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事業資金をまかなうための現金調達は、業績の良し悪しにかかわらず、経営者にとって常に大きな課題です。
手元の現金がなくなれば倒産リスクは一気に高まりますが、平常時から常に現金を用立てできる状況を作っておけば、多少売上が低下しても経営を続けることができます。
中小企業や個人事業主が現金調達を検討する場合、「資産を売って現金調達」「負債で現金調達」「株式を新たに発行して現金調達」の3つの方法があります。
今回は現金調達方法を3つのタイプごとに解説します。
記事の目次
アセットファイナンス(資産を売って現金調達)
主な方法・・・不動産担保ローン、ファクタリング、売掛債権担保融資(ABL)等
アセットファイナンス(asset finance)は、資産(asset)の信用力を用いて資金調達を行うことです。
すでに保有している資産(の一部)を売却して現金化したり、担保にして融資を受けたりすることで現金を調達します。
アセットファイナンスの代表的な現金調達方法は、不動産担保ローンです。
不動産担保ローンは不動産を担保にすることで、自社の実績にあまり左右されず多額の現金を借入れることができます。
また、アセットファイナンスで現金調達に利用できる資産は、不動産以外に売掛債権や有価証券、商品在庫などの「流動資産」があります。
回収前の売掛債権を売却して現金を調達するファクタリングは、自社の実績よりも売掛債権や売掛先企業の信用力が重視されます。
万が一、売掛債権の回収ができなかった場合や、支払期日までに売掛債権が回収ができなかった場合でもは、リスクは債権を買い取ったファクタリング会社が負担します(ノンリコース契約)。
アセットファイナンスのメリット
アセットファイナンスのメリットは、保有している資産の信用力を利用して現金調達ができることです。
銀行から融資を受けることが難しい創業前や創業して間もないタイミングでも、保有している資産を利用すれば、銀行の無担保融資を断られた場合でも融資の審査が通る可能性があります。
また、売掛債権などの資産を利用すれば、支払期日前に早期の現金化ができるため、デフォルト(債務不履行)リスクの回避にもつながります。
アセットファイナンスのデメリット
アセットファイナンスのメリットは、現金化できる資産がないと利用できないことです。
たとえ資産を保有していたとしても、工場や店舗など事業継続に不可欠な収益資産は活用すべきではありません。
また、不動産担保ローンの場合は事務手数料や印紙税、ファクタリングの場合は売掛債権の買取手数料が差し引かれるため、結果として銀行の金利よりも高い手数料を支払わなければならない場合もあります。
銀行からの借入利息は毎月払いですが、債権の売却手数料は一括して支払うため、想像以上に高い金額を取られ、現金調達のつもりが資金繰りを悪化させる要因にもなり得ます。
デットファイナンス(負債で現金調達)
主な方法・・・銀行借入、シンジケートローン、手形割引、社債発行等
デットファイナンス(debt finance)とは、借入(debt)による現金調達のことです。
代表的な現金調達には、銀行などの金融機関からの借入があります。
企業会計上では、借入は負債による現金調達を意味することから、貸借対照表(バランスシート)において負債の部に記載され、また他人資本の増加となるため、借入は返済の義務を負います。
銀行借入れ以外には手形割引、社債発行などがアセットファイナンスとして扱われます。
なお、手形割引での資金調達は、売上債権である手形を利用するためアセットファイナンスのように感じるかもしれませんが、現金化した手形が不渡りになれば割引依頼人に買い戻し義務が発生します。
デットファイナンスのメリット
デットファイナンスによる現金調達のメリットは、銀行や信用金庫、日本政策金融公庫などの公的金融機関、ノンバンクなど調達先が豊富にあることです。
銀行から借り入れできなかった場合はノンバンクから借りるなど、自社の状況に合った調達先を選択できることで、効率よく現金調達ができます。
また、借入に伴う利息の支払いは税務上「損金」として処理されるため、節税効果があります。
デットファイナンスのデメリット
デッドファイナンスのデメリットは、自己資本比率が下がることです。
自己資本比率とは返済不要の自己資本が全体の資本調達の何割を占めるかを示す数値で、<自己資本÷総資本(自己資本+他人資本)>の式で算出されます。
