銀行融資やビジネスローンに代わる「借りない」資金調達方法の一つに、入金前の請求書を資金化するファクタリングがあります。
ファクタリングを利用することにより、通常であれば1ヶ月~2ヶ月先に支払われる請求書を、最短即日で資金化することができます。
しかし、実際のビジネスシーンでは、それよりも早い段階でまとまった資金が必要になるケースも少なくありません。
注文書買取サービスであれば、受注段階、つまり仕事にまだ着手していない段階での資金化が可能です。
「着手金のあてがあれば、大型案件を受注できるのに……」「仕事を始めるために必要な資金調達を借入に頼らざるを得ない」といった受注段階での資金ニーズに、注文書買取サービスを検討してみてはいかがでしょうか?
今回は注文書買取サービスの概要やメリット・デメリット、請求書買取との違いについて解説します。
注文書は商品・サービスを注文するときに発行する書類
注文書とは、商品やサービスを納入する側(納入企業、売り手)に対し、買い手側が仕事を注文・依頼する意思表示をする目的で作成される帳票です。買い手側が売り手側に発行する帳票であり、PO(purchase order)と呼ばれることともあります。
注文書には見積り時に両者で確認した「商品・サービスの内容」「数量」「金額」「納期」などの記載が必要です。
なお、実際の商取引では発注書を作成せず、口頭やメールで取引を進めることもありますが、下請法という法律では「親事業者は発注に際して、具体的記載事項をすべて記載している注文書を直ちに下請事業者に交付する義務がある」としています。
予期せぬトラブルを避けるため、また下請法違反とならないためにも、発注書は作成しておくべき書類と言えるでしょう。
注文書と発注書の違い
注文書に似た帳票に「発注書」があります。
発注書も買い手側の企業が、売り手側の企業に対して仕事を注文・依頼するときに発行する帳票で、両者に法律的な違いはありません。
ただし、企業によっては形のある物品を注文する際には「注文書」を、形のないサービスなどを注文する際には「発注書」を発行するという使い分けがあります。この場合、机やイスを注文する際は「注文書」、Webデザインや記事執筆を注文する際は「発注書」となります。
本記事では注文書と発注書は区別せず、いずれも「注文書」と表記します。
注文書と請求書の違い
注文書と請求書は、発行するタイミングや目的が異なります。
注文書は売り手側が見積もりをした後に、買い手側が商品・サービスを購入する意思を正式に伝えるために発行します。
一方、請求書は売り手側が注文書で依頼された商品・サービスを納入したとき(仕事を完了したとき)に、買い手側に支払いを求める目的で発行します。
請求書には、売り手側が買い手側に提供した「商品・サービスの内容」「価格」「数量」「支払い期日」などが記載されており、買い手側は請求書の内容に沿って代金を支払います。
業種によっては、注文書が発行されてから6ヶ月かけて仕事を完了、請求書を発行して支払いを待つというタイムラグが発生します。
注文書買取サービスの特徴
注文書買取サービスは、注文書が発行された段階で資金調達ができるファクタリングサービスのひとつです。
請求書買取のファクタリングとの違いは、資金調達が可能なタイミングです。
従来のファクタリングは、すでに納品が完了していて、入金待ちのタイミングでなければ資金調達に利用できませんでした。
しかし、資金調達にお悩みの事業者の方のなかには、受注前に手元資金がなかったがために泣く泣く大型案件の機会を逃してしまったというケースや、受注後にこそまとまった資金が必要になるケースも少なくありません。
注文書買取サービスは従来のファクタリングと比べて、受注してから仕事を完了するまでのプロセスを経る必要がないため、資金調達の時間を大幅に短縮することができます。
つまり、注文書買取サービスは従来のファクタリングよりも資金調達の期間を短縮できるという強みがあり、ファクタリングでは解決できなかった経営課題にも対応可能なサービスなのです。
請求書買取サービスのメリット
請求書買取サービスのメリットは、前述したように通常のファクタリングよりも早期に資金調達が可能なことです。
仕事を受注した段階で資金調達が可能になり、人員確保のための人件費や材料の仕入れ費用など、仕事の着手金にあてることができます。
注文書買取サービスのデメリット
注文書買取サービスは、通常のファクタリングよりも手数料が高めに設定される傾向にあります。
なぜなら、ファクタリング業者側からすると、注文書買取サービスは通常のファクタリングよりも債権回収不能リスクが高いサービスだからです。
通常のファクタリングであれば、すでに仕事が完了しており、あとは売掛先の支払いを待つだけという段階で請求書を買い取ります。
一方の注文書買取は、仕事が完了していない段階で注文書を買い取って資金提供することになるため、通常のファクタリングよりも債権回収の時期が遅くなります。
債権回収までの期間が長いということは、その間に売掛先が倒産してしまったり、利用者の資金繰りがふたたび悪化したりといったリスクに備えなければなりません。
したがって、ファクタリング業者側は万が一の債権回収不能リスクに備え、通常のファクタリングよりも手数料を上げざるを得ないのです。
注文書買取サービスの手数料は、通常の2社間ファクタリングよりも2%~5%高いくらいがめやすとなります。
注文書買取サービスを取り扱っている業者
注文書買取サービスは、請求書買取のファクタリングと比べ、まだまだ取り扱っている業者が少なめです。ここでは、2020年12月の時点で注文書買取サービスを提供している業者を紹介します。
