住宅ローンにかかる融資手数料はいつ支払うのか気になっていませんか?支払うタイミングがわからないと、いつまでにお金を準備しなければいけないのかわからないですよね。
この記事では、初めて住宅ローンを借入れする方も理解しやすいよう、融資手数料の内容や計算方法などを詳しく解説します。また、住宅ローンの借入れ時に発生する他の手数料についても紹介するので、あわせて参考にしてください。
本記事を読めば、融資手数料を支払うタイミングをしっかり把握できるようになります。融資手数料をいつ払うかチェックし、計画的な返済を可能にしましょう。
そもそも融資手数料とは?内容を解説
融資手数料とは、住宅ローンを借入れする際に銀行や信用金庫などの金融機関に対して支払う費用のことです。住宅ローンを組む際には金利だけでなく、さまざまな費用が発生します。融資手数料はいくつかある費用の一種です。
また、名称に関しては金融機関によって「融資事務手数料」や「事務手数料」、「取扱手数料」など異なる場合があります。「手数料」と付いているものは、基本的に融資手数料と思って間違いないでしょう。
なお、住宅ローンには2つのタイプがあります。
- 融資手数料型:保証料がほぼ0円の代わりに融資手数料が発生する住宅ローン
- 保証料型:融資手数料がない代わりに保証料が発生する住宅ローン
国内の住宅ローンは融資手数料型が一般的です。そのため、住宅ローンを組む際には融資手数料が発生すると思っておくとよいでしょう。
融資手数料の仕組み|「定額型」と「定率型」について
融資手数料の仕組みは、以下2つのタイプがあります。
- 定額型:借入れ金額にかかわらず、手数料の金額が固定されるタイプ
- 定率型:借入れ金額に一定の手数料率を乗じた金額が手数料として請求されるタイプ
定額型の場合は1回の利用につき〇万円と決まっているため、借入れ金額が小さくても大きくても融資手数料が変わることはありません。一方、定率型は借入れ金額に金融機関で定めた手数料率を乗じるため、借入れ金額が大きくなれば融資手数料は高くなります。
とはいえ、一般的に金融機関で採用されているのは定率型です。定額型は、定率型よりも住宅ローンの適用金利が高いことが多く、別途保証料がかかることがあります。総額的に見ると、定率型のほうが費用を抑えやすい傾向にあるのです。
融資手数料の計算方法
定額型の場合は、借入れ金額にかかわらず融資手数料が固定で決まっているため、細かな計算は必要ありません。
計算が必要になるのは定率型です。定率型の融資手数料を算出する式は「借入れ金額×金利」です。金利は金融機関によって異なりますが、1.5%~2.2%(税込)と設定しているところが多く見受けられます。
以下の例で、定率型の場合の融資手数料を計算してみましょう。
例)住宅ローン3,000万円を借入れる
金融機関の融資手数料の金利は2.2%式:3,000万円×2.2%=66万円
この場合、融資手数料は66万円です。仮に、住宅ローンの借入れ金額が2倍の6,000万円の場合は、融資手数料も2倍の132万円になります。このように、借入れ金額が増えれば融資手数料も比例して増えるのが特徴です。
融資手数料の相場は数万円~30万円前後
定額型の融資手数料の相場は数万円~30万円前後といわれています。金融機関によって幅が広く、10万円以上の差が生じることもあります。
ただし、手数料が安い分、保証料が高い可能性があるため注意が必要です。手数料の安さだけで選ぶのではなく、総合的に見ることが重要です。
一方、定率型の融資手数料は多くの金融機関で借入れ金額の2.2%(税込)に設定されています。1,000万円の借入れなら20万円前後、3,000万円の借入れなら60万円前後が相場です。
なお、先述したとおり定率型の場合は保証料が不要になるケースがほとんどのため、金利の高さがポイントになります。
融資手数料はいつ支払う?