この数値が低いと取引先や金融機関から資金力がないと判断されてしまい、企業間取引に影響したり、融資の審査に通らなかったりするリスクがあります。
また、借入には利息分を含めて返済義務が生じるため、キャッシュフローの減少が起こることもデメリットのひとつと言えます。
エクイティファイナンス(新規株式発行で現金調達)
主な方法・・・時価発行増資、株主割当増資、第三者割当増資
エクイティファイナンス(equity finance)とは、企業が株式を発行することにより株式資本(equity)を増加して事業に必要な現金を調達することです。
具体的な方法には公募による時価発行増資、株主割当増資、第三者割当増資などがあります。
エクイティファイナンスによって調達した現金は貸借対照表において資本の部に入るため、借入のように金融機関からの評価にも影響しません。
エクイティファイナンスのメリット
エクイティファイナンスのメリットは、原則として調達した現金の返済義務が無いことです。
金融機関から借入をする場合と違って利息の支払いもないため、必要な資金を無駄なく確保できます。
また、財務体質を強固にする効果もあるため、設備投資などの資金ニーズが大きいときの現金調達におすすめです。
エクイティファイナンスのデメリット
エクイティファイナンスのデメリットは、新株発行によって一株あたりの価値が薄まることです。
既存株主の持ち株の価値が下がれば、企業と株主との信頼関係が損なわれる可能性もあります。
そのため株主割当以外の方法で増資する場合は、既存株主に対する合理的な説明が必要です。
さらに、エクイティファイナンスでは株主に経営権を握られるリスクもあります。
株主には株主総会の議決権があり、株主総会では会社の経営に関係する重要な決議が行われます。
増資によって株主が株を多く保有すれば、経営に口を出される機会も多くなり、会社の支配権・経営権や配当方針に影響が出る可能性もあります。
アセットファイナンスによる現金調達方法
中小企業や個人事業主が利用できるアセットファイナンスによる現金調達方法を解説します。
不動産担保ローン
利用条件 |
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調達額のめやす | 100万円以上1億円未満 |
金利・手数料の相場 | 【銀行・信用金庫】年1%未満~10%未満
【銀行系専門業者】年2%~10%未満 【独立系専門業者】年5%~18%以下 |
現金調達までに要する日数 | 【銀行・信用金庫】1~2週間
【銀行系専門業者】3日~1週間 【独立系専門業者】3日~1週間 |
不動産担保ローンとは、文字どおり所有している不動産(土地、建物等)を担保に金融機関から借入を行うことです。
審査では申込者の信用力よりも不動産の担保価値が重視されるため、新設法人や新規事業資金、一時的な赤字決算、納税資金の不足など、融資審査で不利になる条件があっても申込者の与信に不動産の価値がプラスされます。
金融機関は融資した資金が返済されない場合に、担保として提供された不動産を売却、その代金から元金と利息を回収するため、担保の不動産に抵当権を設定します。
不動産担保ローンを扱う業者は大きく分けて銀行・信用金庫と専門業者があります。
銀行・信用金庫と専門業者の違いは「担保掛目」と「審査基準」です。
「担保掛目」とは不動産の担保評価額のことで、<不動産の評価額×担保掛目>で計算されます。銀行の場合は担保掛目70~80%が一般的ですが、専門業者の場合は80~100%のところもあります。
「審査基準」は銀行・信用金庫よりも専門業者のほうが比較的柔軟です。専門業者の場合はすでに抵当権を設定して不動産担保ローンを利用している状態でも、新たに抵当権を設定(第二抵当権)して融資を受けられます。
以上のことから、中小企業や個人事業主が不動産担保ローンで借り入れする場合は、実績が豊富で不動産に精通している専門業者を利用した方が、借入条件や調達スピードの面で有利になる場合があります。
ファクタリング
利用条件 |
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調達額のめやす | 30万円~数億円 |
金利・手数料の相場 | 【2社間取引】5~10%
【3社間取引】2~9% |
現金調達までに要する日数 | 【2社間取引】1日~3日
【3社間取引】3日~2週間 |
ファクタリングは回収前の売掛債権をファクタリング会社に売却、早期に現金化することです。
