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企業の資金繰り状況を指し示す「売掛金回転期間」をご存知でしょうか?
売掛金(売掛債権)の回収に要する期間を表す指標であり、売掛金と受取手形を合わせて「売上債権回転期間」という指標を用いることもあります。
売掛金回転期間を把握することは自社の経営課題を明らかにし、なおかつ的確な対策を講じることが可能となります。
今回は売掛金回転期間の計算方法や見方、長期化している場合の具体的な対策について解説します。
記事の目次
売掛金回転期間とは
売掛金回転期間は、売掛金がどれくらいの期間で回収できるかを表す指標です。受取手形も含める場合は売上債権回転期間と言います。
会社の資金繰りを管理するにあたっては、売掛金がどのくらいの期間で回収されるのかを把握しておくことが大切です。
売掛金回転期間が「短い」とは
売掛金回転期間は短ければ短いほど、短期間で売掛金が回収できており、資金繰りも健全な状態と言えます。
売掛金回転期間が「長い」とは
売掛金回収期間は長ければ長いほど、会社の資金繰りへの負担が大きくなります。
さらに、売掛金は期日が到来すれば支払いを受けることができますが、必ずしも全額回収できるとは限りません。債務者たる取引先が倒産した場合には、その一部もしくは全額が回収不能となる可能性もあります。
売掛金回転期間の計算方法
売掛金回転期間は次の方法で計算します。
上記は年数での計算方法ですので、資金繰り等に有効に利用するためには「月数」もしくは「日数」で表す必要があります。
月数で表す売掛金回転期間の計算方法
たとえば、年間売上高3,600万円、期末売掛金600万円の会社の売掛金回転月数は次のとおりです。
売掛金回転月数 = 600万円 ÷ (3,600万円 ÷ 12) = 2
この例では、売掛金の回収に平均して2ヶ月を要していることを表しています。
日数で表す売掛金回転期間の計算方法
たとえば、年間売上高3,600万円、期末売掛金600万円の会社の売掛金回転日数は次のとおりです。
売掛金回転月数 = 600万円 ÷ (3,600万円 ÷ 365) = 60.8
この例では、売掛金の回収に平均して約60日を要していることを表しています。
売掛金回転期間の見方
自社の売掛金回転期間を算出できたら、次に同業他社の数値や自社の過去の数値と比較しましょう。
同業他社の売掛金回転期間と比較
売掛金回転期間および受取手形も含めた売上債権回転期間は、業種によって異なります。
売掛先のほとんどが消費者であり、現金払いが多い飲食業や小売業は相対的に売掛金回転期間が10~日と短めです。一方、売掛先のほとんどが法人であり、決済手段として受取手形が使用されることの多い卸売業や製造業は売掛金回転期間(売上債権回転期間)は60~80日と長くなる傾向があります。
したがって、自社の売掛金回転期間が正常か否かを判断するには、売掛先や決済手段といった条件が揃った同業他社の平均値との比較が必須です。
同業他社の平均より短い場合は正常な入金サイトで回せていると判断できますが、平均よりも1ヶ月以上長い場合には、資金繰りに問題が生じています。売掛金の管理方法や回収方法の見直しといった具体的な対策を講じましょう。
自社の過去の売掛金回転期間と比較
自社の過去の売掛金回転期間と比較して、現在の資金繰りが健全化どうかを探る方法です。
会社経営を続けていると、時期によって売掛金回転期間が変動することは珍しくありません。
過去5~10年の決算書で年間売上高、期末売掛金を見て、その時点での売掛金回転期間を算出してみましょう。過去から現在までの自社の売掛金回転期間の推移を把握することができます。
過去と比べて売掛金回転期間が長くなっていれば、自社の資金繰りが悪化していることは明確です。
また、前述の同業他社との数値とも比較して、現時点での数値が許容できる範囲内か、それとも早急に対策を講じる必要があるのかを検証しましょう。
売掛金回転期間が長期化する原因
ここまで見てきたように、売掛金回転期間はなるべく短いほうが好ましく、長くなると資金繰りに悪影響を及ぼします。
前年に比べて今年の回転期間が長くなっていれば、何かしらの原因が考えられます。ここでは、売掛金回転期間が長期化する原因について解説します。
入金サイトが長い取引の増加
入金サイトが長い取引先への売掛金が増えれば、それだけ売掛金回転期間も長くなっていきます。
BtoB取引では、取引先A社は納品から1ヶ月後に入金、取引先B社は2ヶ月後に入金というように、取引先ごとに入金サイトの条件を決定するのが一般的です。
たとえば、大手企業から仕事を受注したり、取引先の業績悪化で入金サイトが先延ばしにされたりすると、入金サイトが長期化する傾向にあります。
大きな売上を見込める取引であっても、入金サイトが長くなれば「黒字倒産」のリスクも高まります。
ただし、入金サイトには取引先の資金繰りの都合もありますので、自社の都合と突き合わせ、両者にとって最適な着地点を見つけることが大切です。
不良債権の増加
売掛金が不良債権化することも、売掛金回転期間を長期化させる原因の一つです。不良債権とは、回収不能あるいは回収遅延となっている金銭債権のことを指します。
債権回収のルールや取引先の与信調査があいまいな会社ほど不良債権を多く抱えている傾向にあり、結果的に資金繰りも悪化させています。
とくに売上の大半を占める取引先が倒産してしまうと、貸倒れによる損失で自社も倒産に巻き込まれてしまう「連鎖倒産」を招きかねません。
期日通りに売掛金が回収できていない場合は、取引先に督促状を送付したり、法的手段をとったりして確実に支払ってもらう必要があります。