融資手数料を支払うタイミングは融資が実行されるときです。
そもそも融資手数料は、住宅ローンの申し込み手続きの報酬として支払う費用であるため、住宅ローンの実行日に利用した金融機関に対して一括で支払わなければいけません。これは定額型と定率型、どちらにも共通していえることです。
融資手数料は金利のように毎月少しずつ支払うものではありません。物件の引渡しのスケジュールを把握し、住宅ローンの実行日までに融資手数料のお金を用意できるようにしておきましょう。
融資手数料だけではない!住宅ローン借入れ時に発生する費用
住宅ローンを借入れする際に発生する費用は融資手数料だけではありません。他にも、次のような費用が発生します。
- 保証料
- 印紙税
- 火災保険料・地震保険料
- その他(不動産取得税・登録免許税・不動産仲介手数料など)
住宅ローンの借入れ時にかかる諸費用の目安は物件価格の3%~10%といわれています。いずれも基本的に分割ではなく一括で支払わなければいけないため、計画的に用意する必要があります。
それぞれの詳細や支払い先、相場などを解説するので参考にしてください。
1.保証料|保証会社に支払う費用
保証料とは、住宅ローンを返済できなくなったときに、申し込み者に代わり金融機関に返済してくれる保証会社に対して支払う費用です。
そもそも、住宅ローンなどの多額の借金に、連帯保証人を立てるのは容易ではありません。そこで、保証会社が連帯保証人の役割を果たすことで、住宅ローンの利用が可能になるのです。
保証料には融資実行時に全額を一括前払いする「外枠方式」と、毎月のローン返済額の金利に上乗せして支払う「内枠方式」の2種類があります。実際に支払う保証料は、外枠方式の場合は借入れ金額の2%程度、内枠方式の場合は金利の年0.2%~年0.4%程度が目安です。
なお、保証料が0円の場合は支払う必要はありません。
保証料がほぼ0円の融資手数料型は保証会社を利用しない?
融資手数料型の住宅ローンは、保証料の支払いがないケースがほとんどです。保証会社を利用せずに住宅ローンを組んで大丈夫なのか心配になる方もいるでしょう。
しかし、融資手数料型は「保証料」を「融資手数料」に名前を変えているだけであり、同等の金額を徴収しています。
カラクリは以下のとおりです。
- 保証料型の住宅ローン:申し込み者が保証料を保証会社に支払う
- 融資型手数料の住宅ローン:申し込み者が金融機関に対して融資手数料を支払い、その中から金融機関が保証会社に対して保証料を支払う
保証料型の場合は「保証会社」が融資対象不動産に抵当権を設定しますが、融資手数料型の場合は「金融機関」が設定することになります。
保証会社が肩代わりしたら申し込み者の支払い義務はなくなる?
保証会社は申し込み者に対して、金銭の支払い請求や担保権(抵当権等)の実行が可能になります。そのため、申し込み者の支払い義務がなくなるわけではありません。
場合によっては住居を差し押さえられることもあるため、申し込み者は支払いを拒否しながら住み続けることはできません。
2.収入印紙代|税務署に支払う費用
住宅ローンを組むときに交わす契約書には、収入印紙を貼り付ける必要があります。契約書に収入印紙を貼り、消印を押すと印紙税を納めたことになります。なお、収入印紙は郵便局や法務局で購入可能です。
収入印紙の金額は、以下のとおりです。
記載された契約金額(借入れ金額) | 収入印紙代(1通または1冊につき) |
500万円超え~1,000万円以下のもの | 5,000円 |
1,000万円超え~5,000万円以下のもの | 1万円 |
5,000万円超え~1億円以下のもの | 3万円 |
1億円超え~5億円以下のもの | 6万円 |
※軽減措置適用後の金額
インターネット上で住宅ローンの電子契約をした場合、収入印紙は不要になります。
引用:国税庁公式サイト
3.火災保険料・地震保険料|損害保険会社に支払う費用
多くの金融機関では、火災保険の加入を住宅ローン契約の条件としています。
火災によって住居を失っても住宅ローンの支払い義務がなくなるわけではありません。金融機関は返済が滞るリスクを防ぐため、火災保険の加入を必須としているのです。
火災保険といっても爆発や落雷、風災なども補償対象になるケースがほとんどです。しかし、地震や噴火、津波による損害には対応していないため、地震保険への加入の検討も必要になるでしょう。
地震保険は単独で加入できないため、必要と判断した場合は火災保険とセットで加入します。
なお、保険料の相場は保険期間や補償内容にもよりますが、保険期間10年の火災保険であれば数万円~十数万円です。保険料は物件の引渡し日までに支払います。
4.その他(不動産取得税・登録免許税・不動産仲介手数料など)
住宅ローンの借入れ時に発生する費用には、以下のものもあります。
諸費用 | 内容 | 相場 | 支払うタイミング |
