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銀行融資を受けたいと考えていても、審査に通るか不安に感じる方は多いでしょう。
返済能力が重要視される審査ですが、書類の用意の仕方など事業主の工夫次第で審査通過率は高められます。
今回の記事では、銀行融資の審査の流れ・審査落ちする理由・審査通過率を上げるポイントなどについて解説します。融資審査に通るためには、審査のポイントを理解することが重要です。
銀行融資を受けられるよう、ぜひ本記事の内容を参考にしてみてください。
記事の目次
融資審査とは
融資審査とは、銀行などの金融機関で融資を受ける人に返済能力があるかどうかを審査することです。
法人への融資では、主に決算書・事業計画書・財務諸表で企業の返済能力を推しはかります。融資には「公的融資」と「民間融資」の2種類があります。
公的融資とは、国や自治体などの公的機関が主体となっている融資のことです。住宅金融支援機構や日本政策金融公庫の融資が挙げられます。
民間融資とは、銀行や消費者金融業者などの民間企業が提供している融資のことです。
いずれの融資も審査に通過しない限り、利用はできません。
銀行融資の種類
銀行融資は、大きく下記の3つに分けられます。
- プロパー融資
- 信用保証付き融資
- ビジネスローン
それぞれの特徴を以下の表にまとめました。
融資の種類 | 金利相場 | メリット | デメリット |
プロパー融資 | 1%〜3%程度 | 金利が安い・信用力向上になる | 審査に通りにくい・借入期間が短い |
信用保証付き融資 | 1.5%〜3%程度 | 審査に通りやすい・借入期間が長い | 保証料がかかる |
ビジネスローン | 10%〜15%程度 | 審査に通りやすい・無担保可 | 金利が高い |
より詳しく、それぞれの特徴を見ていきましょう。
1.プロパー融資
プロプロパー融資とは、信用保証協会が介入せず銀行と直接取引をする融資制度のことです。
信用保証協会とは、信用保証協会法という法律に則って事業者の資金調達を支援する公的機関です。プロパー融資では、審査は銀行が行い、金利・融資限度額・返済期間などを決定します。
メリットは、信用保証協会へ支払う保証料がないので金利が安いことです。また、プロパー融資は企業の実績を厳しく審査する制度であるため、審査通過の実績が信用力向上にもつながります。
デメリットは、審査が厳しく融資を受けられる企業が限定的であることです。また、信用保証協会が介入しない融資は貸し倒れリスクが高いので借入期間が短く、月々の返済額は高くなります。
2.信用保証付き融資
信用保証付き融資とは、信用保証協会が公的な保証人として間に入る融資のことです。
審査は銀行と信用保証協会の両方で行われます。
メリットは、プロパー融資より審査が通りやすく、借入期間も5年〜10年の長期になるので毎月の返済額の負担が少ないことです。
デメリットは、信用保証協会へ支払う保証料が発生することです。保証料は、融資限度額もしくは融資額に対して約2%以下の利率で算出されます。
3.ビジネスローン
ビジネスローンとは、法人や個人事業主が事業資金を借入するための融資のことです。
ビジネスローンは「銀行系」と「ノンバンク系」の2種類があり、銀行系のビジネスローンの方が3%程度低い金利で利用できます。
メリットは原則として無担保・無保証で融資を受けられるうえに審査に通過しやすい点です。デメリットは、金利が高いことです。通常の事業融資の金利相場が1%〜3%程度であるのに対し、ビジネスローンは10%〜15%程度かかります。
銀行融資の審査の流れ
銀行融資の審査の流れは、下記のとおりです。
- 銀行の選定をする
- 申込みをする
- 必要書類を準備する
- 面談を受ける
- 審査が行われる
- 融資が実行される
どのように審査が進められていくのか順番に解説します。
1.銀行の選定をする
銀行は、地方銀行と都市銀行の2種類に分けられます。
地方銀行
地方銀行とは、北海道銀行や横浜銀行など各都道府県で展開されている地域密着型の銀行のことです。
信用保証協会は都道府県単位で活動しており、地方銀行と連携して融資を提供しています。そのため、地方銀行では信用保証付き融資が通りやすい傾向にあります。