架空売上や押込販売といった粉飾の存在
実際にあるとすれば深刻な問題ですが、自社の売上を多く見せようとして架空売上を計上すると、売掛金回転期間が長期化します。架空売上によって計上された売掛金は、いつまで経っても回収されずに残るからです。
経営業界では決算書上で売上を大きく見せかけて銀行の信用を得たり、経営審査で点が悪くならないようにしたりする目的で割と広く行われています。
また、決算上の数字を良くするために押込販売することも同様です。押込販売とは、取引先の発注よりも多く納入したり、発注されていない商品を無理やり納入したりする営業を指します。
粉飾は一時的に決算書をよく見せることはできても、結果的に売上債権回転期間を長期化させることにつながり、将来的に自社の首を絞めることになってしまいます。
売上債権回転期間を長期化させないための対策
売掛金回転期間を長期化しないための対策としては、次のようなものがあります。
売掛金の管理体制を見直す
まず取り組むべきは、売掛金の管理体制の見直しです。
売掛金回転期間が長期化の傾向にある会社では、そもそも売上・売掛金の管理体制が不十分であることが少なくありません。なかには「売掛金の状況は経営者の頭の中だけで把握している」という会社もあります。
売掛金管理においては、未回収の債権を見逃さないような体制づくりが重要となります。
たとえば、Excelなどの表計算ソフトで管理台帳などを作成、遅延している取引先を太字にする、背景色をつけておくなどは、単純でありながら見落としを防ぐには効果的です。
遅延している取引先をチェックしたら、売掛金の金額はもちろん、遅延している期間や請求状況についても確認しておきましょう。遅延期間は30日をひと区切りとして、30日〜90日程度の期間で分けて記録します。また請求状況は、電話やメールで督促をしたか、支払い計画を策定させたかなどを把握するためのものです。
たとえ売上が好調でも、代金が回収できなければ利益を得たことにならず、会社は遅かれ早かれ資金不足に陥ってしまいます。取引先が多くなるほど売掛金の管理は煩雑になりますが、会社にとっては非常に大切な業務であることを自覚して取り組みましょう。
売掛先に支払期日の見直しを交渉する
取引先と交渉して売掛金の支払期日を早くしてもらうことができれば、以前より早めにキャッシュが手に入るため、資金繰りが楽になります。
一方、取引先の立場からすれば買掛金の支払期日が早くなり、資金繰りがよりタイトになる可能性があります。先方も資金繰りに余裕がない場合は、支払期日の見直しを断られてしまいます。
したがって、支払期日の見直しの交渉に応じてもらうには、自社が提供する製品・サービスに他のものと置き換え不能な価値があり、支払期日の見直しに応じされるほどの明確なアドバンテージがあると認められければなりません。
仕入れ先に買掛金の支払期日の延長を交渉する
商品や原材料などを仕入れて、代金が未払いの債務を買掛金と言います。
仕入れ先に買掛金の支払期日を延ばしてもらうことができれば、先に売掛金を回収してから仕入れにかかった買掛金を支払うことができるため、資金繰りに余裕が生まれます。つまり、買掛金回転期間の延長は、売掛金回転期間の短縮と同じ効果をもたらすのです。
ただし、買掛金の支払期日の延長交渉は、買掛先に資金繰りの苦しい会社と見なされ、取引数の減少や停止といったリスクもあることは留意しておくべきでしょう。
売上金回転期間に関するQ&A
売掛金回転期間に関して、よくある質問とその回答をQ&Aにまとめました。
- Q.売上債権回転期間とは何ですか?
- A.売上債権とは売掛金と受取手形のことで、売上債権回転期間は、それら売上債権がどれくらいの期間で回収できているかの指標です。本記事で取り上げている売掛金回転期間とは、すなわち受取手形を含まない売掛金の回転期間を指します。
>>「売上債権回転期間」について詳しく見る
- Q.売掛金回転期間を把握することで何がわかるのですか?
- A.売上金回転期間が分かると、現金化までの月数もしくは日数はが明らかとなるため、自社の資金効率の良し悪しが分かります。売掛金回転日数は短いほどキャッシュの入金が早く、自社の資金繰りは健全な状態にあると言えます。逆に売掛金回転日数が長いほどキャッシュの入金が遅く、資金繰りに余裕がない状態ということがわかるため、長期化への対策を講じる必要があります。
>>「売掛金回転期間の見方」について詳しく見る
- Q.自社の売掛金回転期間が相対的に短いのか、長いのかはどうやって判断するのですか?
- A.売掛金回転期間は、「同業他社と比較」と「過去の自社の回転期間と比較」の2つの方法で比較します。同業他社の平均より短い場合や、過去の自社の回転期間より短くなっている場合は、現在の資金繰りは健全な状態にあると判断できます。
売掛金の早期回収にはファクタリングが有効
売掛金は期日通りに回収できてはじめて、自社の資金繰りが健全に保たれ、継続して収益を上げていく体制を維持することができます。
これまで売掛金回転期間を意識してこなかった方も、ぜひ現時点での自社の売掛金回転期間を算出して、同業他社や過去の自社の回転期間と比較してみましょう。
売掛金回転期間がわかれば自社の資金繰り状況がわかり、その状況に応じていま講じるべき対策が明らかとなります。
売掛金の入金サイトが長いことで自社の資金繰りが悪化しているのであれば、売掛金の早期資金化を可能にするファクタリングをご検討ください。
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