不動産取得税 | 土地や建物を取得したときにかかる税金 | 固定資産税評価額×4% (2024年3月末までに取得した場合は税率3%) |
送付された納付書に記載された期日まで |
登録免許税 | 土地や建物などの権利関係を登記簿に記載するとにかかる税金 | 借入れ額の0.1%~0.15% (軽減措置適用後の税率) |
残金決済・引渡し時に同時に行う |
司法書士手数料 | 登記手続きを代行してもらったときに司法書士に支払う報酬 | 5万円~10万円 | 残金決済・引渡し時に同時に行う |
不動産仲介手数料 | 不動産会社を介して土地や建物を取得したときに支払う報酬 | 売買価格×3% +6万円+消費税 (売買価格400万円超えの場合) |
売買契約時と引渡し時の2回に分けて支払う |
また、新しい生活のために家電や家具の購入費用、引っ越し費用などがかかることもあるでしょう。住宅ローンを借入れする際には、細かい部分も含めて総合的に見ることが重要です。
団体信用生命保険料は借入れ時に必要ない?
団体信用生命(団信)とは住宅ローンの申し込み者が死亡または高度障害の状態になった場合、住宅ローンの返済が免除される保険です。住宅ローンは最長35年の長期的な借入れのため、ほとんどの金融機関では住宅ローンの契約時に団信への加入を必須としています。
ここで、「団信の保険料も住宅ローンの借入れ時に必要なのでは?」と思う方もいるでしょう。結論からいうと、保険料は住宅ローンの金利に含まれる形で徴収されるため、借入れ時に支払う必要はありません。
そもそも、団信の契約者は申し込み者ではなく金融機関です。申し込み者に万が一のことがあったとき、団信から金融機関へ住宅ローンの残高分が保険金として支払われます。そのため、団信の保険料は金融機関が負担します。
とはいえ、申し込み者の支払いが0円というわけではなく、保険料に相当する金額が住宅ローンの金利に含まれるのが一般的です。
融資手数料などの諸費用は抑えられる?節約する5つのポイント
融資手数料などの諸費用を抑えるポイントは、以下の5つです。
- 頭金を多めに準備する
- 複数の金融機関から住宅ローンを検討する
- 自分に適した住宅ローンを選択する
- インターネット上で電子契約する
- 火災保険の内容を確認する
それぞれ詳しく解説します。
頭金を多めに準備する
頭金(自己資金)が多ければ、住宅ローンの借入れ金額が少なく済みます。それに連動し、借入れ金額が多いほど負担になる「融資手数料(定率型の場合)」「登録免許税」「保証料」などの金額を抑えられます。
また、借入れ金額が少なければ利息も抑えられるため、毎月の支払いの負担軽減としても有効です。
複数の金融機関から住宅ローンを検討する
住宅ローンの借入れ時に発生する手数料は金融機関によって異なります。各金融機関の公式HPに手数料が記載されているため、一度確認しておくとよいでしょう。
多少面倒に感じるかもしれませんが、複数の金融機関から住宅ローンを検討することで数万円~十数万円の節約につながる可能性があります。
自分に適した住宅ローンを選択する
住宅ローンといっても手数料のタイプや保証料の有無、ローンの金利などさまざまです。どの住宅ローンがよいかで選ぶのではなく、自分に適しているかどうかで判断しましょう。
例えば、A銀行に「定率型で融資手数料が借入れ金額の2.2%とされている住宅ローン」があるとします。借入れ金額5,000万円の場合は110万円、借入れ金額1,000万円の場合は22万円の融資手数料がそれぞれ発生します。仮に、B銀行に「定額型で融資手数料が30万円の住宅ローン」があれば、借入れ金額5,000万円の人はB銀行のほうが手数料を抑えられます。
しかし、融資手数料だけで判断するのは危険です。他にも、保証料や利息なども発生するため、さまざまな要素を踏まえたうえで自分に有利となる住宅ローンを見つけることが重要です。
紙ではなくインターネット上で電子契約する
住宅ローンに関する契約書は電子化が進んでいます。電子契約できる金融機関を利用すれば、契約書に収入印紙を貼り付ける必要がありません。
収入印紙は契約書1通につき数万円かかるため、電子契約にするだけで出費を抑えられます。
火災保険の内容を確認する
住宅ローンの借入れ時には火災保険への加入が必須です。基本的なプランに加えてオプションが付いている場合、不要な補償を外すことで火災保険料を抑えられます。
例えば、ハザードマップで洪水の心配がない地域であれば、水災の補償を付けないという選択肢もあります。他にも、盗難や家財などの破損・汚損を補償するオプションがある場合は、必要かどうか一度考えてみるとよいでしょう。
また、火災保険は金融機関や不動産会社から勧められたものでなくても問題ありません。自分でいちから選ぶのもおすすめです。
融資手数料に関するよくある質問
最後に、融資手数料に関するよくある質問を紹介します。疑問や不安は残さず、すっきり解決しておきましょう。
Q1.定額型と定率型、どちらを選ぶとお得?