債権売却に際して売掛先企業の同意が不要な「2社間ファクタリング」と、売掛先企業の同意が必須の「3社間ファクタリング」に分けられます。
2社間ファクタリング
2社間ファクタリングは利用者・ファクタリング会社の2社で契約を結びます。
売掛先の同意が不要なため、ファクタリング会社の審査に通過すれば即日で現金化ができます。
ただし、売掛債権の回収は通常どおり利用者が行い、その際に回収した資金が別の使途に使われてしまうと、ファクタリング会社は全損リスクを追うことになります。
そのため売掛先の同意が必須な3社間取引よりも手数料が高めに設定されています。
2社間ファクタリングは銀行の系列でない独立系ファクタリング会社が得意としており、売掛先に債権売却の事実を知られたくない中小企業・個人事業主におすすめです。
3社間ファクタリング
3社間ファクタリングは利用者・ファクタリング会社・売掛先の3社で契約を結ぶファクタリングです。
売掛先の同意が必須なため、即日の現金化は難しくなります。
ただし、ファクタリング会社が直接、売掛先から売掛債権を回収するため、手数料が2社間取引よりも低めに設定されています。
銀行系列のファクタリング会社は3社間ファクタリングを必須としており、審査は銀行融資並みにより厳しいものの、9%以下の低い手数料でファクタリングを利用できます。
売掛債権担保融資(ABL)
利用条件 |
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調達額のめやす | 100万円~数億円 |
金利・手数料の相場 | 実質年率15%以下 |
現金調達までに要する日数 | 1~2週間 |
売掛債権担保融資(ABL)は、企業が保有する売掛債権や在庫などを担保とする融資です。
担保に入れられる不動産を持たない中小企業や個人事業主でも、流動資産を担保にして融資が受けられます。
売掛債権担保融資は売掛先への通知や承諾が不要なため、取引先に資金繰りが苦しいことを知られずに借入が可能です。
また、中小企業や個人事業主等が自ら保有する売掛債権や在庫を担保として金融機関から借入を行う際に、信用保証協会の流動資産担保融資保証という制度を利用できます。
保証割合80%の部分保証で根保証1年間、個別保証1年以内の保証が受けられ、保証料は1件あたり年0.68%です。
リースバック
利用条件 |
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調達額のめやす | 100万円~数億円 |
金利・手数料の相場 | 実質年率15%以下 |
現金調達までに要する日数 | 1~2週間 |
リースバックとは、企業が保有している資産をリース会社にいったん売却して、そのままリース物件として賃借するリース方式の契約のことです。
リース会社に売却して調達した現金は基本的に自由に活用でき、事業資金の確保や借入返済に充てることができます。
リースバックできる資産は自社ビルや工場といった不動産に限らず、車両、機械、情報機器、事務用機器などの動産もあります。
資産が什器や車両などの動産しかなく、事業継続にはそれらが必要だが、現金調達も行いたいというときには、リースバックを検討してみてはいかがでしょうか。
その他資産の売却
利用条件 | 現金化できる資産を所有していること |
調達額のめやす | 資産による |
金利・手数料の相場 | 資産による |
現金調達までに要する日数 | 資産による |
事業用に購入したものの、利用していない不動産や動産があれば、売却して現金化するのこともひとつの現金調達の手段です。
現金化できる資産には保養所、研修施設、寮・社宅、遊休地などの不動産、有価証券、ゴルフ会員権、リゾート施設会員権などの動産が挙げられます。
さらには、独占販売権、営業圏、特許・商標などの無形資産も売却して現金化できます。
質入れ
利用条件 | 質入れできる財産を所有していること |
調達額のめやす | 10万円~1,000万円 |
金利・手数料の相場 | 月1~2% |
現金調達までに要する日数 | 1日 |
質入れとは、ブランドのバッグや腕時計、ジュエリー、貴金属などを質屋に預け、その代わりに現金を借り入れることです。
預かり期限までに元金と利息を返済すれば、質に預けた品物は返却されます。
また、金融機関からの借入と違い、返済できなかった場合は預けた品物が質屋に引き取られる(質流れ)ため、返済できなくなっても品物を失うだけで済みます。