小口取引を取り扱っているうえに審査に柔軟性があるので、事業規模が中程度であれば地方銀行の融資審査を受けましょう。
都市銀行
都市銀行とは、大都市に本店を構えて全国展開している大手の銀行のことです。
このうち、総資産がおよそ1兆ドル以上の銀行をメガバンクと呼び、国内では三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行などが該当します。
資金が豊富なため金利が安く、巨額な融資に対応しているのが特徴です。
大口の融資が必要でなおかつ大規模な事業を営んでいる場合は、都市銀行へ融資の相談をしましょう。
2.申し込みをする
複数の銀行に相談したうえで銀行を決定したら、融資に申し込みます。
申し込みする際にチェックするポイントは下記のとおりです。
- 返済方法
- 借入期間
- 審査にかかる期間
- どれくらいのスケジュール感で申し込んでおけばよいのか
融資を受ける際には、返済方法と借入期間を決めることになります。
返済方法は一括返済・分割返済があり、返済期間は1年以内に完済する短期融資・1年を超える長期融資があります。返済期間を短く設定しすぎると毎月の返済額の負担が大きくなってしまうため、自社の収支と照らし合わせて選択しましょう。
審査にかかる期間は2週間程度で、融資を受けたい日より1ヶ月半ほど前に申し込んでおくとスケジュールに余裕がもてます。
銀行や融資の内容によって異なるため、わからないことは融資担当者に聞いておきましょう。
融資を受けたい銀行の窓口に訪問してください。
3.必要書類を準備する
銀行融資の審査には、下記の書類が必要です。
- 決算書
- 資金繰り表
- 事業計画書
- 試算表
- 借入状況
- 登記簿謄本
- 印鑑証明書
- 納税証明書
これらの書類から融資の可否や条件が決定されます。
登記簿謄本・印鑑証明書・納税証明書の取得方法を、以下にまとめました。
書類 | 取得先 | 取得方法 |
登記簿謄本法務局 | 法務局 | ・窓口 ・郵送 ・オンライン |
印鑑証明書 | 法務局 | ・窓口 ・郵送 ・オンライン |
納税証明書 | 税務署 | ・窓口 ・郵送 ・オンライン |
いずれも窓口の申請であれば当日発行できますが、平日しか手続きができません。また、郵送での取得はは1週間程度かかります。
いずれの書類も入念にチェックされますが、とくに審査への影響が大きいものは決算書・事業計画書です。
4.面談を受ける
書類を提出し、融資担当者との面談をします。面談では書類だけでは把握できない事業主の人柄なども見られます。
一般的に面談で聞かれる質問は下記のとおりです。
- 自己資金はどの程度あるのか
- 融資でお金を得てどのように使う予定なのか
- どうやって借りたお金を返済していくのか
5.審査が行われる
面談の内容と受け取った書類は複数の関係者を巡って最終的に権限者にわたり、融資の可否が決められます。審査期間は融資の種類によって以下のように異なります。
融資の種類 | 審査期間の目安 |
プロパー融資 | 1ヶ月〜2ヶ月程度 |
信用保証付き融資 | 1週間〜1ヶ月程度 |
ビジネスローン | 3日〜5日程度 |
融資の可否以外に、返済期間・金利などの融資条件も決定されます。
6.融資が実行される
融資審査に通過すれば、審査結果の通知と契約についての連絡がきます。
契約書が送付されるので、内容を確認して署名・捺印をしましょう。必要書類を郵送し、契約手続きを行います。契約締結から振り込みまでにかかる時間は1週間程度です。
契約書や必要書類についてわからないことは融資担当者に相談しましょう
銀行融資の審査にかかる期間
審査にかかる期間は銀行や融資の種類によって異なりますが、おおむね下記のとおりです。
審査の段階 | 日数 |
申し込み〜面談 | 7日~10日程度 |
面談~結果連絡 | 2週間程度 |
結果連絡~融資契約 | 7日~10日程度 |
融資契約~入金 | 1週間程度 |
銀行融資が
融資審査に通らない5つの理由
融資審査に通らない理由は以下のとおりです。
- 信用情報に問題がある
- 財務状況に問題がある
- 社会保険料や税金を滞納している
- 担保が用意できない