入金スピード | 最短翌日 |
利用限度額 | 100万円〜3億円程度 |
買取手数料 | 5%〜 |
個人事業主の利用 | 可 |
必要書類 |
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ベストペイは、FinTechとして日本発の電子記録債権を活用した「POファイナンス®」等提供する電子債権記録機関であるトランザックス社より技術提供を受け「注文書買取ファクタリング」を行っています。
ペストペイは、次世代のリスク分析手法を活用する事で、債権が確定する以前の受注ベースの資金化を実現したフィンテック時代の新しい入金保証サービスです。
手数料もファクタリングと同等の「5%」という体水準。受注書をお持ちなら、仕事開始前に今すぐお金に替えることができます。
【実績豊富】ビートレーディングの「注文書ファクタリング」
入金スピード | 最短即日 |
利用限度額 | 要確認 |
買取手数料 | 要確認 |
個人事業主の利用 | 可 |
必要書類 |
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ファクタリングの実績が業界トップのビートレーディングは、2020年11月より注文書ファクタリングのサービスを開始しています。
仕事を受注した段階の注文書があればファクタリングの契約を結ぶことができ、最長6ヶ月先に納品予定の案件まで買い取り可としています。個人事業主の方も売掛先が法人の注文書であれば利用可能です。
売掛先の承諾不要な2社間契約ですので、最短即日で資金調達ができ、なおかつ売掛先との信用不安も招くことがありません。さらに、仕事が始まる前にまとまった資金を調達できるため、仕事の着手金として利用することができます。
手数料に関しては非公開となっているため、事前の見積もりで確認しましょう。
【一部上場】GMOペイメントゲートウェイの「GMO BtoB早払い」
入金スピード | 最短2営業日 |
利用限度額 | 買取1回あたりの合計金額が100万円以上 |
買取手数料 | 2.5%~12.0% |
個人事業主の利用 | 不可 |
必要書類 |
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東証一部上場のGMOペイメントゲートウェイは、法人向けに債権買取サービス「GMO BtoB早払い」を取り扱っています。
GMO BtoB早払いは、請求書発行段階で買い取る「請求書買取」のほか、オプションとして受注段階で買い取る「注文書買取」に対応しており、最大6ヶ月先の債権を最短2営業日で資金化が可能です。
ただし、請求書買取の手数料が1.5%〜10.0%であるのに対し、注文書買取の手数料は2.5%〜12.0%とやや高めに設定されています。個人事業主の方は利用できません。
注文書買取サービスに関するQ&A
注文書買取サービスに関して、よくある質問とその回答をQ&Aにまとめました。
- Q.注文書買取サービスを利用するにあたって、売掛先の同意は必要ですか?
- A.売掛先への通知および同意は原則として必要ありません。現状では利用者とファクタリング会社の2社間で契約します。
- Q.注文書買取サービスを利用するにあたって、登記は必要ですか?
- A.売掛先から仕事を受注した段階で売掛債権は発生しているため、2社間取引で債権を買い取ってもらう際は、原則として債権譲渡登記が必要です。ただし、現状で注文書買取サービスを提供している「ビートレーディング」と「GMOペイメントゲートウェイ」の2社は、原則として登記の省略可としています。
- Q.注文書買取サービスの手数料はいくらかかりますか?
- A.現状で注文書買取サービスを提供している「ビートレーディング」と「GMOペイメントゲートウェイ」のうち、ビートレーディングは手数料を明示していません。一方のGMOペイメントゲートウェイのGMO BtoB早払いは、注文書買取で手数料2.5%〜12.0%としています。請求書買取(2社間取引)の手数料1.5%〜10.0%と比べると、やや高めの設定です。
- Q.注文書買取サービスと請求書買取のファクタリングの使い分けについて教えて下さい。
- A.注文書買取は、仕事を開始した時点で資金調達が可能です。人件費や仕入れ費用など、受注後にかかる経費を自己資金や借入等で確保できないときに利用をおすすめします。一方、請求書買取のファクタリングは納品後の段階で資金調達が可能なサービスです。入金サイクルを早めたい場合や支払日までのつなぎ資金としての利用をおすすめします。
注文書買取は仕事を受注した段階で資金調達が可能
注文書買取サービスのメリット・デメリット、請求書買取のファクタリングとの違い、および注文書買取を取り扱っているファクタリング業者について解説しました。
通常のファクタリングは仕事が完了した後のタイミングで利用できるサービスですが、注文書買取サービスは仕事を受注した段階、つまり、仕事の開始~完了までのプロセスを一気にスキップして、資金調達が可能です。
最長で6ヶ月も資金調達のタイミングを早めることができるため、仕事の着手金が確保できないケースや、納期までの期間が長いケースなどでは、請求書買取よりも便利な資金調達方法と言えます。
一方で、手数料は請求書買取よりも高めに設定される傾向にあります。仕事を受注するたびに注文書買取を利用していては、遅かれ早かれ資金ショートに陥ってしまいます。
注文書買取サービスは、あくまで通常のファクタリングではカバーできないケースでの利用に限定し、資金繰りを見ながら計画的に利用しましょう。