経営者が個人の財産を質入れして、調達した現金を事業資金として使用するケースも多く見られます。
ただし、経営者が個人の財産を質入れして得た現金を事業資金に立て替えた場合、会計処理で「事業主借」として帳簿に記載しなければなりません。
デットファイナンスによる現金調達方法
中小企業や個人事業主が利用できるデットファイナンスによる現金調達方法を解説します。
銀行借入
利用条件 |
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調達額のめやす |
【プロパー融資】上限なし 【信用保証付き融資】無担保最高8,000万円、有担保最高2億8,000万円 【カードローン】最高1,000万円 【フリーローン】最高500万円 |
金利・手数料の相場 | 【プロパー融資】年2.0〜9.0%
【信用保証付き融資】年3.0~5.0%(+保証料) 【カードローン】年3.0〜15.0% 【フリーローン】年5.0〜10.0% |
現金調達までに要する日数 | 2~3週間 |
デットファイナンスでもっともポピュラーな方法が銀行借入(ローン)です。
事業資金を銀行から無担保で借入れる方法には、大きく分けてプロパー融資、信用保証付き融資、カードローン、フリーローンの4種類があります。
プロパー融資
プロパー融資とは、銀行が100%リスクを負担して直接融資することです。
信用保証付き融資のように保証料を支払う必要がなく、また融資額にも上限がありません。
さらに、一度プロパー融資を受けることができれば、次回もプロパー融資を利用できる確率が高くなります。
プロパー融資を受けられるということは、銀行から「この事業者は貸し倒れのリスクが少ないだろう」と信頼を得ていると言えます。
信用保証付き融資
信用保証付き融資とは、信用保証協会から保証を受けて銀行から融資を受けることです。
万が一、借主の返済が滞った場合は信用保証協会が借主に代わり、いったん「立て替え払い」を行います。その対価として、借主は信用保証協会に所定の信用保証料を支払うことになります。
ただし、保証付融資で借りられる金額には上限があります。
無担保保証の場合は8,000万円、有担保保証の場合は2億8000万円までが保証の対象となるため、それ以上の融資を受けることはできません。
保証を利用する際には、法人代表者が連帯保証人になる必要があります。
カードローン
カードローンは極度額(枠)の範囲内で繰り返し借入・返済ができるローン商品です。
プロパー融資や信用保証付き融資など、初回に一括して借り入れて後は返済するだけの融資を「証書貸付」と呼ぶのに対し、カードローンのように繰り返し使える融資を「当座貸越」と言います。
もともとは銀行以外のクレジットカード会社や消費者金融会社などが主として取り扱うローン商品でしたが、近年では銀行も独自のカードローンを提供しています。
プロパー融資や信用保証付き融資と比べて金利が高く、融資額も1,000万円以下の小口利用が基本です。
そのため、一時的な資金不足を補うつなぎ融資、つなぎ資金としての利用が適しています。
フリーローン
フリーローンは使途が自由のローン商品で「多目的ローン」とも呼ばれています。カードローンとは異なり、初回に一括して借入れるタイプの証書貸付です。
おもに地方銀行や信用金庫が営業区域内の個人および個人事業主に対して提供するローン商品であり、メガバンクでは取り扱いがありません。
基本的には個人向けのローン商品であるため事業性資金に使うことはできませんが、個人事業主向けのフリーローンであれば事業性資金として使用できます。
ノンバンク借入
利用条件 | 申込者の返済能力や信用状況に問題がない |
調達額のめやす | 50万円~1,000万円 |
金利・手数料の相場 | 【カードローン】年5.0~18.0%
【フリーローン】年3.5~18.0% |
現金調達までに要する日数 | 即日~3日以内 |
銀行から借入ができなかった場合に、信販会社や消費者金融会社などのノンバンクから借りる方法があります。
ノンバンクの借入は極度額(枠)の範囲内で繰り返し使えるカードローンと、事業性資金として自由に使えるフリーローンがあります。
審査が比較的柔軟で、現金調達までに要する日数も最短即日~3日以内とスピードに優れています。
ただし、銀行よりも金利が高めに設定してあるため、無計画な借入は資金繰りを圧迫させる要因となります。
ノンバンクを利用する場合は、売上入金や補助金・助成金等のまとまった現金の入金が予定されていて、その期間のつなぎ資金として少額を短期で借りる方法がおすすめです。