- 事業計画書の内容が不明瞭
それぞれの理由を詳しく見ていきましょう。
1.信用情報に問題がある
信用情報に問題があると審査通過は難しくなります。
信用情報とは、個人のクレジットやローンの利用などの金融取引を記録した個人情報のことです。これらの情報を収集した機関を信用情報機関と言います。
銀行は信用情報機関に問い合わせて、利用者の信用情報を調査し、審査の判断材料にします。信用情報に支払いの遅延や破産申立てなどの契約不履行があった場合、審査では不利になってしまうのです。
2.財務状況に問題がある
決算書から企業の経営成績や財務状況を読み取り、利益が出ていないと判断された場合は審査に通りにくくなります。
財務状況を改善するためには、分析をしてコスト削減・売上アップを狙う必要があります。
具体的には改善の流れは下記のとおりです。
- 自社の支出をすべて洗い出す
- 重要度の低い項目を削除した際に起こる出来事をシミュレーションする
- コスト削減によって得られる効果が上回りそうであれば一旦採用する
- 具体的な目標値を設定する
- プランを実行し、当初の目標と照らし合わせる
得られる効果が一時的である場合があります。プランを実行して成果が出た後も、PDCA(計画→実施→確認→改善)サイクルを常に回し続けましょう。
3.社会保険料や税金を滞納している
社会保険料や税金の支払いが滞納している場合、返済能力がないとみなされて審査通過は難しくなります。
手元にキャッシュがない場合の解決方法は、下記のとおりです。
- 知人にお金を借り、滞納を解消してから融資を申し込む
- 会社でノンバンクからお金を借り、滞納を解消してから融資を申し込む
- 個人でカードローン・消費者金融でお金を借り、滞納を解消してから融資を申し込む
- 税務署・年金事務所に分割支払いの合意をとり、銀行に合意書を提示する
上記のうち、審査でマイナスになりにくい方法は知人にお金を借りる方法です。滞納金額分を借りれる人が身近にいないか探してみましょう。
4.担保が用意できない
利用者の状況によっては担保の設定を求められますが、用意できなければ融資を受けられない可能性が高くなります。
担保とは、利用者に万が一のことがあり返済不能となった場合に融資額の代わりに引き渡すものです。
担保には不動産などの資産を設定する「物的担保」と保証人を設定する「人的担保」の2種類があり、一般的には不動産を担保に設定します。
銀行が利用者の返済能力に不安を抱いているときに、担保の設定を求められるケースが多いです。
5.事業計画書の内容が不明瞭
事業計画書の内容があいまいだったり、わかりにくかったりすると審査は通りにくくなります。
なるべく内容はわかりやすく記載しましょう。具体的には、事業計画書に数字・計画を記載するとき、グラフや図解などを挿入して視覚的にわかりやすい資料にしてください。
また、事業計画書に見合った融資額を提示しているかどうかも重要です。「売上が10%増加」「売上が30万円増加」など収支見込みの数字を記載するようであれば、どのように実現するのか根拠も提示しましょう。
融資審査に通るための5つのポイント
融資審査に通るためのポイントは以下の5つです。
- 事業計画書の内容を明確にする
- 格付けを理解しておく
- 担保を用意する
- 税金や公共料金を滞納しない
- 面談の印象を良くする
それぞれ詳しく解説します。
1.事業計画書の内容を明確にする
事業計画書の内容を明確に記載すれば、審査で有利にはたらきます。なるべく事業に関する情報を多角的に記載しましょう。
具体的には下記のような内容を盛り込むと、融資審査で返済能力を認めてもらいやすいです。
- 企業のビジョン
- 事業の目的
- 競合他社の動向
- マーケティング計画
- 自社の強み
- 自社のコンセプト
- 販売計画
- 売り上げ予測
- 収支計画
これらの情報で、事業に本当に必要な調達額であること・収益に見合った融資額であることを提示できます。
2.格付けを理解しておく
融資審査を受ける際には、格付けについて理解しておきましょう。
格付けとは、銀行が融資を実行するかどうかを判断するときの基準のことです。
決算書の内容からスコアを出す「定量評価」と、経営者の資質や事業方針などを評価する「定性評価」の2種類があります。
