スポット契約とは、1時間単位や1日単位といった時間制で、対面もしくは電話やオンライン会議アプリ等を利用した単発形式の契約形態です。
文字通り「スポット的」なコンサルティングとなるため、大手コンサル会社よりも、比較的小規模のコンサル会社や個人事業主のコンサルが、この形式での契約を引き受けています。
コンサルフィーは、1時間あたり3万円~が相場です。
優良な資金繰りコンサルタントの選び方
契約形態で見たとおり、コンサルフィーは決して安いコストではありません。
資金繰りのコンサルはコンサル会社等に依頼することになりますが、コンサルタントの良し悪しは結局のところ、「人」です。
優良な資金繰りコンサルタントは、以下の基準で選びましょう。
実務経験が豊富か
まずは、コンサルの実務経験が豊富にあることが重要です。
実務経験が不足している、あるいはブランクがあると、現場をイメージした改善計画を提案することができません。
また、コンサルタントは、自社と同じ業界以外の実務経験が豊富な人を選びましょう。
偏った業種での実務経験しかないコンサルタントでは、安心感はあっても経営を総合的に見たてることはできません。
優良コンサルタントは、異業種の成功事例を知っていることが付加価値のひとつですので、他業種の実務経験があると、同業者では発想できないような新しい考え方、アイデアを提案してくれるでしょう。
理論的な知識と知恵が備わっているか
感覚と経験だけでは、良いコンサルタントとは言えません。
それらはもちろん重要ですが、理論的な知識がなければ、幅広い業種の経営改善の道筋を、事前に仮説検証することができないからです。
成功体験が豊富なだけでなく、その経験を理論化し、普遍化するところまでできているコンサルタントは、業種が変わっても応用が効きます。
さらに、理論的な知識が知恵にまで昇華されているコンサルタントは、本質がわかっているため、経営者に伝わらないような専門用語や横文字をむやみに使いません。
そのようなコンサルタントは、自分を大きく見せようとしていたり、経営者に対して「上から目線」であったりする可能性があります。
もし、コンサルタントの著書やブログなどがあれば、そちらを確認するもひとつの手です。
人格者か
資金繰りコンサルタントは、その実績や知識に注目が集まり、人柄は二の次にされがちですが、信頼できる優秀な人格を備えているかは、コンサルタントである以前の最低条件です。
どれだけ実績が豊富で頭の良いコンサルタントであっても、資金繰りに困っている経営者や会社を下に見ているようでは、現場の従業員も経営改善に向けてモチベーションが高まりません。
人格者であるコンサルタントは、自信があるだけではなく、謙虚さも持ち合わせています。自信があるコンサルタントほど、「わからないこと」「できないこと」ははっきりと言い、謙虚な姿勢で経営者と向き合うものです。
さらに、短期間であっても資金繰り改善、経営改善という共通の目標に向かって歩んでいくパートナーであるからこそ、「この人とは相性が良さそうだ」という経営者の直感は重要です。コンサルを依頼する前に、経営者自身がコンサルタント本人と会って、人柄や相性を確かめましょう。
こんな資金繰りコンサルタントには要注意!
中小企業の経営者が資金繰りコンサルタントを探す場合、信頼できる人や取引のある銀行から紹介してもらうケースもあれば、最近はネット検索に頼るケースもあります。
ネットを活用すれば、実績が豊富なコンサルタントを探すことも比較的容易にできますが、ネットの情報には嘘や誇張も含まれます。
ここでは、注意すべき資金繰りコンサルタントの特徴について解説します。
大げさな数字で実績をアピール
「コンサル成功率99%」や「年間1,000件以上の実績」など、目立つ数字で実績をアピールするコンサルタントは少なくありません。
仮にこの数字が本物であったとしても、コンサルは何を持って成功とするかは、クライアントが抱える課題によって違いますし、何をコンサルの実績とするかも曖昧です。
数字だけで判断するのではなく、具体的なコンサルの導入事例やサポート内容、コンサルタントの著作やブログなども確認するようにしましょう。
肩書や資格を誇張
コンサルタントのプロフィールを見ると、「元銀行員」といった肩書や、税理士や中小企業診断士といった資格などが掲載されています。
肩書や資格はコンサルタントを選ぶにあたって重要な情報であることは確かですが、それだけでは自社が抱える課題を解決してくれるかどうかまではわかりません。
課題を解決してくれるコンサルタントかどうかは、肩書や資格だけではなく、メールや電話で問い合わせて、こちらの質問に誠実に対応してくれるかどうかで見極めましょう。
相談の段階でも、会社の業績や総資産額、金融機関からの借入状況など、具体的な数字を持って伝えることが大切です。
資金繰りコンサルタントに関するQ&A
資金繰りコンサルタントに関して、よくある質問とその回答をQ&Aにまとめました。
- Q.資金繰りコンサルに相談する際は、相談料がかかりますか?
- A.多くのコンサル会社は、電話やメールでの相談を無料としています。自社の課題を解決してくれるようなコンサルタントを見つけるためにも、複数のコンサル会社、個人事務所に連絡をして相談することをおすすめします。
- Q.銀行リスケの交渉のサポートだけをコンサルに依頼することはできますか?
- A.質問のケースの場合なら、プロジェクト契約で1~2週間の期間、コンサルを利用することになるでしょう。プロジェクト契約とは、ある一定期間内にゴール(=この場合は銀行リスケ)を達成するための契約形態です。 >>「プロジェクト契約」について詳しく見る
- Q.資金繰りに困窮して手元にキャッシュがないのですが、コンサルは利用できますか?
- A.完全報酬型のコンサルに相談しましょう。相談料や着手金がかからず、コンサルフィーは資金繰りが改善して経営が黒字化してはじめて支払います。
コンサルタントの良し悪しが経営改善のカギ
コンサルタントという業種は、望まれる肩書や資格はあっても、免許制や登録制ではないため、実績や人柄などで総合的に判断する必要があります。
自社の抱える課題について、誠心誠意サポートしてくれる良いコンサルタントもいれば、資格や肩書を笠に着て中小事業者を下に見るようなコンサルタントもいます。
経営の改善、3ヶ月の黒字化といった目標を達成するためには、豊富な実績や知識はもちろん、「信頼できるかどうか」「自社に合っているかどうか」という判断基準も重要です。
コンサルタントの実力は、紹介者の評判やネットの情報だけではわかりません。
複数のコンサルタントの中から候補を見つけ、実際にコンサルタント本人と会って話しましょう。顔つきや雰囲気、服装、話を聞く姿勢なども重要です。そのうえで「この人なら、自社の抱える課題を解決してくれる」という人を見つけたら、サポートを依頼すると良いでしょう。