日本政策金融公庫
利用条件 | 各サービスによる |
調達額のめやす |
【一般貸付】最高4,800万円(特別設備資金7,200万円) 【新創業融資制度】最高1,500万円(設備資金3,000万円) 【マル経融資】最高2,000万円 |
金利・手数料の相場 | 【一般貸付】年2.16~2.55%
【新創業融資制度】年2.46~2.85% 【マル経融資】年1.21% |
現金調達までに要する日数 | 2~3週間 |
日本政策金融公庫(以下、公庫)は政府が100%出資する公的金融機関のひとつです。
民間の金融機関が行う金融を補完することを旨としており、中小企業・小規模事業者のセーフティーネットしての役割も担っています。
公庫の窓口には、「国民生活事業」「中小企業事業」「農林水産事業」の3つがあり、年商5億円以下の中小企業や個人事業主は国民生活事業を利用することになります。
ここでは、国民生活事業のうち一般貸付、新創業融資制度、マル経融資について詳説します。
一般貸付
特に貸付条件が設定されておらず、ほとんどの業種の中小企業、個人事業主が利用できる融資制度です。
運転資金として最高4,800万円、設備資金として最高7,200万円まで借入ができ、返済期間も運転資金5年以内、設備資金10年以内(特別設備資金20年以内)とゆとりをもって返済計画を立てることができます。
担保(不動産、有価証券等)などの提供を不要とする場合は、無担保・無保証人で借りられる「マル経融資」を案内される場合があります。
新創業融資制度
新創業融資制度は、
- 新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方
- 雇用創出等の要件
- 創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金
という3つの要件を満たす方が対象の融資制度です。
年2.46~2.85%(基準利率)の低金利で、運転資金として1,500万円まで、設備資金として3,000万円まで借入れることができます。
担保・保証人は原則不要ですが、代表者が連帯保証人となった場合は利率が0.1%低減されます。
自己資金の準備は必要となるものの、創業前や創業間もないため実績がなく、民間の金融機関からの借入が難しい事業者の方におすすめです。
マル経融資(小規模事業者経営改善資金)
マル経融資(小規模事業者経営改善資金)とは、商工会議所や商工会などの経営指導を受けている事業者が無担保・無保証人で利用できる融資制度です。
融資を受けるにあたっては、商工会議所、商工会または都道府県商工会連合会の実施する経営指導を受けており、商工会議所等の長の推薦が必要となります。
特別利率F(年1.21%)の低金利で、運転資金・設備資金ともに2,000万円まで借り入れできます。
現在は新型コロナウイルス感染症対策として、要件に合致する事業者は通常の融資額に別枠として+1,000万円まで、借入れ当初3年間は特別利率F-0.9%が適用されます。
シンジケートローン
利用条件 |
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調達額のめやす | 100万円~数億円 |
金利・手数料の相場 | 【プロパー融資】年2〜9%
【信用保証付き融資】年3~5%(+保証料) 【ビジネスローン】年5〜10% |
現金調達までに要する日数 | 2週間~1ヶ月 |
シンジケートローンとは、1社の企業に対して複数の金融機関が連携してシンジケート団を組成、融資を行うローン商品のことです。その性質から「協調融資」と呼ばれることもあります。
たとえば、申込者の主たる取引銀行が10億円の融資を1つの銀行だけで対応するのが難しい場合、5つの銀行で連携して2億円ずつ融資するといったケースで利用されます。
シンジケート団のうち、通常はシンジケート団のうち申込者の主要取引金融機関が代表となります。この主要取引銀行は「アレンジャー(主幹事行)」と呼ばれ、元利金の受け渡しや契約の管理を行う「エージェント(事務代行)」も兼務します。
一方、借主はエージェントに対する手数料(エージェントフィー)が発生します。
ただし、シンジケートローンはステークホルダー(利害関係者)が多いため、融資実行までに時間がかかるというデメリットがあります。
社債の発行
利用条件 |
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調達額のめやす | 100万円~数億円 |