格付けの基準は銀行によって異なり、公開されていません。
しかし、都市銀行では定量評価を重視し、地方銀行では定量評価7割・定性評価3割といったように定性的な要素をスコアに組み込む傾向にあります。
どこを銀行が重要視しているかを大まかに把握しておくことで、審査で優位になる書類を準備しやすくなります。
3.担保を用意する
融資担当者に担保を求められたら、用意できないか検討しましょう。
前述したとおり、担保は銀行にとってリスクヘッジとなります。担保を用意できると融資審査は通過しやすくなります。
不動産以外で担保になるものの種類には、下記のようなものがあります。
担保の分類 | 担保になるもの |
有価証券担保 | ・株式 ・公債 ・社債 ・受取手形 |
動産担保 | ・船舶 ・自動車 ・航空機 ・牛などの畜産物 |
指名債権担保 | ・売掛金 ・預金債権 ・損害保険金 ・工事請負代金 ・記名式信託受益権 |
4.税金や公共料金を滞納しない
融資を受けやすくするために、税金や公共料金は期日内に支払いましょう。税金・公共料金の支払いが滞っている場合、経営状態は極めて悪いと判断されます。
滞納が続いている場合は、融資調達に頼らず財務状況を改善する必要があります。財務状況の改善には、コスト削減・売上アップ・在庫管理の徹底・固定費の見直しなどが有効です。税金・公共料金の滞納が解消したら再度、金融機関に融資を申し込みましょう。
また、信用情報に傷がつかないようにクレジットカードの引き落とし日などは注意が必要です。
5.面談の印象を良くする
融資審査の面談では、利用者の人柄など書類で把握しきれない要素も見られています。
社会人としての言葉遣い・服装・時間厳守などに気をつけ、誠実な対応を心がけましょう。
また、事前に面談のシミュレーションをしておくと質問の受け答えに余裕がもてます。開業の経緯や事業経験など自社に関する情報は整理しておき、事業計画書に対して質問されそうな箇所を想定しておきましょう。
もちろん条件に合わなければ人柄が良くても審査落ちしますが、融資を実行できるかどうかの境目にいる場合は結果を左右する可能性が高いです。
融資の審査に関するよくある質問
ここでは、融資審査についてよくある質問をまとめました。
日本政策金融公庫とは?銀行融資との違いも教えてください
日本政策金融公庫とは一般の金融機関が行う業務を補完することを目的にした、政府公認の金融機関です。
大きな違いは銀行が民間融資であるのに対し、日本政策金融公庫は公的融資であることです。また、経営者の熱意・計画性・将来性などを重視する傾向にあり、日本政策金融公庫の方が創業時でも融資を受けやすい傾向にあります。
個人事業主でも銀行融資の審査は受けられますか?
銀行融資の利用は法人のイメージが強いですが、個人事業主でも融資は受けられます。事業に対して融資を行っており、法人・個人の隔たりはないからです。
審査で見られるポイントは法人とほとんど同じですが、個人事業主は加えて下記の条件を満たす必要があります。
- 開業届を提出している
- 確定申告を行っている
銀行融資で面談をする時間帯は?
面談の時間帯は銀行の営業時間である9:00〜15:00の間です。
融資担当者との面談に要する時間は約30分〜40分程度であることが多いです。
銀行融資に審査落ちした人はファクタリングを検討しよう
銀行融資の審査落ちした方には、ファクタリングがおすすめです。
ファクタリングとは売掛債権を売却することで本来の入金日よりも早く現金化できる、資金調達方法の1つです。銀行融資とは異なり、赤字決算・債務超過・融資落ちなど利用者の財務状況が悪化していても利用できます。
なぜ利用者の財務状況が悪化していても利用できるかというと、売掛金を支払うのは売掛先だからです。銀行融資との大きな違いは、融資は利用者の信用を重視するのに対し、ファクタリングでは売掛先の信用をもっとも重要視します。
もちろん売掛先に信用力がなければ審査通過は厳しくなります。
しかし、銀行融資よりも審査は断然通りやすいです。売掛先の情報量が圧倒的に少ない・悪評があるなどの理由がない限りファクタリングの審査は通過できます。
銀行融資に審査落ちした方は、即日資金調達が可能なファクタリングを検討してみましょう。