融資手数料だけを見ると定額型のほうがお得です。
ただし、金利も含めて考えると、借入れ金額や返済期間によっては定率型のほうがお得になることもあります。なぜなら、定額型は融資手数料が安い分、金利は定率型よりも0.1%~0.3%ほど高めに設定されているからです。
ここでポイントになるのが借入れ期間です。定額型は初期費用が抑えやすい分、短期間の借入れに適しています。しかし、金利が高いため長期的な借入れになるとお得とはいえなくなるのです。
一方の定率型は、金利が低いため完済するのに13年以上かかると、逆転して定額型よりもお得になる傾向があります。融資手数料の金額や比率は金融機関によって異なるため一概にはいえませんが、借入れ期間が長くなるほど定率型のほうが有利になります。
Q2.融資手数料型を選ぶデメリットはある?
金融機関によって金額の差が異なりやすいこと、定率型の場合は借入れ金額が大きいと融資手数料の負担が大きくなることの2点がデメリットに挙げられます。
その反面、融資手数料を支払う代わりに、借入れ金利が低く設定されているため毎月の返済額を抑えやすいところはメリットです。また、借入れ期間による融資手数料の変動を心配する必要もありません。
これらの特徴から、融資手数料型は「毎月の返済負担を軽減したい方」「借入れ期間が長くなる方」に適しているといえるでしょう。
Q3.住宅ローンは融資手数料込みで借入れできる?
融資手数料込みで借入れできる金融機関が増えてきています。
従来は住宅ローン契約にかかる諸費用は、借入れ金とは別に一括で支払うのが一般的でした。しかし、近年は柔軟に対応してくれるところがほとんどです。
ただし、融資手数料などの諸費用も含めて借入れする場合、借入れ金額が増えるため、その分の利息もかかります。また、住宅ローンは総返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)によって借入れ金額の上限を決めているため、融資手数料も含めると希望金額を借入れできない可能性があります。
Q4.フラット35を利用した場合、融資手数料は必要?いつ支払う?
フラット35を利用した場合も融資手数料は必要です。民間の金融機関と同じく、定額型と定率型の2種類から選べます。
注意点としては、フラット35は保証料が一切かからないため、融資手数料の金額が大きくなりやすいです。支払うタイミングは融資実行時なので、それまでに準備する必要があります。
Q5.つなぎ融資を利用する場合、つなぎ融資自体にも手数料はかかる?
かかります。
そもそも、つなぎ融資とは土地代や住宅建築の際の手付金など住宅が完成する前に支払いが必要な費用に対して受ける融資のことです。つなぎ融資を利用する際は事務手数料や収入印紙代がかかります。
相場はそれぞれ、事務手数料が10万円前後と収入印紙代が数千円程度です。
融資手数料を支払うタイミングを把握して計画的な返済を可能にしよう
融資手数料は融資が実行されるタイミングで支払います。支払い方法は分割ではなく、融資実行日に一括で支払うのが基本です。
また、融資実行日に支払いが必要なものは融資手数料だけではありません。登記に関する手数料(登録免許税・司法書士手数料など)や火災保険料なども一括で支払います。物件の引渡し日をしっかり把握し、スムーズに融資が実行されるよう計画的に準備しておきましょう。