金利・手数料の相場 | 【少人数私募債】不要
【銀行保証付私募債】券面の5~10% |
現金調達までに要する日数 | 2~3ヶ月 |
社債とは債券の一種で、企業が資金調達のために発行する借用証書の一種です。
社債には借用金額、償還期限(返済期限)、利息が記載されており、発行企業は社債を引き受けてもらった投資家に対して毎期社債の利率に応じて利息を支払います。
また、償還期限が到来すると元本を一括して投資家に返済する必要があります。
同じデットファイナンスである金融機関からの借入との違いは、一般の投資家から広く資金を調達する方法であること、償還期が到来するまで長期の資金を調達することが可能である点などが挙げられます。
上場大企業においては不特定多数の投資家に対して社債を発行する「公募債」がもっとも一般的ですが、ここではおもに中小企業の現金調達に活用される「少人数私募債」と「銀行保証付私募債」について解説します。
少人数私募債
少人数私募債とは50人未満の投資家に対して発行する社債のことです。引受人は社債発行会社の縁故者や会社に関連する者に限定されます。
少人数私募債で社債を発行するまでの流れは以下のとおりです。
- 社債募集要項の作成
- 取締役会決議または株主総会決議
- 社債引受人の募集
- 社債申込証の受領・審査
- 社債募集決定通知書の送付
- 社債申込証拠金預り証の発行
- 社債原簿の作成
私募債は発行企業が償還期間や金利を自由に決めることができます。
引き受けてくれる縁故者がいれば、中小企業でも比較的簡単に現金調達ができる方法と言えます。
ただし、私募債は償還期限に一括で元金を返済する必要があるため、資金繰りに問題がある場合の現金調達手段としては活用できません。
自治体によっては少人数私募債の利子の一部を助成する制度を実施しているところもあるため、私募債によって現金調達を図りたい企業は自治体の補助金・助成金制度の確認をおすすめします。
銀行保証付私募債(信用保証協会保証付私募債)
私募債は金融機関に対しても発行することができます。
金融機関あての私募債発行は銀行が単独で保証する「銀行保証付私募債」と、銀行と信用保証協会とが共同で保証する「信用保証協会保証付私募債」に分けられます。
いずれも発行時の必要な手続きは銀行が行うため、発行企業の事務手続きの負担が軽減されますが、銀行へ手数料・保証料の支払いが必要となります。
銀行に対する私募債の発行は一定の適債基準を満たす優良企業に限定され、自社の信用力の高さを対外的にアピールすることができます。
エクイティファイナンスによる現金調達方法
中小企業や個人事業主が利用できるエクイティファイナンスによる現金調達方法を解説します。
第三者割当増資
利用条件 | 特になし |
調達額のめやす | 100万円~数億円 |
金利・手数料の相場 | 不要 |
現金調達までに要する日数 | 2~3ヶ月 |
株式を公開している上場会社が増資する場合、不特定多数の投資家向けに新株を発行する「公募増資」で増資を行います。
一方、中小企業は一般的に株式非公開であるため、「公募増資」ではなく「第三者割当増資」を活用することになります。
第三者割当増資は文字どおり既存の株主だけを対象とするのではなく、新たに特定の第三者にも新株を引き受ける権利を与えることができます。第三者増資割当の「第三者」は取引先や友好的関係にある企業・個人などです。
なお、既存の株主にのみ新株を割り当てることを「株主割当増資」と言います。
第三者割当増資は以下の手続きで進めます。
- 株主総会特別決議による募集事項の決定
- 募集事項の通知・公告
- 総数引受契約の締結
- 出資金の払込(引受人)と株式の発行
- 株主名簿ヘの記載
- 登記
株を購入してもらうためには会社の将来性や株価の上昇を投資家に説明、共感してもらわなければなりませんが、増資は借入ではなく出資となるため返済不要の現金を調達できます。
ただし、第三者割当増資によって新株を発行するということは、「経営者の持株比率が下がる=経営者の議決権(経営権)が弱まる」ということですので、経営権を失わない割合に抑える必要があります。
ベンチャーキャピタルからの出資
利用条件 | 特になし |
調達額のめやす | 100万円~数億円 |
金利・手数料の相場 | 不要 |
現金調達までに要する日数 | 1~2ヶ月 |
ベンチャーキャピタル(VC)はベンチャー企業が未上場時に出資を行い、上場後の株式売却等でキャピタルゲイン(売買差益)を目的とした機関のことです。
企業経営者や起業家出身者が多く、「ハンズオン」と呼ばれる経営コンサルティングを提供して投資先企業の成長支援や経営力強化も行います。
VCが投資を行うにあたっては、投資家が自己資金を出資するケースと、ファンドと呼ばれる投資家団体を設立し、投資家から資金を集めて出資するケースの2つがあります。
いずれもベンチャー企業側が自社の成長性や市場の発展性をVCに認められれば、スタートアップから数千万円~数億円の現金を調達することができます。
VCから支援を受けるまでの流れは以下のとおりです。
- 経営者とVCのマッチング
- 経営者が事業計画書でVCへプレゼン
- VCが企業を調査する
- VCから支援決定の通知
- 契約の終結
- VCから資金の振込
ただし、VCの出資の目的はあくまでもキャピタルゲインです。
出資先に対して積極的な成長支援・経営力強化で積極的に経営に介入してくることがあり、ベンチャー企業側はVCの意向に沿った経営を余儀なくされる場合もあります。
エンジェル投資家からの出資
利用条件 | 特になし |
調達額のめやす | 100万円~1,000万円 |
金利・手数料の相場 | 不要 |
現金調達までに要する日数 | 1ヶ月 |
エンジェルはベンチャー企業や起業家に資金援助をして、その見返りとして株式や転換社債を受け取る個人投資家のことです。
金融機関やベンチャーキャピタルに比べて個人から調達できる現金は少ないものの、エンジェルじたいが元起業家であるケースが多いため、ビジネス面でのバックアップ、人脈、経営アドバイスなど支援が受けられます。
エンジェル投資家と起業家は専用のマッチングサイトを通じてつながることができます。日本では「Founder」や「Angel Fund」などが知られています。
また、同業者や創業者、友人、上司等のベンチャーキャピタルとつながりを持つ人に紹介知ってもらう方法もあります。
新株予約権付社債
利用条件 | 特になし |
調達額のめやす | 100万円~1,000万円 |
金利・手数料の相場 | 不要 |
現金調達までに要する日数 | 1ヶ月 |
新株予約権付社債とは、あらかじめ設定した価格で新株を購入できる権利を付与した社債のことです。一般的には「転換社債」または「CB(Convertible Bond)」と呼ばれます。
社債であるため一定期間ごとに利息を受け取ることができ、償還日まで保有することで額面金額が払い戻されます。
一方、株式に転換できる価格が設定されており、株価が上がると株式に転換して差益を得るという株式としての側面も持っています。
たとえば、発行企業が「1年以内に自社が1億円以上の現金を調達できれば株式に転換できる」という権利を社債に付けることで、投資家は将来的に発行企業の株式を手に入れることができ、キャピタルゲインによる利益の獲得を期待できます。
中小企業・個人事業主は「融資」か「ファクタリング」
現金調達の方法を3つのタイプに分けてご紹介しました。
アセットファイナンス、デットファイナンス、エクイティファイナンスそれぞれの現金調達の金額やスピードをまとめると、以下のとおりです。
アセットファイナンス |
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デットファイナンス |
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エクイティファイナンス |
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中小企業や個人事業主にとってもっともポピュラーな現金調達方法は、デットファイナンスにあたる「融資」です。
明確な返済原資と返済計画があれば、資金繰りを悪化させることなく、調達した現金を有効に使うことができるでしょう。
すでに複数の借入があり、金融機関からさらなる融資を引き出すのが難しい場合は、ファクタリングの検討をおすすめします。
融資の金利と比較するとファクタリング手数料は高めですが、負債が増えることはなく、売掛債権を現金化することで自己資本比率が上がり、金融機関からの評価が高まる可能性があります。
ベストファクターは現金調達をご検討中の経営者さまに、融資を利用すべきか、ファクタリングを利用すべきか、経営状況やキャッシュフローを見ながらアドバイスさせていただきます。
自社にとって最適な現金調達方法をお探しの方は、ぜひご相談ください。